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闇に染まる森
"森の魔女"ドロシー
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あたりは木々が生い茂り、葉と葉の隙間から木漏れ日が地に落ちている。あたりは一面緑で、根が地を這い苔の絨毯で覆われている。
「とても素晴らしい場所だな!魔物が好き好んで住処にするのもわかると言うものだ!」
ドイルは甲冑のせいで歩きにくそうだ。地面より突き出た木の根につまづき転びそうになる。
「えぇ、人と手が一切入っていません。自然が形成するとてもいい環境です」
クラインも感嘆の表情だ。
妖精の森で“リューネの森”の場所を教えてもらった4人は、次の街襲撃が起こる前にと急ぎ調査に赴いたのだ。
「何のんきなこと言ってんのよ。こう言うところはマナが淀んで結晶化しやすいらしいわ。強力な魔物だって潜んでるかもしれないんだから、気を抜かないでよね!」
背格好こそ小柄だがまるで年長者のような警告をするナタリア。見た目に反してしっかりしていると言ったら侮辱になるだろうか。
「待ってください、人の気配がします」
アリスが足を止める。
その言葉に構える他の3人。4方に目を向け警戒していると、何者かが木の上から降り立った。
バッと4人の前方に2人の影が現れる。2人とも黒いローブにフードを深く被り、ペストマスクをつけている。
「止まれ!何者だお前たち。街のギルドの冒険者か!」
「悪いがここは立ち入り禁止だ。痛い目を見る前に引き返してもらおう」
仮面の中から男の声がする。
「何者だと問うのは我輩たちの方だと思うぞ。そんな格好で森にいるなど怪しさ全開ではないか!」
「ドイル、あなたが的を射た発言をすると頭を打ったんじゃないかって私心配になるわ」
「ナタリア、流石に言い過ぎじゃないですか?」
即座に突っ込むクライン。
「テメェら、ふざけやがって!…ん?」
片方の男が何かに気づいたようだ。こちらをジロジロ見ている。
「!?その手の印、お前らまさか我々の邪魔立てをしているギルドの連中か!」
!?
今なんと言った!?
「あなた方2人は僕らを知っているんですか」
クラインが問いかける。
「やかましい!貴様らは見つけ次第消すよう命じられている。ここで土に還ってもらおう!」
その言葉がもはや回答である。僕らギルドのことを知っていて消すよう命じられていると言うことは…。
「きます、構えてください。奴らはアルフェウスの団員で間違いありません!」
クラインの言葉に一同バッと離れ臨戦態勢に入る。
フードの2人組も武器を取り出した。魔術師と剣士のようだ。
「ᛋᛟ ᚾᛟᛗᛁᚾᛟ ᚲᚨᛉᛖᚾᛟ ᚺᛟᛏᛟᚲ ᚢᚺᚨᚣ ᚨᛋᚨᚲᛁ」
「ᛋᛟᛃᚢᚱᛟ ᚢᛈ」
魔術師が仲間に魔術をかけたようだ。
「ふん、覚悟しろ貴様ら!」
剣士がこちらに向かって走ってくる。
早い!
「はぁあ!」
アリスが前に出て剣を受ける。
「速度なら私も負けませんよ!」
「ほぉ、おもしれぇじゃねぇか!」
キィん!キン!キン!
剣士の立ち回りと剣さばきは速度だけなら達人の域に達している。おそらくこれは魔術による身体強化だろう。
「ナタリア、矢で牽制して魔術師に詠唱させないでください!ドイルとそちらをお願いします!」
「わかったわ!」
「承知した!」
ナタリアは木の上に姿を消した。一方のドイルは魔術師に向かって突進していく。
「ぬぉぉおおおぉ!」
「ᛋᚨᚷᚨᛗᛁᚲᛟ ᛗᚨᛗᛟᚱᚢ ᛏᚨᛏᛖ」
すん!とナタリアの矢が飛ぶが、魔術師に躱されてしまう。
「ちぃ、なかなか身軽じゃない。魔術師のくせに!」
「ᛋᛖᚨᛚᛖᛞ!」
魔術師の前に青白い壁が展開される。
「ぬぉ!?」
振り上げたドイルの大剣がゴイン!と不思議な音を立て弾かれる。
「魔術による壁だな。良かろう、壁ごとお主を叩っ斬ってみせよう!」
「ふん、脳筋め。出来るものならやってみろ!」
「ドイル、早いとこその壁ぶち壊しちゃって!私の矢が全部弾かれちゃうわ!」
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・
ギィン!ガン!キン!
