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第41話:静かな雪、温かな時間
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朝の光が穏やかに差し込む中、文庫愛好会のメンバーたちは談話室に集まった。窓の外では、昨日の遅くから降り出した雪が今も静かに舞い続け、庭を白く染めている。木々の枝には真っ白な雪が積もり、その重みでしなっている様子が見える。薄い雪雲に覆われた空から降り注ぐ雪は、時折風に吹かれて舞い上がり、幻想的な風景を作り出していた。
昨日の庭園での出来事が心に鮮やかに残る彼女らは、それをもとに今書いている小説のアイデアを膨らませるため、一つのテーブルを囲んでいた。
談話室には、湯気の立つコーヒーの香りが漂い、窓から差し込む柔らかな光が雪景色を一層引き立てている。結衣たちはその静かな雰囲気に包まれながら、それぞれのノートやパソコンを開いていた。生田先生も一緒に座り、昨日の観光がどのように形を成すか、期待に胸を膨らませている様子だった。
「さて、みんな。昨日の経験を元に、今書いている小説にどんな新しい要素を加えるか考えようか」と生田先生が話すと、メンバー全員が順番に口を開き始めた。
結衣は真っ先に手を挙げ、「昨日の庭園での観光がすごく楽しかったけど、先生の作り話にまんまと引っかかっちゃって…ちょっと悔しいです。それを活かして、読者が違和感を感じながらも気づかないようなミステリーを入れたいです」と目を輝かせながら話した。
生田先生は満足そうに笑いながら、「引っかかってくれて嬉しいよ。いたずらは大成功だったし、それがみんなの創作のヒントになるなら、もっと嬉しいね」と言うと、河西と平山が思わずクスクスと笑った。
河西が手を挙げて、「先生のことはさておき、結衣のアイデア、いいね。私も庭園での出来事を元に、小説の中でキャラクター同士の信頼関係を試すようなシーンを入れたいと思う」と賛同の声を上げた。
その言葉に生田先生は苦笑いしながら肩をすくめた。「さておかれるのは少し寂しい気もするけど…まあ、みんなのアイデアが広がるならそれで満足だよ」と軽く冗談を交えつつ言うと、談話室には小さな笑いが広がった。
続いて平山が、「それなら、庭園の風景を描写することで、物語の背景をより豊かに表現できるかもしれないね。私も庭園の静けさを活かしたシーンを考えてみたい」と述べた。
島倉も、「僕は、昨日の観光の中で感じたドキドキ感を小説に反映させたいです。読者にワクワク感を伝えられるようにしたいと思います」と興奮気味に話した。
それぞれが感じたインスピレーションやアイデアを共有し合う中、談話室は活気に満ち溢れていた。生田先生は静かに頷き、「みんなのアイデアを聞いていると、それぞれが違う視点で昨日の出来事を捉えていることがわかるね。これを今書いている小説にどのように組み込むか、具体的に考えてみよう」と提案した。
結衣たちは、昨日の観光での出来事をもとに、今書いている小説に新しい要素を組み込むために、それぞれのノートやパソコンに向かって黙々と作業を始めた。
談話室は静寂に包まれ、ただカタカタとキーボードを叩く音や、紙にペンが走る音だけが響いていた。みんなの表情には集中の色が見え、誰もが自分の思考の中に没頭していた。
河西はノートにアイデアを書き込みながら、時折眉をひそめて考え込む姿が見えた。彼女はペンを回しながら、「この部分、どう展開しようかな…」と小さく呟いた。結衣が「何か難しいところですか?」と声をかけると、河西は「うん、ちょっとね。でもなんとかなるよ」と微笑んだ。
平山は手元の資料を見直しながら、静かに頷いて新しいアイデアを組み立てていた。彼女は時折、目の前の景色を思い浮かべるように遠くを見つめ、「この風景をどうやって言葉で伝えよう…」と独り言を言っていた。結衣が「描写って本当に難しいですよね」と同意すると、平山は「そうなの。でも、頑張るよ」と決意を新たにした。
黙々とペンを走らせる島倉も時折手を止めて考え込み、「ここで何かサプライズを入れたら面白いかも」とつぶやき、すぐにそのアイデアを書き込んでいった。
