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初めての依頼
キース先生の魔術講座 3限目
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「“魔力切れ”については大丈夫だね。それじゃ次に行こう」
「体内の魔術回路を組み替えて準備は整った。あとはマナを使って魔術を発動するGOサインが必要なんだ。これを“トリガー”という。」
「トリガーも魔術言語と同じでね。最後に“発動するぞ”と宣言しているんだ。これがないと魔術回路を組み替えても意味はないし、マナも消費されないよ」
さっきまでは自分でも魔術が使えそうな気がしていたが、魔術言語とやらを覚えない限りは遠い夢のようだ。
「後は詠唱破棄について教えておこう。詠唱破棄っていうのはその名のとおり、詠唱を破棄して魔術回路を組み替える技術だよ。詠唱技術が開発される前の魔術も詠唱はしていなかったけど、あれはそもそも破棄してるんじゃなくて使っていないから別物でね。失われた魔術という分類になるんだけど、まぁそっちの話はいいか」
なんだかまたわからない単語がたくさん出てきた。
順番に説明するよ、とキースは話を始める。
「何度も何度も同じ魔術を使っているとね、そのたび同じ詠唱をするし同じように魔術回路は組み変わる。そうするとだんだん体が癖を覚えてきて、結果的には詠唱しなくても魔術回路に作用することができようになるだ」
いまいちピンときていないクラインの顔を見て、キースはまた例え話をする。
「クライン君はそろばんって知っているかな」
「えぇ、商人が使っているのを見たことがあります。計算するために使う道具ですよね。」
「そうそう。あれは珠を弾いて頭の中で計算するのを助ける道具だよね。頭の中の計算を魔術回路、そろばんは詠唱だとしよう」
「そろばんを使うことに慣れてしまった人は、そろばんが例え手元になくったって、空中で指を弾いて計算する人がいるよね。あれは頭の中で見えないそろばんを弾いているんだけど、道具は使っていないから結果的に全て頭の中で計算してしまっているよね」
「これでさっきの例えを思い出してほしいだけど、そろばんは詠唱で計算は魔術回路だったね。この話で行くと詠唱は魔術回路の中に組み込まれているから、詠唱を実際にしなくても魔術回路を組み替えることができる。これが詠唱破棄だよ」
すごい…!
クラインは感動していた。こんな複雑な話をそろばんに例えてこんなにもわかりやすく説明できるなんて。きっとキースは先生でも稼いでいけるだろう。
「さて、僕が教えようと思っていたことはだいたいこんなところかな。それじゃ、君に渡した魔道具の話をしよう。それをつけた時、なんだか違和感を覚えなかったかい?」
「えぇ、そういえば…なにかが体の中を巡ったような感覚がありました」
ウンウンと頷くキース
「その魔道具はさっき話した触媒に近いものがあるんだ。大気中のマナを取り込めるんだけど、それと同時に使用者にもマナを取り込む手助けをしてくれる。放出はできないみたいだけどね。体の中を巡っていたのは君の体内に蓄積されたマナだよ。魔道具によって魔術回路が活性化して、マナが巡れるくらいまで起こされたんだ」
そういうことだったのか。てっきり便利魔道具の副作用かと…
「魔道具はクライン君の体内に蓄積できる魔力容量によってその効果が変わってくる。多分今の感じだと、収納できる武器は4つくらいかな。身につけ続けているといずれ容量も増えていくから、魔術回路が体に馴染む頃には10個くらい入るんじゃないかな」
「10個も!すごいですね魔道具って」
いや、魔道具がすごいっていうかディジーさんからもらったあの石がすごかったのか。
「それよりどうだいクライン君、今の話で何か気になったことはないかい?」
気になったこと?
「いえ、なんでしょうか」
はははっとキースは笑った。
「そうか、気にならなかったということはそれだけ身に付いたってことだね。今の魔道具の話をしていて君は何の疑問も抱かなかたし一発で理解できている。それはつまり魔術について理解できたってことさ」
はっとするクライン。
確かにそうだ。昨日まではきっと理解できなかっただろう話についていける。自分でも驚くほどに!
「キースのおかげです。本当に教えるのが上手でびっくりしました」
「ありがとうクライン君。僕も君の吸収が早いもんだから教えるのが楽しかったよ」
そんな話をしていると、1階からシリエが上がってきた。
「お邪魔するわね。いま、大丈夫かしら」
「うん、ちょうど今終わったところだよ」
「よかったわ。二人に頼みたいことがあるの。降りてきてくれないかしら」
なんだろう?二人は顔を見合わせる。
とりあえず、後方に続いて1階に降りていった。
「体内の魔術回路を組み替えて準備は整った。あとはマナを使って魔術を発動するGOサインが必要なんだ。これを“トリガー”という。」
「トリガーも魔術言語と同じでね。最後に“発動するぞ”と宣言しているんだ。これがないと魔術回路を組み替えても意味はないし、マナも消費されないよ」
さっきまでは自分でも魔術が使えそうな気がしていたが、魔術言語とやらを覚えない限りは遠い夢のようだ。
「後は詠唱破棄について教えておこう。詠唱破棄っていうのはその名のとおり、詠唱を破棄して魔術回路を組み替える技術だよ。詠唱技術が開発される前の魔術も詠唱はしていなかったけど、あれはそもそも破棄してるんじゃなくて使っていないから別物でね。失われた魔術という分類になるんだけど、まぁそっちの話はいいか」
なんだかまたわからない単語がたくさん出てきた。
順番に説明するよ、とキースは話を始める。
「何度も何度も同じ魔術を使っているとね、そのたび同じ詠唱をするし同じように魔術回路は組み変わる。そうするとだんだん体が癖を覚えてきて、結果的には詠唱しなくても魔術回路に作用することができようになるだ」
いまいちピンときていないクラインの顔を見て、キースはまた例え話をする。
「クライン君はそろばんって知っているかな」
「えぇ、商人が使っているのを見たことがあります。計算するために使う道具ですよね。」
「そうそう。あれは珠を弾いて頭の中で計算するのを助ける道具だよね。頭の中の計算を魔術回路、そろばんは詠唱だとしよう」
「そろばんを使うことに慣れてしまった人は、そろばんが例え手元になくったって、空中で指を弾いて計算する人がいるよね。あれは頭の中で見えないそろばんを弾いているんだけど、道具は使っていないから結果的に全て頭の中で計算してしまっているよね」
「これでさっきの例えを思い出してほしいだけど、そろばんは詠唱で計算は魔術回路だったね。この話で行くと詠唱は魔術回路の中に組み込まれているから、詠唱を実際にしなくても魔術回路を組み替えることができる。これが詠唱破棄だよ」
すごい…!
クラインは感動していた。こんな複雑な話をそろばんに例えてこんなにもわかりやすく説明できるなんて。きっとキースは先生でも稼いでいけるだろう。
「さて、僕が教えようと思っていたことはだいたいこんなところかな。それじゃ、君に渡した魔道具の話をしよう。それをつけた時、なんだか違和感を覚えなかったかい?」
「えぇ、そういえば…なにかが体の中を巡ったような感覚がありました」
ウンウンと頷くキース
「その魔道具はさっき話した触媒に近いものがあるんだ。大気中のマナを取り込めるんだけど、それと同時に使用者にもマナを取り込む手助けをしてくれる。放出はできないみたいだけどね。体の中を巡っていたのは君の体内に蓄積されたマナだよ。魔道具によって魔術回路が活性化して、マナが巡れるくらいまで起こされたんだ」
そういうことだったのか。てっきり便利魔道具の副作用かと…
「魔道具はクライン君の体内に蓄積できる魔力容量によってその効果が変わってくる。多分今の感じだと、収納できる武器は4つくらいかな。身につけ続けているといずれ容量も増えていくから、魔術回路が体に馴染む頃には10個くらい入るんじゃないかな」
「10個も!すごいですね魔道具って」
いや、魔道具がすごいっていうかディジーさんからもらったあの石がすごかったのか。
「それよりどうだいクライン君、今の話で何か気になったことはないかい?」
気になったこと?
「いえ、なんでしょうか」
はははっとキースは笑った。
「そうか、気にならなかったということはそれだけ身に付いたってことだね。今の魔道具の話をしていて君は何の疑問も抱かなかたし一発で理解できている。それはつまり魔術について理解できたってことさ」
はっとするクライン。
確かにそうだ。昨日まではきっと理解できなかっただろう話についていける。自分でも驚くほどに!
「キースのおかげです。本当に教えるのが上手でびっくりしました」
「ありがとうクライン君。僕も君の吸収が早いもんだから教えるのが楽しかったよ」
そんな話をしていると、1階からシリエが上がってきた。
「お邪魔するわね。いま、大丈夫かしら」
「うん、ちょうど今終わったところだよ」
「よかったわ。二人に頼みたいことがあるの。降りてきてくれないかしら」
なんだろう?二人は顔を見合わせる。
とりあえず、後方に続いて1階に降りていった。
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