重なる世界の物語

えんとま

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動き出した影

人狼

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人狼 ランクCC 合成種

狼と人が合わさった半人半狼。普段は人間の姿だが、月夜の晩にその姿をあらわす。強靭な体力と力、そして狼のような俊敏な動き。何よりも特徴的なのは驚異的な回復力で、回復するスピードを上回る速度で攻撃をし続けなければ倒すことができない、とても危険な魔物である。

人狼には二種類おり、先天的に変身能力を有する人間か、呪術などにより狼憑にされる場合の二つである。
先天的に変身能力を持つ人間の場合、その多くは人語を理解し、己の人格も保ったままのケースが多い。
呪術により生まれる人狼は、基本的に自身が変身している時の記憶はなく、強力な呪術であれば変身している間は呪術師に操られてしまう時もある。根は呪術なので、銀の弾丸や奇蹟が効果的だ。

半人半狼なので合成種ではあるが、人を模したその姿に人語を理解できる個体もいることから、本によっては人疑種とランク付けするものもある。


トラソニル魔物全集1
~合成種編~ より一部抜粋


・・・・・・・・
・・・・・
・・・


「おはようございます、リーファ様。創造神リリーのご加護がありますように」

「おはようございます。あなたにも、神のご加護がありますように」

宿の店主は目をキラキラさせている。
若干引っかかるところがあるが気にせず宿を出る。

「リーファ様!おはようございます!」

「リーファ様、今日も一段とお美しいですわ」

「…おい、リーファてめぇ」

「昨日は情報収集せずに布教活動しとったの、お主」

うふふとわらって誤魔化すリーファ。
抜け目のないヤツめ。というか仕事しろ。

・・・・・・・・
・・・・・
・・・


「リーファ、そろそろアルパクイルに着く。隠蔽効果の加護をかけてくれ」

おそらく現場に残った残り香を辿られて冒険者は殺された。
まだ人狼と確定したわけじゃないが、ここは慎重に調査したい。

アルパクイルの村についた。あれから誰も立ち寄っていないのだろう。よく見ると壊された扉や割られた窓がそのままになっている。

「わたくしは殺された村人に祈りを捧げて参りますわ」

「それがえぇ。儂らは調査をするとしようか」

まずは壊されたドアの前に立つ。鋭い爪痕が4本残っている。親指を除いた4本の指だろう。

傷が付いている位置が高い。ヴェロウルフではこの位置に傷はつかない。

「ダン、こっちを見てみぃ」

雲仙に呼ばれて中に入る。

「ひでぇ状態だな」

数日放置されいたせいで死体はひどい状態だ。あとで火葬してやるとしよう。

「この死体、欠損している部分がない。ヴェロウルフが自らのテリトリーに入ってきたものを殺す以外に人を襲うんなら、そりゃ腹を満たすためじゃろ。こいつは違う。じゃよ」

「…雲仙の爺さん、どう思うかい?」

「お前さんの仮定とやらは当たっているようじゃの。残念じゃが」

はぁぁーとでかいため息をつく。

「やっぱそうだよなぁ。俺あいつの相手すんのすげぇ嫌なんだけど」

「儂だって嫌じゃよ。驚異的な回復力をもつ人狼を倒すには、その回復スピードを上回る量の攻撃をせねばならん。奴の俊敏な動きに対応しながら、じゃ」

「もともと変身能力を持っていた奴じゃないだろうな。29歳の男だって話だ。そうなるとそいつを人狼にした黒幕の呪術師もいるかもしんねぇ。こりゃ完全解決するのは骨が折れるぜ」

「ダン、おまえさん銀の弾丸は持ってるのか?」

「そんなん持ってねぇよ。人狼相手にするなんて思ってなかったし、何よりあれいい値段するんだぜ?」

こんなんだったらアリスを連れてくるんだったぜ、と公開を口にするダン。
アリスの神速とも呼べる剣撃であれば、人狼の回復スピードを上回ることもできるだろうが…。

「まぁ、まずはシリエに相談じゃな。ことによっちゃ“専属武器”の使用を許可してくれるかもしれんぞ?」

「人狼相手にかぁ?まぁクラス的にはB寄りのCってとこだしなぁ。だが俺ら三人もいるからそう首を縦に降ってくれるともおもわねぇが…」

「二人とも、わたくしは用事を終えましたわ。調査の方はもういいのかしら」

「リーファ嬢、ご苦労だったの。調査の方は問題ない。人狼で確定じゃろうて」

「一旦引いて作成会議だな。死体を集めて火葬してやろう。このままじゃ不憫すぎるぜ」

隠蔽の加護は痕跡こそ消せるものの姿形を消せるわけではない。三人は隠蔽の加護があるからと少しばかり油断していた。

に、三人は気がつくことはなかった。
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