アリスと剣士の周りを火花が散る。アリスの方が手数は多いとはいえ、身体強化のかかった剣士を相手にするとその力は互角である。
トスっ!と剣士の背後にダガーが刺さる。
「さっきの小僧のか?」
ふと次の瞬間、背後にクラインが現れダガーを振りかざしていた!
「!?」
剣士は姿勢を低くしクラインの攻撃をかわしつつ、足払いでアリスの体勢を崩す。
それを飛んで避けるアリス。
その間に後ろにいるクラインを剣士はしゃがんだ姿勢のまま蹴り飛ばした!
武器で受け止め後方に飛ぶクライン。アリスも一度離れて体勢を立て直す。
「ふぅー、なんだそりゃ。魔術の類か?小僧、お前魔法剣士だったのか」
何やら勝手に勘違いをしているようだ。
「まぁいいぜ、2人相手にしてやるよ!」
剣士が再び構えた瞬間だった!
「オオオオオォォォォオォォォォォォオ!」
「!?まずい、また奴か!」
凄まじい咆哮が響き渡る。その咆哮に青ざめる剣士。
「おい、引くぞ!あいつしつこく邪魔してきやがる。あんなの相手にしてらんねぇ!」
そう言うと剣士は強化された身体能力を駆使し木の上に姿を消しそのまま離れていったようだ。
魔術師の方も姿が消えている。どうやらこの場から去ったようだ。
しかし、彼らが去った代わりに咆哮の主はこちらに近づいている!
「オオオオオオオオォオォォォオオ!」
一緒に大きな蹄の音が聞こえる。一体何が近づいている!
「ナタリアは身を隠したまま構えてください。ドイル、こちらへ!」
ドイル、アリス、クラインの3人は身を固める。
どんどん蹄の音は大きくなってくる。
そしてついに姿を見せた!
木々をかき分け現れたのは巨大な馬だった。いや、馬なのは体だけで、鎧に覆われたまるで人のような上半身が付いている!
「オォオオォォオオ!」
「ぬぉおおおぉお!」
ドイルが襲いかかる魔物を剣とその身で受け止める。
ゴン!と鎧が音を鳴らすが、さすが呪いの防具だけ当て防御力は凄まじいものだ。一歩も動じず攻撃を受け切った。
魔物の方は一度距離を置く。
「まずいわ、ケンタウロスよ!しかも武装しているわ!」
目の前の魔物は人間の上半身と馬の体が合わさった見た目をしている。
あれが噂に聞くケンタウロスか。
クラインは改めてその魔物に視線を向ける。
茶色い馬の体に人の上半身がくっついているが、上半身は鎧の覆われており、手には槍を持っている。
再びケンタウロスはこちらに向かって走ってくる!
馬の両前脚を高く上げ踏み潰そうとしてきたところをドイルが受け止める。
クラインとアリスは左右に散り攻撃を仕掛けるが…
「おぉおおぉおぉおお!」
槍を華麗に回して攻撃を弾くケンタウロス。
「よし、塞がった!」
ケンタウロスの足と手持ちの武器は3人の対応で使えない。今なら矢で射ぬける!
ナタリアは矢を数本放つ!狙いは馬の胴体部分だ。
「オォォオオォオオオオ!」
その瞬間、ケンタウロスは両の前足を地に下ろすとグルンと180度回転し後ろ足で下から上に向けドイルを蹴り上げる!
「ぬぉお!」
あのドイルの巨体が宙へ吹っ飛ぶ!その巨体にナタリアの矢が弾かれた。
「ちょっと!何やってるの!」
このくらいではダメージにならないことを知っているナタリアは平気でドイルに罵声を浴びせる。
四肢が自由になったケンタウロスは走りながら槍でアリスとクラインの攻撃をさばきながら突進してくる!