作業をしていると、河西のスマホが軽やかに通知音を鳴らした。河西は一瞬手を止めて画面を確認すると、文芸部の遠藤からのメッセージが表示されていた。
「文庫愛好会って何してるの?遊んでるだけなら、共同制作ちゃんとやってくれない?本気でやる気があるなら協力するのが筋でしょ」と、辛辣な言葉が並んでいた。
「うわぁ…また来たよ」と河西は呆れたような声を漏らしながら、短く「用事があるから無理」とだけ返信した。
隣で作業していた平山が「遠藤さん?」と小声で尋ねると、河西は苦笑いしながらスマホを机に戻した。「そう、また文句メール。でも、合宿のことは絶対に秘密。こんな楽しいところにいるなんて教えたら、嫉妬されるに決まってるからね」
「それ、正解ですよ!」と結衣が笑顔で、「ここで得たものを活かして創作するんですから、遊びじゃなくてちゃんとした活動だし。それに何より、すっごく楽しいんですもん!」と明るく答えた。
「ほんとそれ」と河西も微笑み、「むしろ、ここに来たおかげで余裕でいられるよね。昨日の観光も最高だったし、みんなといると気持ちが楽になる」と話しながら、気持ちを切り替えるように背伸びをした。
そのやりとりを聞いていた島倉が、「まあ、ここにいるだけで気分がリフレッシュされますからね。それに、こんな風にのんびり創作できる時間って貴重だし!」と笑顔で付け加えると、全員が楽しげに笑い合った。
文庫愛好会の和やかな雰囲気に包まれる中、生田先生が笑顔で口を開いた。「いいね、その調子で合宿の楽しさをそのまま小説に込めてみるといいよ。きっと、良い作品になるよ」
メンバーたちはその言葉に頷き、自然と笑顔で再び作業に向き合っていった。
黙々と作業が続いていた談話室に、ふと生田先生が声を上げた。
「みんな、そろそろ休憩を取ろうか。ずっと座りっぱなしだと疲れるだろう?外に出てみないか?」
その提案に、メンバーたちは顔を見合わせ、笑顔で頷いた。「賛成!」と結衣が元気よく手を挙げ、島倉も「ちょっと体を動かすのもいいですね」と立ち上がった。
全員が厚手のコートやマフラーを身に着け、外に出ると、庭には昨夜降り積もった雪が一面に広がり、空からは今も細かな雪が静かに舞い降りていた。冷たい空気が頬に心地よく触れ、吐く息が白く広がるたびに、彼女らは互いに笑い合った。
「わぁ、まだ雪が降ってる!ふわふわしてて綺麗ですね!」と結衣が興奮気味に声を上げると、河西も「うん、でも冷えるね…さすがに」と少し身震いしながら答えた。
その時、島倉がこっそり手のひらに雪を集め、ぎゅっと固めた。そして不意に、「それっ!」と声を上げながら結衣に向かって雪玉を投げた。
「きゃっ!」結衣は驚いて後ろに下がりながらも、すぐに手を伸ばして雪を掴み、「島倉君、やったね!」と笑いながら反撃。軽く投げた雪玉は島倉の肩に命中した。
「おいおい、そう来るか!」島倉は楽しそうに笑いながら新たな雪玉を作り始める。その様子に感化された平山も、「これはもう参戦するしかないね!」と加わり、雪玉を投げ始めた。
気が付けば全員が雪玉を作り、即席の雪合戦が始まった。降り続ける雪が頭や肩に積もる中、河西が「誰に当てるか迷うな~」とおどけながら言うと、陽斗が「それなら、先生を狙おう!」と冗談交じりに提案した。
「おっと、先生が的なのかい?」生田先生は笑いながらも身軽に雪を避けた。「君たち、先生に挑むなら、もっと正確に投げてみなさい!」と挑発しながら雪玉を作る姿に、全員が笑い声を上げた。
白い雪玉が空を舞い、頭上では雪が静かに降り続ける中、誰もが童心に返ったように楽しんだ。結衣は頬を赤く染めながら、雪を掴む手が冷たくなっていくのも忘れ、「もっと頑張るぞ!」と夢中になって雪玉を作り続けた。
しばらくして、全員が息を切らしながら雪の中に腰を下ろした。降り続ける雪が静かに肩に積もるのを感じながら、結衣が「こんなに遊んだの、久しぶりかも」と笑った。
「だね。いい気分転換になった!」と島倉が言うと、平山も「確かに、こういう休憩も大事だね」と頷いた。
「さて、そろそろ中に戻って、作業の続きをしようか」と生田先生が促すと、みんなは名残惜しそうに立ち上がり、再び談話室へと足を向けた。
