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闇に染まる森
森の王に迫る危機
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「さぁ…入ってちょうだい」
「お邪魔しまーす!」
とことん遠慮のないナタリア。
4人は森の魔女ドロシーの案内で、リューネの森の拠点へと移動してきた。
見た目は木の幹にただ扉が付いているだけだが、開けてみると中には広い空間が広がっていた。これも魔術だろうか。
「わぁ、素敵な家ですねドロシーさん」
木を掘って作ったような内装。あたりにはろうそくが建てられており、温かみのある明るさがある。
ドロシーは目の前にあるテーブルと椅子を指差し、座るよう促した。
「さて…みなさんがここにきた理由…聞かせてくれるかしら」
4人は依頼でアースガルドを訪れたこと、これまで起こった襲撃のこと、そしてアルフェウスが絡んでいることを説明した。
「なるほどね…。私の思った通り…目的は同じのようね」
「ドロシー…って言ったけ?あんたは何の用があってここにいるのよ」
どうやらこの場でドロシーと面識があるのはアリスだけのようだ。
「私はこのリューネの“森の王”の様子を…見にきたの」
「森の王ですか。それは一体」
クラインが聞き返す。
「森の王…この森で生まれたエントのこと。特別大きな魔力を持っていて…人間に友好的な魔物なの」
「ほう、珍しいな」
「森の王は魔物たちが…街に出て人を襲わないように見張っていたの。でもここ最近では…頻繁に魔物が人を襲っている…鳥たちが私にそう教えてくれたの」
「それでドロシーさんは住処を離れここに調査しにきたんですね」
アリスがおおよそを察したようだ。
「ドロシーさんの話から考えるに、今回の件は森の王に何かあったと考えるのが筋ですね。もしやアルフェウスの連中は森の王に手を出したんでしょうか」
「僕もそう思います、アリス。ここの魔物を一匹ずつ支配下に置いているより、森の王を従えてしまったほうが手っ取り早いですからね」
2人の話にドロシーは少し俯く。
「やっぱり森の王に何かあったのね…。急がなくちゃ…!」
「そういうことならもちろん私たちも行くわよ。利害は一致しているんだしまたケンタウロスがきたら困るもの」
「ありがとう…ナタリアちゃん」
「ちょっと、子供扱いしないでよね!」
なんだかんだ優しいナタリア。しかし悪気はないのだろうがドロシーはナタリアに言葉のナイフを突き刺してしまったようだ。
「では先を急ぐとしようか。ドロシー殿、森の王のところまで案内をしてくれまいか?」
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・
ドロシーに連れられてきたのは巨大な樹木の根元だった。
ドロシー曰くリューネの森で一番でかい大聖樹という木らしい。
その巨大な幹は家ほどのサイズもある。直径何mあるのだろうか…。
幹の一部に裂け目のようなものがある。おそらくあそこが入り口で、中に森の王がいるのだろう。
ぴたっとドロシーは足を止める。
「どうしましたか、ドロシーさん」
「みて…」
ドロシーが指差す先を見ると…
「!?これ、木の根ですか?腐ってしまっているようです」
アリスが口元を抑える。
「ここだけじゃありません!周りの草木の様子がおかしいです!」
大聖樹の辺り一帯の木々は、枯れ果ててしまっている。果実は腐り落ち、地面の草は黒く変色してしまっている。
「酷い…一体何があったの…」
ドロシーの顔は真っ青だ。森の魔女と謳われた彼女は、この中でもひときわこの惨状に心痛ませていることだろう。
「急ぎましょう、森の王のところへ」
アリスの一言に我に帰ったドロシーは、みんなを引き連れ幹の裂け目へと入っていった。
そこは想像を超えて大きな空間だった。
あたりは樹木の壁に覆われ、隙間から木漏れ日が差し込んでいる。一見すると美しい光景だが、やはり様子がおかしい。
地面に生えた草木は枯れ果て、見る影もない。そして何より、あたりに漂う淀んだ負の瘴気だ。
聖職者でない5人でも感じ取れるほど、そこには負の気が満ちている。
「これは…一体…」
ドロシーは言葉を発するのがやっとなほどだ。
「どうやらこの瘴気の元はあやつのようだな」
ドイルが指差す先は、この空間の奥にある木でできた玉座のようなところだ。
何者かがそこに座っているようだが、そこから黒い靄のようなものが漂っているではないか。
「あれは…森の王!?」
ドロシーが声を上げた瞬間だった。
座っていたソレは、玉座から立ち上がる。
3、4mはあろうかという巨体が、こちらに向かって来た!