「ぐぅうう!」
「きゃぁあ!」
2人もドイル同様飛ばされてしまった。
ばっと姿勢を起こす3人。
「この魔物…強いですね」
アリスは無事なようだ。前方のケンタウロスを見据える。
「うむ。ただ強いだけじゃない。戦闘センスが抜群に良いようだ」
どうしたものか…。
クラインは考える。
たとえ逃げても馬の体では追いつかれてしまう。
木の上に逃げるのが最善だがドイルはおそらく登ることができない。
なにか…何か策は…
万策尽きたか、クラインが頭を悩ませているその時だった。
「ᚲᛁᚾᛟ ᚾᛖᛖᛞᛋ ᛟᛒᚨᚱᛁ!」
あたりに女性の声が響き渡る。
突然ケンタウロスの足元から木の根が伸び脚に絡もうとする。
「!?」
ケンタウロスは槍で動く根を弾きながら後方に飛ぶが、再び別の根が地面から生えてくる。
「ウォオオオオオオオオ!」
ケンタウロスは咆哮をあげると向きを変え引き返していった。
「助かったようだな」
ふー、とドイルは息をつく。
先ほど声のした場所に目をやると、そこには女性が立っていた。
つばの広い帽子に装飾のされたローブ。そして少し長めの木彫りの杖。
「あれ、ドロシーさん。なぜこんなところに」
アリスが声をあげる。
ドロシー…どこかで聞いた覚えがあるな。
クラインが記憶を掘り起こす。
「あ!あの時キースが話していた森の魔女!」
目の前の女性はにっこりと笑う。
妖艶でどこか色気の漂う大人の女性といった雰囲気だ。
「久しぶりね…。猟犬の牙の皆さん…。あなたははじめましてね…?」
やけにおっとりゆっくりとした口調で話す女性。
「私は森の魔女、ドロシー…。この森の異変に気付いてきたのでしょう…?ついていらっしゃい…。私の拠点で少し話しましょう…」
「とても素晴らしい場所だな!魔物が好き好んで住処にするのもわかると言うものだ!」
ドイルは甲冑のせいで歩きにくそうだ。地面より突き出た木の根につまづき転びそうになる。
「えぇ、人と手が一切入っていません。自然が形成するとてもいい環境です」
クラインも感嘆の表情だ。
妖精の森で“リューネの森”の場所を教えてもらった4人は、次の街襲撃が起こる前にと急ぎ調査に赴いたのだ。
「何のんきなこと言ってんのよ。こう言うところはマナが淀んで結晶化しやすいらしいわ。強力な魔物だって潜んでるかもしれないんだから、気を抜かないでよね!」
背格好こそ小柄だがまるで年長者のような警告をするナタリア。見た目に反してしっかりしていると言ったら侮辱になるだろうか。
「待ってください、人の気配がします」
アリスが足を止める。
その言葉に構える他の3人。4方に目を向け警戒していると、何者かが木の上から降り立った。
バッと4人の前方に2人の影が現れる。2人とも黒いローブにフードを深く被り、ペストマスクをつけている。
「止まれ!何者だお前たち。街のギルドの冒険者か!」
「悪いがここは立ち入り禁止だ。痛い目を見る前に引き返してもらおう」
仮面の中から男の声がする。
「何者だと問うのは我輩たちの方だと思うぞ。そんな格好で森にいるなど怪しさ全開ではないか!」
「ドイル、あなたが的を射た発言をすると頭を打ったんじゃないかって私心配になるわ」
「ナタリア、流石に言い過ぎじゃないですか?」
即座に突っ込むクライン。
「テメェら、ふざけやがって!…ん?」
片方の男が何かに気づいたようだ。こちらをジロジロ見ている。
「!?その手の印、お前らまさか我々の邪魔立てをしているギルドの連中か!」
!?
今なんと言った!?