その後も黙々と作業が続いたが、やがて一段落ついたところで、生田先生がみんなに声をかけた。「みんな、お疲れ様。どうだった?今日の作業」と、優しく微笑んだ。
河西はノートを閉じながら、「結構進みました。先生の話に騙されるなんて、最初は悔しかったけど、そのおかげで面白いアイデアが浮かんだから感謝してます」と笑った。
平山も「うん、私も同じ。観光の景色がとても美しかったから、それを思い出しながら描写を試みたけど、結構うまくいったかも」と頷いた。
島倉はその言葉に続けて、「あと、雪合戦が最高の気分転換になりましたね。子どもに戻ったみたいに楽しんで、頭がスッキリしました」と笑みを浮かべた。
河西も「そうそう!普段はこんなに雪で遊ぶことなんてないから、意外に良い刺激だったよね」と頷いた。
結衣も頬を赤らめながら、「みんなとあんなに遊ぶなんて初めてだったし、笑いすぎてお腹が痛くなるくらい楽しかったです」と嬉しそうに話した。
生田先生はその様子に満足げに微笑みながら、「そうだね。たまにはああやって体を動かしてリフレッシュするのも大事だ。みんなの笑顔が見られて、先生としても嬉しかったよ」と感慨深げに話した。
そして先生は静かに頷きながら、「みんな、それぞれの視点で面白いアイデアを出していて、すごく刺激を受けるよ。この合宿でみんながさらに成長しているのを感じられて嬉しいな」と語った。
河西が「明日の午前には帰るけど、もう少し遊びたいな」とぽつりと言うと、平山がすかさず顔を上げて、「いやいや、そもそも小説の創作のために来てるんだからね?」と真顔で言い返した。
結衣も腕を組んで、「そうですよ。もう少し小説書きたいなにしてくださいよ」と軽く指摘する。
島倉は肩をすくめて、「ほんとだよ。合宿って遊びじゃなくて、創作活動の名目だってわかってます?」と真剣な調子で応じた。
三人の言葉に河西は両手を挙げて、「はいはい、わかってますって!ちゃんと小説書くから大丈夫。でもさ…」と含みを持たせながら、いたずらっぽく笑った。「帰る前に、もう一回みんなで雪遊びしない?」
その言葉に結衣が目を丸くしながら、「結局遊ぶ気満々じゃないですか!」と声を上げると、全員が吹き出し、一気に談話室の空気が和んだ。
生田先生が「さて、それじゃあ今晩は美味しい食事を楽しんで、温泉でゆっくりしようか。明日に備えてリラックスしよう」と提案すると、みんなも賛同の声を上げた。
こうして、談話室には笑い声が響き、最後の夜を前にした穏やかな時間が流れていった。結衣は、ノートやパソコンが閉じられた机の上を眺めながら、それぞれの工夫を凝らした創作の痕跡に目を留めた。自分のノートにも、ぎっしりと書き込まれた文字が並び、なんとなく胸が温かくなる。みんなと一緒に過ごしたこの数日間が形になっているようで、嬉しさと少しの誇らしさを感じた。
窓の外では降り続ける雪が庭を白く覆い尽くし、街灯の光が雪の結晶をきらきらと照らしていた。その幻想的な景色に目をやりながら、結衣はふと、この特別な時間がもうすぐ終わってしまうことを思い、少しだけ名残惜しい気持ちになった。特別で楽しい時間を過ごす機会はそんなに頻繁にはない気がして、胸の中に小さな寂しさが広がった。
深呼吸をして椅子にもたれると、心地よい疲労感が体を包み込むのを感じた。創作に没頭した時間、みんなとの笑い合い、雪合戦の楽しさ。それらがすべて混ざり合い、何とも言えない充実感が胸に広がる。ただ、その一方で、合宿が終わりに近づいていることへの寂しさも、静かに忍び寄っていた。
その時、どこからか立ち昇るコーヒーの香りが結衣の鼻をくすぐった。視線を向けると、机の端に置かれた湯気の立つカップが目に入る。ゆっくりと手に取り、口元に運ぶと、ほんのりとした温かさが体の中に広がり、心の中の小さな寂しさを溶かしてくれるようだった。この時間をしっかりと味わおう、と結衣は心の中で静かに呟いた。
談話室でのみんなの姿に目を移すと、それぞれが椅子にもたれたり、ぼんやりと窓の外を眺めたりしていた。焚かれた暖房のぬくもりと、外から感じる雪の冷たさが絶妙に混ざり合い、どこか夢のような感覚を覚える。その中で、結衣は最後の夜が特別なものとして記憶に残ることを確信していた。
