重なる世界の物語

えんとま

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集いし猟犬達

魔武器"グリフォンダガー"

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「ここが入り口?ワイバーンの姿は見えませんが…」

クラインは辺りを見回す。木の生い茂る林の中、突如開けたところにそれはあった。

どうやら遺跡は地下に埋まっているようだ。見えているのは入り口と思われる立派な石扉だけである。

辺りには崩れかけた柱が数本立ち並んでいる。遺跡と言うよりは神殿に近いかもしれない。

「ダン、まさか騙されたのではないですか?」

アリスが疑いの眼差しを向ける。

「そんなはずねぇんだがな…。ま、ワイバーンがいねぇならそっちの方が好都合だ。まずは中に入ってみようぜ」

そう言ってダンは扉に向かって歩いていく。

開けた空間のちょうど真ん中まで来たところだろうか。何やら周りの木々が揺れ始める。

「なんだ、風が?」

それにしては揺れが激しい。
それに…

「風は吹いていませんよ!見てください、ワイバーンです!」

どうやら噂は本当だったらしい。
アリスが指差す先には、羽の生えた魔物が飛んでいた。それはこちらにすごい速さで向かってきている。

まるでドラゴンのような見た目だが、前足はなく翼が代わりに生えている。
爛々と輝く爬虫類を思わせる目に燃えるような鱗、ドラゴンに比べると一回り小さいが、馬一頭くらいなら平気で持ち去ってしまうだろう。

「ひい、ふう、みぃ…5匹だな」

「降りてきませんね」

「様子見してるんでしょうか」

5匹は三人の上空を旋回したまま降りてくる様子がない。
このままなら遺跡の中に入れるのではと思ったダンは思い切って扉に向かい歩き始める。

その瞬間、三人の元に影が落ちる…!

「伏せて!」

アリスの言葉に反応し、全員地に飛び込み体勢を低くする。

すぐ上をワイバーンがかすめていった。
強い風が体を押してくる。

「チッ、やっぱ行かせてくれねぇか。どういうわけか奴らはここに人を入れたくないらしいな」

制空権を持つワイバーンには地の利がある(地ではないが)。空を飛べない三人は若干不利だ。

「ダン、銃で迎撃してください」

クラインはダンに合図する。

「そりゃ構わねぇがよ、一匹に撃ったら全部襲ってこねぇか?」

「大丈夫、僕も攻めますので」

「攻めるったて…銃持ってきてんのかよ」

クラインは懐から数本のダガーを取り出してみせる。

「いえ、銃はありませんが、

そういうとクラインは待っているダガーのうち一本をワイバーンに投げる。

流石は継承する魂の宿主マスターソウルホルダー。ダガーはまっすぐ飛んでいき、ワイバーンの鱗を貫通して突き刺さる。

「!?グオォォオ!」

ワイバーンはこちらに向かって急降下してきた!
他のワイバーンも様子見をやめ臨戦体勢に入っている。

「ダン、向かってくるワイバーンを銃で迎撃してください。僕は奴らを落とします!」

おいおい!羽虫を相手にするんじゃねえんだぞ、とダンが言おうとした時には姿

!?

あいつ、姿が消えやがった!

ワイバーンに発砲しつつ辺りを見回すダン。

「あそこですよ、ダン」

アリスが指差す先は…

ワイバーンたちがいる空だった。

クラインが空を飛んでいる!?

クラインはゲートからウォーハンマーを取り出すと空中からワイバーンめがけて振り落とす。

「ギェェ!」

不思議なうめき声とともに、宣言通り地に堕ちるワイバーン。

次の瞬間にはまたクラインの姿は無くなっており、気づけば別のワイバーンの側まで移動しているではないか!

「なんだあれ、あいつ魔術でも使えるようになったのか?」

呆気にとられているダン。

「いえ、あれはこの間のグリフォンで作った魔武器ですよ」

・・・・・・・・
・・・・・
・・・


「すげぇのができたぞ坊主!」

遡ること数週間前。アリスとクラインはグリフォンの魔石から作った魔武器をうけとりにきていた。

「すげぇの…ですか」

相変わらずよく響く声の"ジャガーノート"店主ドーガンに圧倒されつつ、期待に胸を膨らませるクライン。

「おうよ!こいつはな、"空を飛べる武器"だ!」

空を飛ぶ!

その言葉に目をキラキラ光らせるクライン。

「空を飛ぶ、ですか。防具では装備者が飛ぶことができるものがあると聞いたことがありますが、武器で飛ぶとは聞いたことありませんね」

アリスは首をかしげる。

「あー、あっちの飛ぶとは若干意味がちげぇ。ま、1から説明した方がはえぇな」

そう言ってドーガンはカウンターに武器を置いた。

それは10本の装飾がされたダガーと、一つの指輪だった。

「グリフォンにはよ、帰巣本能が備わってるんだが知ってるか?」

「帰巣本能…どんなに離れても本能で巣に戻ってこれるっていうアレですか」

クラインはざっくり回答する。

「まぁそうだな。動物なんかにも備わってるが、一説によると磁気感知能力っつって、磁気を辿って巣に戻っているらしいんだけどよ」

ドーガンはカウンターを指でトントン叩きながら説明を続ける。

グリフォンこいつは流石魔物だけあってそこいらの動物の持つそれとはわけが違う。水飲み場や狩場など、自分の気に入った場所に次々とマーカーをつけて記憶するんだ。どんなに離れていてもマーカーをつけた場所を判別し、必ず目的の場所にたどり着く。活動範囲が広いグリフォンならではの能力だな」

「坊主が持ってきた魔石にはその性質が色濃く刻まれていてな、その結果できたのがこの魔武器だ」

ドーガンはカウンターに置かれた指輪を指差す。

「言ってしまえばこいつが本体、ダガーはマーカーだ」

なるほどそういうことか!
クラインはドーガンの言葉でおおよそ察しがついた。

「指輪をつけた装備者はマーカーまで移動が可能、空を飛べるというのはダガーが空中にある時に能力を発動した時の話ですね!」

「あぁ、そういうことさ。他にも浮力フロートの性質も持っていた魔石だからこそできた武器だな。使用者に浮力上昇のステータスを付与し、マーカーまで一瞬で移動できる」

「すごい武器ですね…なんかもう武器じゃなく魔道具みたいですが」

アリスも驚きを口にする。

「ダガーを自分のとこに戻すっていう逆動作も可能だ。気をつけなきゃいけねぇのは魔石の性質を攻撃に振ってないから殺傷力はそこらのダガーと変わりがないとこだな。大物相手にするときは気をつけろよ」

ドーガンはクラインの肩をバンバンと叩く。

「ま、うまく使ってくれや!」

・・・・・・・・
・・・・・
・・・


「なんつー武器だよ。ダメだろ、クラインにそんなもん持たしたら」

落ちてきたワイバーンをアリスとダンで処理する。今最後の一匹が塵になった。

「もちろん欠点もありますよ。能力が能力なだけに…」

アリスが言いかけたそのとき、近くにダガーが突き刺さり、そこにクラインが一瞬で移動してきた…と次の瞬間。


パタリとクラインが地に転がる。

やれやれと言わんばかりに息をつくアリス。


「マナの消費が激しいんです」
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