31 / 47
動き出した影
ゼノン神話ー第1章 新世界ー
しおりを挟む
そこには“無”が“有”った。どこまで行っても何もない無が有った。
“無”は気に入らなかった。“無”なのに“有”る。自分はなんて曖昧な者なんだと。
やがて堪え切れなくなった無は、自身が無なのか有なのかはっきりさせるため、自身を照らす“光”を生み出した。
やがて光は影を落とす。そこにはすでに無だの有だのは存在せず、光と影だけがあった。
そこで無であった光と影は気づく。無あっての有であり、どちらか一つだけが存在することなど不可能なのだと。
光が上を生み出せば、影は下を生み出した。
光が正を生み出せば、影は悪を生み出す。
そうして様々な対を知的探究心を原動力に生み出し続けた光と影は、次第に飽きを感じ始めていた。
自分たちは思いつくままになんでもできてしまう。想像出来るものは創造出来てしまうのだ。なんとつまらないことか!
そこで光と影は思いついた。
自分たち以外に自我を持つ、不完全なものを生み出し観察するというのはどうだろうか。
そこで光と影は“生命”を生み出し、それぞれの種族を“男”と“女”の対に分け知識を与えた。
エルフ、ドワーフ、ドラゴン、人間、獣
そして自身の原点であった有する者、持たざる者を生み出した。
光と影はなんでもできてしまう自分たちが深く関わっては面白くないと、自身を“天”、生命を“地“に分け、過剰な接触ができないようにした。
生命達に光は”創造神リリー“、影は”破壊神オーレン“と名乗り、各々好きなように生きることを命じる。
エルフは森に住み始めた。自然と調和する生き方を見つけ、自然と会話するすべを身につけた。
ドワーフは鉱山に住み始めた。鉱石を叩く音が気に入った彼らは、加工をすることで生活を豊かにするすべを身につけた。
ドラゴンは空に住み始めた。巨大な体に強力な力を秘めた彼らに地上は狭すぎたのだ。巨大な羽をその身に生やし、空で生活するすべを身につけた。
獣は地上に住み始めた。四肢を全て地につけて、野を駆け回った。その俊敏な動きを持って、地上で生活するすべを身につけた。
人間は平原に住み始めた。他の種族に力こそ劣るものの、彼らは飽くなき探究心をもってして、多くの知識を吸収し利用するすべを身につけた。
有するものはどこにでもいた。彼らは満足していた。なぜなら全てを持っていたのだ。
持たざる者はどこにもいなかった。彼らは常に飢えていた。なぜなら何も持っていなかったから。
時間が経つにつれ各種族は自身の特徴を活かし発展していく。しかし有する者と持たざる者はいつまでたっても変わることはなかった。
創造神リリーは予想できない動きを見せる生命達に満足していたが、破壊神オーレンは少しつまらなかった。生命達は悠々と発展させていくばかりで刺激がない。
そこでオーレンは、何も持つことがない哀れな生命に教えてしまったのだ。
生命が持つ”生“と対をなす”死“の存在を。
これこそが神の犯した過ちだった。
始めてなにかを得た持たざる者は、その存在を試したくなり、対である有する者を殺してしまった。
持たざる者はこの瞬間から持たざる者ではなくなった。”死“を持ってしまったのだから。
その様を一番近くで見ていた人間は、もっとも死に近い種族となり、その寿命は他の種族に比べ短く、闇に染まりやすくなってしまう。
このままでは全ての種族が全滅してしまうことを恐れた対神だが、天と地に隔ててしまったため地に対して強く干渉することができない。仕方なく、持てる力を使って、自我を持った”死“を地の奥底に封じ込めた。
不完全な封印はいつ効力を失うかわからない。対神は自身と同じ神と呼ばれる存在をいくつも作り、彼らに役割を与えた。地の様々なものに宿り、”死“を監視する役目だ。
生命達に対しては、死に対抗すべく”繁殖“するすべを与えた。
とりわけ寿命の短い人間にはその力を多く分け与え、人間はその数をどんどん増やしていったのだ。
ゼノン神話
ー第1章 新世界ー より一部抜粋
“無”は気に入らなかった。“無”なのに“有”る。自分はなんて曖昧な者なんだと。
やがて堪え切れなくなった無は、自身が無なのか有なのかはっきりさせるため、自身を照らす“光”を生み出した。
やがて光は影を落とす。そこにはすでに無だの有だのは存在せず、光と影だけがあった。
そこで無であった光と影は気づく。無あっての有であり、どちらか一つだけが存在することなど不可能なのだと。
光が上を生み出せば、影は下を生み出した。
光が正を生み出せば、影は悪を生み出す。
そうして様々な対を知的探究心を原動力に生み出し続けた光と影は、次第に飽きを感じ始めていた。
自分たちは思いつくままになんでもできてしまう。想像出来るものは創造出来てしまうのだ。なんとつまらないことか!
