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全ての始まり
大都市アスクランを目指して3
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丘を越え、目の前には大草原が広がっている。真っ直ぐ通った道の上を、その場しのぎで修復された荷馬車が進んでいく。まるで何もなかったかのように穏やかだ。
「まさか…いやまさかだよ。通りかかった少年があの継承する魂の持ち主とはな。たまたま棒術使いが助けてくれる偶然なんかよりよっぽど奇跡だぜ。明日槍が降ってきておっ死んでも文句は言えねぇな!」
豪快に笑う男の横で、クラインはコウラベアの焼いた肉にがっついている。
「そういやまだ名乗っちゃいなかったな。俺はダン、ダン・シークエンスだ」
そう名乗るとダンは、クラインに手を差し出した。
「僕はクライン・アスコートです。よろしく」
クラインは差し出された手を握り握手を交わすと続けた。
「ダンさんはなぜコウラベアに襲われていたんです?見たところ鍛えられていますし、ただの運び屋には見えないのですが」
「ダンさんはやめてくれ、ダンでいい。襲われた理由だがおそらく積み荷のせいだろうな」
そう言ってダンは積み荷を指差す。
「あれはゴールドハニー、ロイヤルビーが巣に蓄える最高級の蜂蜜だ。やつらはこれが好物らしくてな」
「あぁ、それと俺が運び屋に見えないって話だな。ご明察だ、俺の本職は運び屋じゃなく冒険者さ」
「冒険者…?」
「…田舎ってのはえらい閉鎖的なとこなんだな」
「返す言葉もありませんよ。職と呼べるものは狩人くらいです。どこの田舎もそうなのかは知りませんがね」
ダンの軽口にクラインは苦笑いで応える。
「冒険者ってのは依頼をこなして金を稼ぐ職業の総称さ。ギルドと呼ばれる組織に属していて、ギルドが仲介して依頼を取ってくるんで冒険者はそれをこなし、依頼料を受け取るって仕組みさ。もちろん俺もギルドに所属している」
なるほど、と頷くクラインを横目にダンは続ける。
「冒険者と一括りに言ってもいろんなものを得意とするやつがいてな。また細かく職がわかれているんだ。剣を扱う剣士や弓を扱う弓兵、盾と剣をバランスよく扱う騎士とかな。俺は銃を得意とする銃使いだ」
ふと思い出したようにクラインは口を開いた。
「そういえばダンはなぜ武器を持っていなかったのですか?ガンナーなら銃を持っているんでしょう?」
それを聞いたダンは懐から銃を取り出すと空に向けて引き金を引く。しかし銃弾は出てこない。
「弾切れだよ、情けない話さ。補充すんのを忘れたのに気付いた時には拠点を離れちまってたからな。まさかあんなだだっ広い丘で魔物に出くわすなんて思いもしなかったから引き返さなかったんだが…痛い勉強料だよ全く」
「あぁ、状況は掴めてきましたよ。ダンは高級な嗜好品を確実に運送するための依頼を受けた冒険者で、使える武器も持たずに長距離を運びきろうとした結果、魔物に襲われ危うく依頼を失敗しかけた愚か者といったところでしょうか」
「なんだよ、言葉に棘があるな。田舎者呼ばわりされて拗ねてんのか?悪かったよ」
「…否定はしないんですね」
「事実だしな。あまり他で言いふらすなよ?依頼が来なくなっちまう」
そこまで話したところで、今度はダンの方から問いかける。
「そういやお前さんは何でアスクランに向かってたんだ?」
頬張った肉を飲み込み、ダンの問いに答えるクライン。
「それはですね…より多種多様な武器の鍛錬を積むために、アスクランを目指していたんです。あそこはあらゆるものが流通していると聞いていますから」
「鍛錬?マスターソウルはあらゆる武器の扱い方を魂から引き出して使えるんだろ?今更鍛錬なんて必要なのか?」
「まぁ半分くらいはその認識で正しいのですが、そう都合のいい代物でもないんです」
ダンは納得がいっていないようだがそのまま話を続ける。
「アスクランに着いてからは何の計画もありませんでしたが…そうですね、話を聞いてると冒険者になるのが一番いい方法かもしれませんね。お金を稼げる上に依頼の中でいろんな武器に携われるかもしれない…」
そこまで聞いて、ダンはニッと笑った。
「それならよ、ウチに来ないか?」
「ウチ?ダンの所属するギルドのことですか?」
「あぁそうさ。アスクランにある俺のギルドだ。少し特殊なギルドだが、マスターソウル持ちとなりゃ誰も文句を言う奴はいないだろう」
こちらに向き直り、ダンは再び手を差し出した。
「招待するぜ、クライン。ギルド「猟犬の牙」によ!」
「まさか…いやまさかだよ。通りかかった少年があの継承する魂の持ち主とはな。たまたま棒術使いが助けてくれる偶然なんかよりよっぽど奇跡だぜ。明日槍が降ってきておっ死んでも文句は言えねぇな!」
豪快に笑う男の横で、クラインはコウラベアの焼いた肉にがっついている。
「そういやまだ名乗っちゃいなかったな。俺はダン、ダン・シークエンスだ」
そう名乗るとダンは、クラインに手を差し出した。
「僕はクライン・アスコートです。よろしく」
クラインは差し出された手を握り握手を交わすと続けた。
「ダンさんはなぜコウラベアに襲われていたんです?見たところ鍛えられていますし、ただの運び屋には見えないのですが」
「ダンさんはやめてくれ、ダンでいい。襲われた理由だがおそらく積み荷のせいだろうな」
そう言ってダンは積み荷を指差す。
「あれはゴールドハニー、ロイヤルビーが巣に蓄える最高級の蜂蜜だ。やつらはこれが好物らしくてな」
「あぁ、それと俺が運び屋に見えないって話だな。ご明察だ、俺の本職は運び屋じゃなく冒険者さ」
「冒険者…?」
「…田舎ってのはえらい閉鎖的なとこなんだな」
「返す言葉もありませんよ。職と呼べるものは狩人くらいです。どこの田舎もそうなのかは知りませんがね」
ダンの軽口にクラインは苦笑いで応える。
「冒険者ってのは依頼をこなして金を稼ぐ職業の総称さ。ギルドと呼ばれる組織に属していて、ギルドが仲介して依頼を取ってくるんで冒険者はそれをこなし、依頼料を受け取るって仕組みさ。もちろん俺もギルドに所属している」
なるほど、と頷くクラインを横目にダンは続ける。
「冒険者と一括りに言ってもいろんなものを得意とするやつがいてな。また細かく職がわかれているんだ。剣を扱う剣士や弓を扱う弓兵、盾と剣をバランスよく扱う騎士とかな。俺は銃を得意とする銃使いだ」
ふと思い出したようにクラインは口を開いた。
「そういえばダンはなぜ武器を持っていなかったのですか?ガンナーなら銃を持っているんでしょう?」
それを聞いたダンは懐から銃を取り出すと空に向けて引き金を引く。しかし銃弾は出てこない。
「弾切れだよ、情けない話さ。補充すんのを忘れたのに気付いた時には拠点を離れちまってたからな。まさかあんなだだっ広い丘で魔物に出くわすなんて思いもしなかったから引き返さなかったんだが…痛い勉強料だよ全く」
「あぁ、状況は掴めてきましたよ。ダンは高級な嗜好品を確実に運送するための依頼を受けた冒険者で、使える武器も持たずに長距離を運びきろうとした結果、魔物に襲われ危うく依頼を失敗しかけた愚か者といったところでしょうか」
「なんだよ、言葉に棘があるな。田舎者呼ばわりされて拗ねてんのか?悪かったよ」
「…否定はしないんですね」
「事実だしな。あまり他で言いふらすなよ?依頼が来なくなっちまう」
そこまで話したところで、今度はダンの方から問いかける。
「そういやお前さんは何でアスクランに向かってたんだ?」
頬張った肉を飲み込み、ダンの問いに答えるクライン。
「それはですね…より多種多様な武器の鍛錬を積むために、アスクランを目指していたんです。あそこはあらゆるものが流通していると聞いていますから」
「鍛錬?マスターソウルはあらゆる武器の扱い方を魂から引き出して使えるんだろ?今更鍛錬なんて必要なのか?」
「まぁ半分くらいはその認識で正しいのですが、そう都合のいい代物でもないんです」
ダンは納得がいっていないようだがそのまま話を続ける。
「アスクランに着いてからは何の計画もありませんでしたが…そうですね、話を聞いてると冒険者になるのが一番いい方法かもしれませんね。お金を稼げる上に依頼の中でいろんな武器に携われるかもしれない…」
そこまで聞いて、ダンはニッと笑った。
「それならよ、ウチに来ないか?」
「ウチ?ダンの所属するギルドのことですか?」
「あぁそうさ。アスクランにある俺のギルドだ。少し特殊なギルドだが、マスターソウル持ちとなりゃ誰も文句を言う奴はいないだろう」
こちらに向き直り、ダンは再び手を差し出した。
「招待するぜ、クライン。ギルド「猟犬の牙」によ!」
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