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ギルド"猟犬の牙"
その名は猟犬の牙
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立ち並ぶ建物、食べ物・衣類・装備などさまざまなものが陳列された商店、そして多種多様な種族が通りを行き交う大都市アスクラン。想像を超える活気と街並みに、クラインは興奮を隠せなかった。
あとでいくらでも案内してやるからとクラインを制しつつ、まずは依頼主に荷物を受け渡し2人はギルド「猟犬の牙」へと向かった。
「着いたぞ。ここが猟犬の牙だ」
そこは木造三階建ての、それなりに大きな建物だった。ドアの上には看板がぶら下がっており、確かに猟犬の牙の文字が書かれている。少し古さを感じるが、立派な建物だ。
緊張するクラインを他所に、ダンは扉を開け中に入っていく。リンリンとベルが鳴る。
「よぉ、帰ったぜ」
後ろについてクラインが入ると、中には2人の女性がいた。というか2人しかいなかった。
ギルドとはこんなに少数の組織なのか?クラインは辺りを見回す。まるで落ち着いた飲食店のような内装で、長テーブルに椅子がいくつか、カウンターのようなものもあり、奥には二階に続いているであろう階段が見えた。
「あら、お帰りなさい。そちらの方は?」
カウンターに立つその女性はこげ茶の長い髪に少し垂れ目のおっとりとした綺麗な容姿だった。見た目から察するに30歳前後だろうか。
「ダンが連れてくるということは、ダンに巻き込まれた被害者ですね?」
声の主は綺麗な銀髪の少女だった。凛とした顔立ち、姿勢も綺麗で礼儀正しい印象を受ける。
「何だよ被害者って…。違ぇよ、ウチの加入希望者だ。しかも継承する魂の宿主だ」
「え!?」
「はい?」
ほとんど同時に声を上げる2人。
「あの、本当です。あっ、僕はクライン・アスコートといいます。武器であればほとんどのものは初見でも扱うことが出来ます…信じてもらえないかもしれませんが…」
そこで2人は我に帰る。
「すっ、すいません!決して信じていないわけではなくてっ!噂にしか聞かない継承する魂の宿主が本当に実在するなんて…あ、失礼しました。私はアリス・アルベティです。アリスと呼んでください」
銀髪のアリスと名乗る少女は軽くお辞儀をした。礼儀だけでなく気遣いもできるようだ。
「私はシリエ・ウィルチャード、よろしくねクライン君。噂によるとありとあらゆるものを達人級で扱えるというけれど…」
「あぁ、間違いないぜ。たまたまあった棒っ切れでコウラベアを倒しちまったんだからな」
クラインが口を開く前に奥から男の声がすかさず訂正する。
「いや、間違いだよダン。どんな武器でもというと語弊がある。まぁ一般的にはそう言われているけどね」
声の方に目をやると、そこには階段を降りてくる男の姿があった。直毛でミディアムくらいの長さの黒髪、眼鏡をかけている20代後半ほどの男だ。全身黒い服を着ているせいか全く気がつかなかった。
「はじめましてクライン君。僕はキース・オーガン、よろしくね」
爽やかな笑顔で挨拶をすませると、キースは話を続ける。
「話は聞いていたよ。武器を扱えるということは、クライン君は"技"のマスターソウルだね」
「"技"のマスターソウル?」
他の誰でもないクラインが真っ先に復唱する。
「お前さん、何で知らないんだよ。この中で一番知ってるんじゃねぇのか?」
「そんなことはないさ、マスターソウルから引き出せるのは蓄積された経験とその魂にまつわるほんの少しの知識のみ。クライン君が知らなくて当然だよ」
…。
一同、うまく飲み込めず沈黙してしまう。
「どうやら1から解説が必要みたいだね」
そう言うとキースは近くの椅子に腰を下ろしみんなを見上げる。
「さぁ、みんなも座りなよ。説明しよう」
あとでいくらでも案内してやるからとクラインを制しつつ、まずは依頼主に荷物を受け渡し2人はギルド「猟犬の牙」へと向かった。
「着いたぞ。ここが猟犬の牙だ」
そこは木造三階建ての、それなりに大きな建物だった。ドアの上には看板がぶら下がっており、確かに猟犬の牙の文字が書かれている。少し古さを感じるが、立派な建物だ。
緊張するクラインを他所に、ダンは扉を開け中に入っていく。リンリンとベルが鳴る。
「よぉ、帰ったぜ」
後ろについてクラインが入ると、中には2人の女性がいた。というか2人しかいなかった。
ギルドとはこんなに少数の組織なのか?クラインは辺りを見回す。まるで落ち着いた飲食店のような内装で、長テーブルに椅子がいくつか、カウンターのようなものもあり、奥には二階に続いているであろう階段が見えた。
「あら、お帰りなさい。そちらの方は?」
カウンターに立つその女性はこげ茶の長い髪に少し垂れ目のおっとりとした綺麗な容姿だった。見た目から察するに30歳前後だろうか。
「ダンが連れてくるということは、ダンに巻き込まれた被害者ですね?」
声の主は綺麗な銀髪の少女だった。凛とした顔立ち、姿勢も綺麗で礼儀正しい印象を受ける。
「何だよ被害者って…。違ぇよ、ウチの加入希望者だ。しかも継承する魂の宿主だ」
「え!?」
「はい?」
ほとんど同時に声を上げる2人。
「あの、本当です。あっ、僕はクライン・アスコートといいます。武器であればほとんどのものは初見でも扱うことが出来ます…信じてもらえないかもしれませんが…」
そこで2人は我に帰る。
「すっ、すいません!決して信じていないわけではなくてっ!噂にしか聞かない継承する魂の宿主が本当に実在するなんて…あ、失礼しました。私はアリス・アルベティです。アリスと呼んでください」
銀髪のアリスと名乗る少女は軽くお辞儀をした。礼儀だけでなく気遣いもできるようだ。
「私はシリエ・ウィルチャード、よろしくねクライン君。噂によるとありとあらゆるものを達人級で扱えるというけれど…」
「あぁ、間違いないぜ。たまたまあった棒っ切れでコウラベアを倒しちまったんだからな」
クラインが口を開く前に奥から男の声がすかさず訂正する。
「いや、間違いだよダン。どんな武器でもというと語弊がある。まぁ一般的にはそう言われているけどね」
声の方に目をやると、そこには階段を降りてくる男の姿があった。直毛でミディアムくらいの長さの黒髪、眼鏡をかけている20代後半ほどの男だ。全身黒い服を着ているせいか全く気がつかなかった。
「はじめましてクライン君。僕はキース・オーガン、よろしくね」
爽やかな笑顔で挨拶をすませると、キースは話を続ける。
「話は聞いていたよ。武器を扱えるということは、クライン君は"技"のマスターソウルだね」
「"技"のマスターソウル?」
他の誰でもないクラインが真っ先に復唱する。
「お前さん、何で知らないんだよ。この中で一番知ってるんじゃねぇのか?」
「そんなことはないさ、マスターソウルから引き出せるのは蓄積された経験とその魂にまつわるほんの少しの知識のみ。クライン君が知らなくて当然だよ」
…。
一同、うまく飲み込めず沈黙してしまう。
「どうやら1から解説が必要みたいだね」
そう言うとキースは近くの椅子に腰を下ろしみんなを見上げる。
「さぁ、みんなも座りなよ。説明しよう」
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