この合宿で得たものが、それぞれの新たな物語の始まりに繋がっていく――そう感じながら、結衣は再びカップを手に取り、小さく微笑んだ。
昨日の庭園での出来事が心に鮮やかに残る彼女らは、それをもとに今書いている小説のアイデアを膨らませるため、一つのテーブルを囲んでいた。
談話室には、湯気の立つコーヒーの香りが漂い、窓から差し込む柔らかな光が雪景色を一層引き立てている。結衣たちはその静かな雰囲気に包まれながら、それぞれのノートやパソコンを開いていた。生田先生も一緒に座り、昨日の観光がどのように形を成すか、期待に胸を膨らませている様子だった。
「さて、みんな。昨日の経験を元に、今書いている小説にどんな新しい要素を加えるか考えようか」と生田先生が話すと、メンバー全員が順番に口を開き始めた。
結衣は真っ先に手を挙げ、「昨日の庭園での観光がすごく楽しかったけど、先生の作り話にまんまと引っかかっちゃって…ちょっと悔しいです。それを活かして、読者が違和感を感じながらも気づかないようなミステリーを入れたいです」と目を輝かせながら話した。
生田先生は満足そうに笑いながら、「引っかかってくれて嬉しいよ。いたずらは大成功だったし、それがみんなの創作のヒントになるなら、もっと嬉しいね」と言うと、河西と平山が思わずクスクスと笑った。
河西が手を挙げて、「先生のことはさておき、結衣のアイデア、いいね。私も庭園での出来事を元に、小説の中でキャラクター同士の信頼関係を試すようなシーンを入れたいと思う」と賛同の声を上げた。
その言葉に生田先生は苦笑いしながら肩をすくめた。「さておかれるのは少し寂しい気もするけど…まあ、みんなのアイデアが広がるならそれで満足だよ」と軽く冗談を交えつつ言うと、談話室には小さな笑いが広がった。
続いて平山が、「それなら、庭園の風景を描写することで、物語の背景をより豊かに表現できるかもしれないね。私も庭園の静けさを活かしたシーンを考えてみたい」と述べた。
島倉も、「僕は、昨日の観光の中で感じたドキドキ感を小説に反映させたいです。読者にワクワク感を伝えられるようにしたいと思います」と興奮気味に話した。
それぞれが感じたインスピレーションやアイデアを共有し合う中、談話室は活気に満ち溢れていた。生田先生は静かに頷き、「みんなのアイデアを聞いていると、それぞれが違う視点で昨日の出来事を捉えていることがわかるね。これを今書いている小説にどのように組み込むか、具体的に考えてみよう」と提案した。
結衣たちは、昨日の観光での出来事をもとに、今書いている小説に新しい要素を組み込むために、それぞれのノートやパソコンに向かって黙々と作業を始めた。
談話室は静寂に包まれ、ただカタカタとキーボードを叩く音や、紙にペンが走る音だけが響いていた。みんなの表情には集中の色が見え、誰もが自分の思考の中に没頭していた。
河西はノートにアイデアを書き込みながら、時折眉をひそめて考え込む姿が見えた。彼女はペンを回しながら、「この部分、どう展開しようかな…」と小さく呟いた。結衣が「何か難しいところですか?」と声をかけると、河西は「うん、ちょっとね。でもなんとかなるよ」と微笑んだ。
平山は手元の資料を見直しながら、静かに頷いて新しいアイデアを組み立てていた。彼女は時折、目の前の景色を思い浮かべるように遠くを見つめ、「この風景をどうやって言葉で伝えよう…」と独り言を言っていた。結衣が「描写って本当に難しいですよね」と同意すると、平山は「そうなの。でも、頑張るよ」と決意を新たにした。
黙々とペンを走らせる島倉も時折手を止めて考え込み、「ここで何かサプライズを入れたら面白いかも」とつぶやき、すぐにそのアイデアを書き込んでいった。
作業をしていると、河西のスマホが軽やかに通知音を鳴らした。河西は一瞬手を止めて画面を確認すると、文芸部の遠藤からのメッセージが表示されていた。
「文庫愛好会って何してるの?遊んでるだけなら、共同制作ちゃんとやってくれない?本気でやる気があるなら協力するのが筋でしょ」と、辛辣な言葉が並んでいた。