「あなた方2人は僕らを知っているんですか」
クラインが問いかける。
「やかましい!貴様らは見つけ次第消すよう命じられている。ここで土に還ってもらおう!」
その言葉がもはや回答である。僕らギルドのことを知っていて消すよう命じられていると言うことは…。
「きます、構えてください。奴らはアルフェウスの団員で間違いありません!」
クラインの言葉に一同バッと離れ臨戦態勢に入る。
フードの2人組も武器を取り出した。魔術師と剣士のようだ。
「ᛋᛟ ᚾᛟᛗᛁᚾᛟ ᚲᚨᛉᛖᚾᛟ ᚺᛟᛏᛟᚲ ᚢᚺᚨᚣ ᚨᛋᚨᚲᛁ」
「ᛋᛟᛃᚢᚱᛟ ᚢᛈ」
魔術師が仲間に魔術をかけたようだ。
「ふん、覚悟しろ貴様ら!」
剣士がこちらに向かって走ってくる。
早い!
「はぁあ!」
アリスが前に出て剣を受ける。
「速度なら私も負けませんよ!」
「ほぉ、おもしれぇじゃねぇか!」
キィん!キン!キン!
剣士の立ち回りと剣さばきは速度だけなら達人の域に達している。おそらくこれは魔術による身体強化だろう。
「ナタリア、矢で牽制して魔術師に詠唱させないでください!ドイルとそちらをお願いします!」
「わかったわ!」
「承知した!」
ナタリアは木の上に姿を消した。一方のドイルは魔術師に向かって突進していく。
「ぬぉぉおおおぉ!」
「ᛋᚨᚷᚨᛗᛁᚲᛟ ᛗᚨᛗᛟᚱᚢ ᛏᚨᛏᛖ」
すん!とナタリアの矢が飛ぶが、魔術師に躱されてしまう。
「ちぃ、なかなか身軽じゃない。魔術師のくせに!」
「ᛋᛖᚨᛚᛖᛞ!」
魔術師の前に青白い壁が展開される。
「ぬぉ!?」
振り上げたドイルの大剣がゴイン!と不思議な音を立て弾かれる。
「魔術による壁だな。良かろう、壁ごとお主を叩っ斬ってみせよう!」
「ふん、脳筋め。出来るものならやってみろ!」
「ドイル、早いとこその壁ぶち壊しちゃって!私の矢が全部弾かれちゃうわ!」
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・
ギィン!ガン!キン!
アリスと剣士の周りを火花が散る。アリスの方が手数は多いとはいえ、身体強化のかかった剣士を相手にするとその力は互角である。
トスっ!と剣士の背後にダガーが刺さる。
「さっきの小僧のか?」
ふと次の瞬間、背後にクラインが現れダガーを振りかざしていた!
「!?」
剣士は姿勢を低くしクラインの攻撃をかわしつつ、足払いでアリスの体勢を崩す。
それを飛んで避けるアリス。
その間に後ろにいるクラインを剣士はしゃがんだ姿勢のまま蹴り飛ばした!
武器で受け止め後方に飛ぶクライン。アリスも一度離れて体勢を立て直す。
「ふぅー、なんだそりゃ。魔術の類か?小僧、お前魔法剣士だったのか」
何やら勝手に勘違いをしているようだ。
「まぁいいぜ、2人相手にしてやるよ!」
剣士が再び構えた瞬間だった!
「オオオオオォォォォオォォォォォォオ!」
「!?まずい、また奴か!」
凄まじい咆哮が響き渡る。その咆哮に青ざめる剣士。
「おい、引くぞ!あいつしつこく邪魔してきやがる。あんなの相手にしてらんねぇ!」
そう言うと剣士は強化された身体能力を駆使し木の上に姿を消しそのまま離れていったようだ。
魔術師の方も姿が消えている。どうやらこの場から去ったようだ。
しかし、彼らが去った代わりに咆哮の主はこちらに近づいている!
「オオオオオオオオォオォォォオオ!」
一緒に大きな蹄の音が聞こえる。一体何が近づいている!
