重なる世界の物語

全ての始まり

プロローグ〜少年、丘を行く〜

「お腹…減ったな…」
辺りには誰もいない。ただひたすら草原広がる丘を登る少年は、誰に言うわけでもなく呟いた。

黒髪に短髪、まだ幼さの残る顔立ちのその少年は、心の中で悔いていた。
　いくらなんでもアスクランへ徒歩で向かうのは無謀だったかぁ。鍛錬のためとはいえ、獲物のいない道をひたすら歩くのではご飯にありつけないじゃないか！

嘆いても腹は膨れないと、再び足を進めたその時だった。
風になびく草の音の中、突如何かの破壊音が響き渡った。

何だ？木材でも割ったような音だな。あの丘の向こうからか。
ただ同じ景色がひたすら続く道を歩くことにいい加減飽き飽きしていた少年は、結果吉と出ようが凶と出ようが構わなかった。とにかく単調なこの旅路に変化が欲しい！

その一心で少年は、丘の向こうへ走り出した。