「うわぁ…また来たよ」と河西は呆れたような声を漏らしながら、短く「用事があるから無理」とだけ返信した。
隣で作業していた平山が「遠藤さん?」と小声で尋ねると、河西は苦笑いしながらスマホを机に戻した。「そう、また文句メール。でも、合宿のことは絶対に秘密。こんな楽しいところにいるなんて教えたら、嫉妬されるに決まってるからね」
「それ、正解ですよ!」と結衣が笑顔で、「ここで得たものを活かして創作するんですから、遊びじゃなくてちゃんとした活動だし。それに何より、すっごく楽しいんですもん!」と明るく答えた。
「ほんとそれ」と河西も微笑み、「むしろ、ここに来たおかげで余裕でいられるよね。昨日の観光も最高だったし、みんなといると気持ちが楽になる」と話しながら、気持ちを切り替えるように背伸びをした。
そのやりとりを聞いていた島倉が、「まあ、ここにいるだけで気分がリフレッシュされますからね。それに、こんな風にのんびり創作できる時間って貴重だし!」と笑顔で付け加えると、全員が楽しげに笑い合った。
文庫愛好会の和やかな雰囲気に包まれる中、生田先生が笑顔で口を開いた。「いいね、その調子で合宿の楽しさをそのまま小説に込めてみるといいよ。きっと、良い作品になるよ」
メンバーたちはその言葉に頷き、自然と笑顔で再び作業に向き合っていった。
黙々と作業が続いていた談話室に、ふと生田先生が声を上げた。
「みんな、そろそろ休憩を取ろうか。ずっと座りっぱなしだと疲れるだろう?外に出てみないか?」
その提案に、メンバーたちは顔を見合わせ、笑顔で頷いた。「賛成!」と結衣が元気よく手を挙げ、島倉も「ちょっと体を動かすのもいいですね」と立ち上がった。
全員が厚手のコートやマフラーを身に着け、外に出ると、庭には昨夜降り積もった雪が一面に広がり、空からは今も細かな雪が静かに舞い降りていた。冷たい空気が頬に心地よく触れ、吐く息が白く広がるたびに、彼女らは互いに笑い合った。
「わぁ、まだ雪が降ってる!ふわふわしてて綺麗ですね!」と結衣が興奮気味に声を上げると、河西も「うん、でも冷えるね…さすがに」と少し身震いしながら答えた。
その時、島倉がこっそり手のひらに雪を集め、ぎゅっと固めた。そして不意に、「それっ!」と声を上げながら結衣に向かって雪玉を投げた。
「きゃっ!」結衣は驚いて後ろに下がりながらも、すぐに手を伸ばして雪を掴み、「島倉君、やったね!」と笑いながら反撃。軽く投げた雪玉は島倉の肩に命中した。
「おいおい、そう来るか!」島倉は楽しそうに笑いながら新たな雪玉を作り始める。その様子に感化された平山も、「これはもう参戦するしかないね!」と加わり、雪玉を投げ始めた。
気が付けば全員が雪玉を作り、即席の雪合戦が始まった。降り続ける雪が頭や肩に積もる中、河西が「誰に当てるか迷うな~」とおどけながら言うと、陽斗が「それなら、先生を狙おう!」と冗談交じりに提案した。
「おっと、先生が的なのかい?」生田先生は笑いながらも身軽に雪を避けた。「君たち、先生に挑むなら、もっと正確に投げてみなさい!」と挑発しながら雪玉を作る姿に、全員が笑い声を上げた。
白い雪玉が空を舞い、頭上では雪が静かに降り続ける中、誰もが童心に返ったように楽しんだ。結衣は頬を赤く染めながら、雪を掴む手が冷たくなっていくのも忘れ、「もっと頑張るぞ!」と夢中になって雪玉を作り続けた。
しばらくして、全員が息を切らしながら雪の中に腰を下ろした。降り続ける雪が静かに肩に積もるのを感じながら、結衣が「こんなに遊んだの、久しぶりかも」と笑った。
「だね。いい気分転換になった!」と島倉が言うと、平山も「確かに、こういう休憩も大事だね」と頷いた。
「さて、そろそろ中に戻って、作業の続きをしようか」と生田先生が促すと、みんなは名残惜しそうに立ち上がり、再び談話室へと足を向けた。
その後も黙々と作業が続いたが、やがて一段落ついたところで、生田先生がみんなに声をかけた。「みんな、お疲れ様。どうだった?今日の作業」と、優しく微笑んだ。
河西はノートを閉じながら、「結構進みました。先生の話に騙されるなんて、最初は悔しかったけど、そのおかげで面白いアイデアが浮かんだから感謝してます」と笑った。
平山も「うん、私も同じ。観光の景色がとても美しかったから、それを思い出しながら描写を試みたけど、結構うまくいったかも」と頷いた。
島倉はその言葉に続けて、「あと、雪合戦が最高の気分転換になりましたね。子どもに戻ったみたいに楽しんで、頭がスッキリしました」と笑みを浮かべた。
河西も「そうそう!普段はこんなに雪で遊ぶことなんてないから、意外に良い刺激だったよね」と頷いた。
結衣も頬を赤らめながら、「みんなとあんなに遊ぶなんて初めてだったし、笑いすぎてお腹が痛くなるくらい楽しかったです」と嬉しそうに話した。
生田先生はその様子に満足げに微笑みながら、「そうだね。たまにはああやって体を動かしてリフレッシュするのも大事だ。みんなの笑顔が見られて、先生としても嬉しかったよ」と感慨深げに話した。
そして先生は静かに頷きながら、「みんな、それぞれの視点で面白いアイデアを出していて、すごく刺激を受けるよ。この合宿でみんながさらに成長しているのを感じられて嬉しいな」と語った。
河西が「明日の午前には帰るけど、もう少し遊びたいな」とぽつりと言うと、平山がすかさず顔を上げて、「いやいや、そもそも小説の創作のために来てるんだからね?」と真顔で言い返した。
結衣も腕を組んで、「そうですよ。もう少し小説書きたいなにしてくださいよ」と軽く指摘する。
島倉は肩をすくめて、「ほんとだよ。合宿って遊びじゃなくて、創作活動の名目だってわかってます?」と真剣な調子で応じた。
三人の言葉に河西は両手を挙げて、「はいはい、わかってますって!ちゃんと小説書くから大丈夫。でもさ…」と含みを持たせながら、いたずらっぽく笑った。「帰る前に、もう一回みんなで雪遊びしない?」
その言葉に結衣が目を丸くしながら、「結局遊ぶ気満々じゃないですか!」と声を上げると、全員が吹き出し、一気に談話室の空気が和んだ。
生田先生が「さて、それじゃあ今晩は美味しい食事を楽しんで、温泉でゆっくりしようか。明日に備えてリラックスしよう」と提案すると、みんなも賛同の声を上げた。
こうして、談話室には笑い声が響き、最後の夜を前にした穏やかな時間が流れていった。結衣は、ノートやパソコンが閉じられた机の上を眺めながら、それぞれの工夫を凝らした創作の痕跡に目を留めた。自分のノートにも、ぎっしりと書き込まれた文字が並び、なんとなく胸が温かくなる。みんなと一緒に過ごしたこの数日間が形になっているようで、嬉しさと少しの誇らしさを感じた。
窓の外では降り続ける雪が庭を白く覆い尽くし、街灯の光が雪の結晶をきらきらと照らしていた。その幻想的な景色に目をやりながら、結衣はふと、この特別な時間がもうすぐ終わってしまうことを思い、少しだけ名残惜しい気持ちになった。特別で楽しい時間を過ごす機会はそんなに頻繁にはない気がして、胸の中に小さな寂しさが広がった。
深呼吸をして椅子にもたれると、心地よい疲労感が体を包み込むのを感じた。創作に没頭した時間、みんなとの笑い合い、雪合戦の楽しさ。それらがすべて混ざり合い、何とも言えない充実感が胸に広がる。ただ、その一方で、合宿が終わりに近づいていることへの寂しさも、静かに忍び寄っていた。
その時、どこからか立ち昇るコーヒーの香りが結衣の鼻をくすぐった。視線を向けると、机の端に置かれた湯気の立つカップが目に入る。ゆっくりと手に取り、口元に運ぶと、ほんのりとした温かさが体の中に広がり、心の中の小さな寂しさを溶かしてくれるようだった。この時間をしっかりと味わおう、と結衣は心の中で静かに呟いた。
談話室でのみんなの姿に目を移すと、それぞれが椅子にもたれたり、ぼんやりと窓の外を眺めたりしていた。焚かれた暖房のぬくもりと、外から感じる雪の冷たさが絶妙に混ざり合い、どこか夢のような感覚を覚える。その中で、結衣は最後の夜が特別なものとして記憶に残ることを確信していた。
この合宿で得たものが、それぞれの新たな物語の始まりに繋がっていく――そう感じながら、結衣は再びカップを手に取り、小さく微笑んだ。
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