「ナタリアは身を隠したまま構えてください。ドイル、こちらへ!」
ドイル、アリス、クラインの3人は身を固める。
どんどん蹄の音は大きくなってくる。
そしてついに姿を見せた!
木々をかき分け現れたのは巨大な馬だった。いや、馬なのは体だけで、鎧に覆われたまるで人のような上半身が付いている!
「オォオオォォオオ!」
「ぬぉおおおぉお!」
ドイルが襲いかかる魔物を剣とその身で受け止める。
ゴン!と鎧が音を鳴らすが、さすが呪いの防具だけ当て防御力は凄まじいものだ。一歩も動じず攻撃を受け切った。
魔物の方は一度距離を置く。
「まずいわ、ケンタウロスよ!しかも武装しているわ!」
目の前の魔物は人間の上半身と馬の体が合わさった見た目をしている。
あれが噂に聞くケンタウロスか。
クラインは改めてその魔物に視線を向ける。
茶色い馬の体に人の上半身がくっついているが、上半身は鎧の覆われており、手には槍を持っている。
再びケンタウロスはこちらに向かって走ってくる!
馬の両前脚を高く上げ踏み潰そうとしてきたところをドイルが受け止める。
クラインとアリスは左右に散り攻撃を仕掛けるが…
「おぉおおぉおぉおお!」
槍を華麗に回して攻撃を弾くケンタウロス。
「よし、塞がった!」
ケンタウロスの足と手持ちの武器は3人の対応で使えない。今なら矢で射ぬける!
ナタリアは矢を数本放つ!狙いは馬の胴体部分だ。
「オォォオオォオオオオ!」
その瞬間、ケンタウロスは両の前足を地に下ろすとグルンと180度回転し後ろ足で下から上に向けドイルを蹴り上げる!
「ぬぉお!」
あのドイルの巨体が宙へ吹っ飛ぶ!その巨体にナタリアの矢が弾かれた。
「ちょっと!何やってるの!」
このくらいではダメージにならないことを知っているナタリアは平気でドイルに罵声を浴びせる。
四肢が自由になったケンタウロスは走りながら槍でアリスとクラインの攻撃をさばきながら突進してくる!
「ぐぅうう!」
「きゃぁあ!」
2人もドイル同様飛ばされてしまった。
ばっと姿勢を起こす3人。
「この魔物…強いですね」
アリスは無事なようだ。前方のケンタウロスを見据える。
「うむ。ただ強いだけじゃない。戦闘センスが抜群に良いようだ」
どうしたものか…。
クラインは考える。
たとえ逃げても馬の体では追いつかれてしまう。
木の上に逃げるのが最善だがドイルはおそらく登ることができない。
なにか…何か策は…
万策尽きたか、クラインが頭を悩ませているその時だった。
「ᚲᛁᚾᛟ ᚾᛖᛖᛞᛋ ᛟᛒᚨᚱᛁ!」
あたりに女性の声が響き渡る。
突然ケンタウロスの足元から木の根が伸び脚に絡もうとする。
「!?」
ケンタウロスは槍で動く根を弾きながら後方に飛ぶが、再び別の根が地面から生えてくる。
「ウォオオオオオオオオ!」
ケンタウロスは咆哮をあげると向きを変え引き返していった。
「助かったようだな」
ふー、とドイルは息をつく。
先ほど声のした場所に目をやると、そこには女性が立っていた。
つばの広い帽子に装飾のされたローブ。そして少し長めの木彫りの杖。
「あれ、ドロシーさん。なぜこんなところに」
アリスが声をあげる。
ドロシー…どこかで聞いた覚えがあるな。
クラインが記憶を掘り起こす。
「あ!あの時キースが話していた森の魔女!」
目の前の女性はにっこりと笑う。
妖艶でどこか色気の漂う大人の女性といった雰囲気だ。
「久しぶりね…。猟犬の牙の皆さん…。あなたははじめましてね…?」
やけにおっとりゆっくりとした口調で話す女性。
「私は森の魔女、ドロシー…。この森の異変に気付いてきたのでしょう…?ついていらっしゃい…。私の拠点で少し話しましょう…」
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