そこで光と影は思いついた。
自分たち以外に自我を持つ、不完全なものを生み出し観察するというのはどうだろうか。
そこで光と影は“生命”を生み出し、それぞれの種族を“男”と“女”の対に分け知識を与えた。
エルフ、ドワーフ、ドラゴン、人間、獣
そして自身の原点であった有する者、持たざる者を生み出した。
光と影はなんでもできてしまう自分たちが深く関わっては面白くないと、自身を“天”、生命を“地“に分け、過剰な接触ができないようにした。
生命達に光は”創造神リリー“、影は”破壊神オーレン“と名乗り、各々好きなように生きることを命じる。
エルフは森に住み始めた。自然と調和する生き方を見つけ、自然と会話するすべを身につけた。
ドワーフは鉱山に住み始めた。鉱石を叩く音が気に入った彼らは、加工をすることで生活を豊かにするすべを身につけた。
ドラゴンは空に住み始めた。巨大な体に強力な力を秘めた彼らに地上は狭すぎたのだ。巨大な羽をその身に生やし、空で生活するすべを身につけた。
獣は地上に住み始めた。四肢を全て地につけて、野を駆け回った。その俊敏な動きを持って、地上で生活するすべを身につけた。
人間は平原に住み始めた。他の種族に力こそ劣るものの、彼らは飽くなき探究心をもってして、多くの知識を吸収し利用するすべを身につけた。
有するものはどこにでもいた。彼らは満足していた。なぜなら全てを持っていたのだ。
持たざる者はどこにもいなかった。彼らは常に飢えていた。なぜなら何も持っていなかったから。
時間が経つにつれ各種族は自身の特徴を活かし発展していく。しかし有する者と持たざる者はいつまでたっても変わることはなかった。
創造神リリーは予想できない動きを見せる生命達に満足していたが、破壊神オーレンは少しつまらなかった。生命達は悠々と発展させていくばかりで刺激がない。
そこでオーレンは、何も持つことがない哀れな生命に教えてしまったのだ。
生命が持つ”生“と対をなす”死“の存在を。
これこそが神の犯した過ちだった。
始めてなにかを得た持たざる者は、その存在を試したくなり、対である有する者を殺してしまった。
持たざる者はこの瞬間から持たざる者ではなくなった。”死“を持ってしまったのだから。
その様を一番近くで見ていた人間は、もっとも死に近い種族となり、その寿命は他の種族に比べ短く、闇に染まりやすくなってしまう。
このままでは全ての種族が全滅してしまうことを恐れた対神だが、天と地に隔ててしまったため地に対して強く干渉することができない。仕方なく、持てる力を使って、自我を持った”死“を地の奥底に封じ込めた。
不完全な封印はいつ効力を失うかわからない。対神は自身と同じ神と呼ばれる存在をいくつも作り、彼らに役割を与えた。地の様々なものに宿り、”死“を監視する役目だ。
生命達に対しては、死に対抗すべく”繁殖“するすべを与えた。
とりわけ寿命の短い人間にはその力を多く分け与え、人間はその数をどんどん増やしていったのだ。
ゼノン神話
ー第1章 新世界ー より一部抜粋
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

スローライフとは何なのか? のんびり建国記
久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。
ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。
だけどまあ、そんな事は夢の夢。
現実は、そんな考えを許してくれなかった。
三日と置かず、騒動は降ってくる。
基本は、いちゃこらファンタジーの予定。
そんな感じで、進みます。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
笑福音葉 🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる