重なる世界の物語

えんとま

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冒険者になるということ

自分だけの武器

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ダン、アリス、クラインの3人は蛇の尻尾スネークテイルを後にする。

「さて、道具屋の次は…「武器屋ですね!」

食いつきのいいクライン。それもそのはず、武器を扱う“技”の継承する魂の宿主マスターソウルホルダーからしてみれば、宝物庫のようなものだろう。

「そうですね。じゃあジャガーノートに向かいましょうか」

圧倒的破壊力ジャガーノート!?武器屋にすごい名前をつける人がいたものだ。そんなすごい武器を揃えているのか…。

・・・・・・・・・
・・・・・
・・・


クラインは武器屋“ジャガーノート”の前に立つ。
これは…武器屋なのか…?

クラインは目の前の建物を見上げる。いや、見上げたところでその全体を捉えることはできなかた。想像を超える大きな建物だったのだ。

何やら煙突らしきところから煙が吐き出されている。
まるで工場でも見ているようだ。

「どうだ、驚いたか?」

予想通りの反応にニッと笑うダン

「ここはな、ただの武器屋じゃねぇんだ。普通は装備品は工房で作られて、どっかの店に並ぶんだけどよ。ここは自分とこの店で装備を作って売ってるんだ」

「なのでここでは特注で武器を作ってもらうこともできますし、持っている装備の加工強化やメンテナンスも引き受けてくれるんです。」

アリスも捕捉で説明を入れてくれた。

「国中探してもこれほどの武器屋はなかなか見つかりませんよ」

中に入ると広い店内には多種多様な武器や防具が並ぶ。クラインの初めて見るものばかりだが、目に入る瞬間に武器の名前や使い方が自然と理解できる。

だが中にはものが混じっている。クラインは胸の内に熱いものを感じる。

だ!

ダンはこの店で武器を作っているといった。きっとここの店のオリジナルだったり、継承する魂マスターソウルが一度宿主を離れている間に進化を遂げたものだろう。

あたりを見回していると、何やら筋肉質な大男がこちらに向かってくる。

猟犬の牙ハウンドファング御一行が客人を連れてうちに来るなんて珍しいじゃねぇか!」

腹の奥に響くような野太い声。まるで空気が震えているようだ。男の第一印象は“豪快”、この一言に尽きる。輪郭を覆う黒ひげに刈り上げられた髪。巨大な斧でも振り回していそうな風貌だ。

「よぉ、ドーガンの旦那。こいつは俺らの客人じゃねぇぜ」

「はじめまして、僕はクライン・アスコート。今日猟犬の牙ハウンドファングの一員になったものです」

クラインの言葉に目を丸くするドーガン。ほぉ、顎鬚をいじりながらクラインをジロジロと見定めるように見回す。

「一見するとひょろっとしているようで、かなり鍛えられているようだな。ただごついだけの筋肉じゃねぇ、しなやかなバネを持った…まるで芸術品だな…」

固まったままのクラインに気がついて、我に帰るドーガン

「おっと、ジロジロ見ちまってすまねぇな!職業柄でよ、ついついどんな装備がぴったりなのか、どんな武器が扱えんのかとか考えちまうのさ」

ズッと大きくゴツゴツした、漢らしさの溢れる手を差し出してくるドーガン。

「ドーガン・ロックバインだ。よろしく頼むぜ少年」

ガシッと音でも聞こえてきそうな握手を交わすと、アリスが説明をしてくれる。

「先ほどの蛇の尻尾スネークテイル同様、ジャガーノートもうちと提携している協力店です。一般に売り出している値段と比べるとかなり安く売ってくれるんです。ドーガンさんはここの店主になります」

そういうこった、とドーガンは豪快に笑いながらバシバシとクラインの肩を叩く。

「お前らんとこが他のギルドの手に余る依頼をガンガンこなしてくれてんのは知ってるからな。お前ら猟犬の牙ハウンドファングの連中のおかげでこの街は今も平和にやっていけるんだ。サービスくらいどうってことねぇさ!」

「だったらよぉドーガンの旦那、依頼こなさなくても安くしてくれよ」

「そりゃできねぇ相談だぜダン、ギブアンドテイクさ。それにタダってのは信用ならないもんだぜ」

あぁそういえばと、アリスはクラインに言い忘れていたことを思い出した。

「クラインさん、先ほどの蛇の尻尾スネークテイルもそうなんですが、私たち猟犬の牙ハウンドファングと協力店の間ではある取り決めがあります。それは協力店からの依頼は優先的に処理するという取り決めです」

「あぁ、やっぱりそういうことなんですね」

クラインはある程度は想像がついていたのか、やっぱりなと頷いている。

「知っていたんですか?」

「いえ、最初にダンにあったときにダンのしていた依頼は、蜂蜜の運送でした。そんな依頼なら他のギルドの手に余る内容じゃないですからね。提携という言葉を聞いてなんとなく予想はしていました」

さすが察しがいいなと、ダンはニッと笑う。

「その通りさクライン。ギルドの手に余る依頼なんてそうポンポンくるもんじゃぁねぇ。依頼一つの報酬は高いが、頻度が少ないんじゃ稼ぎにならねぇからな。この取り決めは俺らにとっても悪い話じゃないんだ」

だがジャガーノートからの依頼は頻度が高すぎると、一言付け加える。

「まぁそういうなよ!それにちょうど依頼しようと思っていたことがあるんだ。お前らんとこに出向く必要がなくなってよかったぜ!」

豪快に笑うドーガン。マジかよ…と露骨に嫌そうな顔をするダン

・・・・・・・・
・・・・・
・・・


またくるぜと挨拶をすませ、3人は店を後にする。

「どうでしたか。何かいいものはありました?」

「えぇ、継承する魂マスターソウルでも引き出せない武器があそこにはあります。アスクランにきたのは正解だった」

それは良かったです、とアリスはニコッと笑う。

「しばらくはあそこで武器や防具を調達するといい。いずれは自分の愛用できる武器が見つかるといいな」

「愛用…ですか。難しいですね。選ぶ幅が広いのも考えものです。愛用といえば、ダンの愛用している武器はあのときの銃ですか?」

「あー…いや、違う。あれは消耗品みたいなもんさ」

何やら言葉に詰まるダン。

「クラインさん、後からマスターからも話があるかと思うのですが…」

アリスは真剣な顔でクラインに話す。

「私たち猟犬の牙ハウンドファングの冒険者は、自分の最も愛用する専属武器を使用することをんです」
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