重なる世界の物語

えんとま

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ギルド"猟犬の牙"

はじめての入団試験

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「入団試験?必要ないだろマスター。コウラベアを木の棒で倒すような奴なんだぜ?信じてないのか?」

やや不服そうな顔のダンに対し、変わらず穏やかな顔でギルドマスター、シリエが答える。

「そういう問題ではないわ。ギルドマスターの私がこの目でその瞬間を見てないんだもの。ギルド加入の許可をしようがないじゃない」

ぶーたれているダンを他所に、テキパキと話を進めるシリエ。

「試験は模擬戦闘で十分ね。依頼をこなしてもらったりすることもあるけど、ダンもああいっていることだし、何より継承する魂の宿主マスターソウルホルダーですものね」

「でしたら、私がお相手しましょう」

アリスが手を挙げ前に出る。

「ダンさんもキースさんもギルドの庭で模擬戦をするには向いていませんし、何より今いるメンバーで近接戦闘を得意とするのは私だけですからね」

そういえば、とクラインは周りに問いかける。

「ダンはガンナーだと聞いているのですが、キースとアリスはなんの職なんですか?」

「あぁ、そういえばまだ話していなかったね。僕はキャスター、魔術師だよ」

「私は剣士です。とりわけ近接戦闘の得意な双剣使いです」

ふんふんと頷くクライン。

「僕は…職としてはどれに当たるでしょう」

…。

「…そうねぇ」

「基本的に何でも使えんだろ?」

「…オールラウンダー…ですかね…?」

「何か贔屓にしている武器はあるのかい?」

「いえ、ありません。このブロードソードもたまたま故郷にあったもので、愛用の武器といったものはありませんでした」

「他の継承する魂マスターソウルは魔術師や拳闘士って具合に職がはっきりしているからね。なかなか難しいなぁ」

みんなが頭を抱える中、ダンはニッと笑った。

「クライン、お前いずれはこの世全ての武器の達人になるんだよな?」

「え?えぇ、いずれ、ですけど。そもそも僕の代で達成できるか…」

「構わねえさ。いずれそうなれる職ってことだろ?全ての武器の達人、もはや神サマみてぇなもんだよな。だったらよ、"武神"なんてどうよ?」

武神!?神様だなんて恐れ多い!
そう思うクラインとは反対に、周りは納得してしまっている。

「いいじゃない、武神だなんてかっこいいわ」

「あながち間違いでもないよね」

猟犬の牙ハウンドファングの武神…いい響きです!」

あぁ、どうやら僕は"武神"になってしまったらしい。


・・・・・・・・
・・・・・
・・・


「それじゃ、ルールを説明するわね」

ギルドの裏口から庭に出た僕は、手に木刀を握りしめている。
相対するのはアリス。双剣使いだけど今回は土俵を同じにしてくれるらしい。

「時間無制限の一本勝負としましょう。一本の基準はそうね…一撃を入れたらってことにしましょう」

「木刀でも十分痛いから、2人とも気をつけてね!」

物騒なことをよくまぁにこやかに話せるものだ。
クラインが前を向くと、アリスは真剣な面持ちで木刀を構えた。

僕も切り替えないと。

正面の少女に向けて木刀を構える。

「準備はいいみたいね」

シリエはお互いを交互に見るとすっと手を挙げた。

「お互い恨みっこなしよ」

緊張感が辺りに漂う。


スッとシリエは手を振り下ろした。

「始め!!」
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