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第35話:静かに降る雪の中で
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文庫愛好会の合宿は温泉旅館で行われ、メンバーたちはゆったりとした雰囲気の中、楽しい時間を過ごしていた。しかし、その穏やかな時間に突如として陰りが差し込んだ。陽斗と島倉の間に生まれた張り詰めた空気が、次第に周囲を緊迫させていく。言い争いがエスカレートし、他のメンバーたちは不安を抱きながら、二人の間に割って入ろうと試みた。
廊下に響く怒声が静かな旅館を震わせた。「おい、何してくれてんだよ!」島倉が怒りに満ちた声で陽斗を睨みつける。胸元には水が滴り落ち、シャツの一部が濡れていた。
「ふざけるのも大概にしろよ!」島倉が詰め寄ると、陽斗はそっぽを向いたまま、投げやりな声でつぶやいた。「別に」
「別に?わざとだろ、これ!なんでこんなことするんだよ!」島倉の声がさらに荒くなる。結衣たちは廊下の端でその様子を見つめ、事態の深刻さに息を呑んでいた。
陽斗は肩をすくめるような仕草を見せながら、小さくつぶやく。「だって、お前がムカつくからだよ」
「は?僕が何したっていうんだよ!」島倉が問い詰めるように叫ぶと、陽斗の顔が少しずつ赤らんできた。目を合わせないまま、ぎこちなく答える。「……かわいいとか言って馬鹿にしただろ」
その言葉に、島倉は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに苛立ちが表に出る。「それで水をかけたのかよ?確かにちょっとからかったけど、馬鹿にするつもりなんてなかったよ!」
島倉の言葉に陽斗はますます顔を赤くし、唇を一文字に結んだまま拳を握りしめた。やがて、絞り出すような声で言い返す。「でも、そう聞こえたんだよ。お前、俺を馬鹿にしたんだ!」
「それで水をかけたってのか?やりすぎだろ!」島倉は濡れたシャツを指さして声を荒げた。
陽斗は眉をひそめ、表情を歪めながら「うるさい!」と短く言い放つと、その場を離れようとした。
その瞬間、河西がそっと陽斗の前に立ちふさがった。「陽斗君、少しだけ待って。ここで話を終わらせちゃったら、お互いが分かり合えないままになるよ。ちょっとだけでいいから、立ち止まって話をしよう?」
河西の言葉に、結衣と平山も静かに頷きながら見守る。島倉は深く息をつき、シャツを見下ろして黙り込んだ。陽斗は視線を落としながら足を止めたが、顔を伏せたまま口をつぐんだ。
その時、旅館の女将であり陽斗の母が足音を響かせながら現れた。彼女の表情は普段の穏やかさから一変し、厳しさを含んでいた。「陽斗、何をしているの?」低く冷静な声の中にも、怒りを抑えた響きが混じっていた。
陽斗は視線をそらしながらも、母親の声に小さく肩をすくめた。「別に……」
「別に、じゃないでしょ!」女将は一歩前に出て、濡れた島倉のシャツに目をやった。「陽斗、これってあなたがやったの?どうしてそんなことしたの?」
陽斗は言葉を飲み込むように唇を噛み、視線を足元に落とした。それでも強気な態度を崩さず、「うるさい」と小さく呟いた。
「うるさいですって?」女将の声には今度は鋭さが増していた。「陽斗、いい加減にしなさい。相手を傷つける行動を取るのは許されないことよ。きちんと自分のしたことを説明しなさい」
その時、生田先生が女将の隣に立ち、穏やかな口調で声をかけた。「姉さん、少し落ち着いて。陽斗のことは叱るべきだとは思うけど、今ここで感情的になってしまうと話がこじれるだけだよ」
女将は一瞬驚いた表情を見せたが、弟の言葉に我に返るように深く息を吸った。「でも、この子がやったことは……」
生田先生は優しく頷き、「わかってる。でも、まずは状況を整理して、陽斗が落ち着ける環境を作ることが大事だよ。叱るのは後でいい。今は、自分の気持ちを話せるようにしてあげよう」
女将は唇を引き結びながらも、やや落ち着きを取り戻したようだった。「わかったわ……でも、陽斗、あなたには後できちんと説明してもらいますからね」そう言うと、彼女は少し距離を取るように一歩下がった。