「ボォオォォォォォ!」
巨大な人形の大木が、巨体に見合わぬ速度で急接近してくる。
体のあちこちから黒い霧のようなものが噴き出ている上に、こちらに対して敵意を持っているようだ。聞いていた話とはまるで間違う。
「ちょっと!完全に仕留めに来てるじゃないアイツ!倒しちゃっていいわけ!?」
「ダメ!…なんとか身動きできないように拘束して…」
「ふぅむ、なかなか骨の折れそうな注文だ」
「来ます!構えてください!」
5人は向かってくる森の王に対し武器を構えた。
「お邪魔しまーす!」
とことん遠慮のないナタリア。
4人は森の魔女ドロシーの案内で、リューネの森の拠点へと移動してきた。
見た目は木の幹にただ扉が付いているだけだが、開けてみると中には広い空間が広がっていた。これも魔術だろうか。
「わぁ、素敵な家ですねドロシーさん」
木を掘って作ったような内装。あたりにはろうそくが建てられており、温かみのある明るさがある。
ドロシーは目の前にあるテーブルと椅子を指差し、座るよう促した。
「さて…みなさんがここにきた理由…聞かせてくれるかしら」
4人は依頼でアースガルドを訪れたこと、これまで起こった襲撃のこと、そしてアルフェウスが絡んでいることを説明した。
「なるほどね…。私の思った通り…目的は同じのようね」
「ドロシー…って言ったけ?あんたは何の用があってここにいるのよ」
どうやらこの場でドロシーと面識があるのはアリスだけのようだ。
「私はこのリューネの“森の王”の様子を…見にきたの」
「森の王ですか。それは一体」
クラインが聞き返す。
「森の王…この森で生まれたエントのこと。特別大きな魔力を持っていて…人間に友好的な魔物なの」
「ほう、珍しいな」
「森の王は魔物たちが…街に出て人を襲わないように見張っていたの。でもここ最近では…頻繁に魔物が人を襲っている…鳥たちが私にそう教えてくれたの」
「それでドロシーさんは住処を離れここに調査しにきたんですね」
アリスがおおよそを察したようだ。
「ドロシーさんの話から考えるに、今回の件は森の王に何かあったと考えるのが筋ですね。もしやアルフェウスの連中は森の王に手を出したんでしょうか」
「僕もそう思います、アリス。ここの魔物を一匹ずつ支配下に置いているより、森の王を従えてしまったほうが手っ取り早いですからね」
2人の話にドロシーは少し俯く。
「やっぱり森の王に何かあったのね…。急がなくちゃ…!」
「そういうことならもちろん私たちも行くわよ。利害は一致しているんだしまたケンタウロスがきたら困るもの」
「ありがとう…ナタリアちゃん」
「ちょっと、子供扱いしないでよね!」
なんだかんだ優しいナタリア。しかし悪気はないのだろうがドロシーはナタリアに言葉のナイフを突き刺してしまったようだ。
「では先を急ぐとしようか。ドロシー殿、森の王のところまで案内をしてくれまいか?」
・・・・・・・・
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ドロシーに連れられてきたのは巨大な樹木の根元だった。
ドロシー曰くリューネの森で一番でかい大聖樹という木らしい。
その巨大な幹は家ほどのサイズもある。直径何mあるのだろうか…。
幹の一部に裂け目のようなものがある。おそらくあそこが入り口で、中に森の王がいるのだろう。
ぴたっとドロシーは足を止める。
「どうしましたか、ドロシーさん」
「みて…」
ドロシーが指差す先を見ると…
「!?これ、木の根ですか?腐ってしまっているようです」
アリスが口元を抑える。
「ここだけじゃありません!周りの草木の様子がおかしいです!」
大聖樹の辺り一帯の木々は、枯れ果ててしまっている。果実は腐り落ち、地面の草は黒く変色してしまっている。
「酷い…一体何があったの…」
ドロシーの顔は真っ青だ。森の魔女と謳われた彼女は、この中でもひときわこの惨状に心痛ませていることだろう。
「急ぎましょう、森の王のところへ」
アリスの一言に我に帰ったドロシーは、みんなを引き連れ幹の裂け目へと入っていった。
そこは想像を超えて大きな空間だった。
あたりは樹木の壁に覆われ、隙間から木漏れ日が差し込んでいる。一見すると美しい光景だが、やはり様子がおかしい。
地面に生えた草木は枯れ果て、見る影もない。そして何より、あたりに漂う淀んだ負の瘴気だ。
聖職者でない5人でも感じ取れるほど、そこには負の気が満ちている。
「これは…一体…」
ドロシーは言葉を発するのがやっとなほどだ。
「どうやらこの瘴気の元はあやつのようだな」
ドイルが指差す先は、この空間の奥にある木でできた玉座のようなところだ。
何者かがそこに座っているようだが、そこから黒い靄のようなものが漂っているではないか。
「あれは…森の王!?」
ドロシーが声を上げた瞬間だった。
座っていたソレは、玉座から立ち上がる。
3、4mはあろうかという巨体が、こちらに向かって来た!
「ボォオォォォォォ!」
巨大な人形の大木が、巨体に見合わぬ速度で急接近してくる。
体のあちこちから黒い霧のようなものが噴き出ている上に、こちらに対して敵意を持っているようだ。聞いていた話とはまるで間違う。
「ちょっと!完全に仕留めに来てるじゃないアイツ!倒しちゃっていいわけ!?」
「ダメ!…なんとか身動きできないように拘束して…」
「ふぅむ、なかなか骨の折れそうな注文だ」
「来ます!構えてください!」
5人は向かってくる森の王に対し武器を構えた。
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