しかし、陽斗は依然として顔を赤くしながら母親を睨みつけ、「もういいよ!」とだけ叫び、廊下の向こうへ駆け去った。女将はその背中を見つめながら、ため息をついた。
生田先生はそっと肩に手を置き、「陽斗もきっと自分の気持ちを整理する時間が必要だと思う」と静かに言った。
結衣は少し戸惑いながら、立ち尽くす島倉の横に目を向けて話しかけた。「人の気持ちをちゃんと分かるって、本当に難しいよね。島倉君だって、そんなつもりじゃなかったんだよね」
島倉は視線を落とし、しばらく黙っていたが、軽く息を吐きながら頷いた。「うん……僕、陽斗がそんな風に思ってたなんて、全然分かってなかった。ちょっとふざけすぎたかな」
結衣はその言葉に小さく笑みを浮かべた。「気づけたならそれで十分だよ。陽斗君もきっと、島倉君のこと分かってくれるよ」
緊張していた空気は少しずつ和らぎ、場は静けさを取り戻していった。けれど、陽斗が抱えている何かがまだ解決していないことを、結衣たちは感じ取っていた。進むべき道はまだ見えてこない。その不安と戸惑いが、それぞれの表情にわずかに滲んでいた。
騒動の後、自室に戻った結衣は、畳の上に腰を下ろし、深く息を吐き出した。静かな部屋の中、窓の外には雪が静かに降り続けている。けれど、その穏やかな光景が、心に嵐を抱えた結衣を癒すには足りなかった。
陽斗と島倉の言い争いが脳裏をよぎる。陽斗の揺れる瞳、言葉にしきれなかった感情、そしてその背中が彼の抱える苦しさを物語っているようだった。それでも、結衣にはどう声をかければよかったのか分からなかった。
「もっと、何かできたんじゃないかな……」膝を抱え、そう呟く。自分が無力だったことに胸が締めつけられる思いだった。陽斗が今、何を考えているのか。彼にどう接すれば心を開いてもらえるのか。その答えはまだ見つからない。
ふと、鞄の中にしまっておいた手紙のことを思い出した。それは図書室で偶然見つけたもので、今回の合宿に何か役立つのではないかと持ってきたものだった。結衣はゆっくりと立ち上がり、鞄を開ける。そこには、丁寧に折りたたまれた手紙が入っていた。
結衣は手紙を取り出し、指先でその紙の感触を確かめた。心の中に、小さな期待が芽生える。「この中に、今の私を助けてくれる何かがあるかもしれない……」そう思いながら、そっと手紙を開き、その文字に目を落とした。
ーーー
今日は大変な一日だった。友人同士が大喧嘩をしてしまい、その場に居合わせた私はどうすればいいのか分からず、最初はただ見守ることしかできなかった。なんとかして仲裁したいと思ったものの、どう動けばいいのか判断がつかなかったの。
その時、まずは自分が落ち着く必要があると気づいた。感情的なままでは状況を悪化させるだけだと思い、深呼吸をして冷静さを取り戻すよう努めたの。そして、二人それぞれの話をしっかりと聞くことにした。最初は戸惑いがちだった彼らも、少しずつ自分の気持ちを言葉にしてくれるようになったよ。
話を聞くうちに、二人の間には単なる誤解があったことが分かったの。どちらも相手を傷つけたいわけではなく、小さなすれ違いが原因で大きな衝突につながっていたみたい。だからこそ、互いの気持ちを伝える大切さについて話すと、二人は少しずつ心を開いてくれた。そして「これからはお互いに気持ちを伝えること」「感情的になったら一呼吸おくこと」を約束してくれた。
その時感じたのは、まず自分が冷静になることと、相手の話に耳を傾けることの重要さだった。これらは簡単そうに見えて、実際にはとても難しいよね。でも、この二つを意識するだけで、どんな問題も少しずつ解決に近づけるのだと思う。
ーーー
手紙を読み終えた結衣は、胸の中にぽつんと浮かんだ言葉を噛みしめるように考えた。「冷静に話を聞くこと……それって、陽斗君の気持ちをもうちょっと分かろうとすることなのかも」
陽斗が何を思い、何に傷ついているのか。すれ違う彼の感情を、結衣はまだうまく掴めていない。でも、手紙の書き主が友人の声に耳を傾けたように、まずは陽斗と話をするきっかけを作ること。それが今、自分にできる最初の一歩だと思えた。
ふと、心に浮かんだのは旅館の女将さんの穏やかな笑顔だった。到着した時に見せてくれた優しい表情や、柔らかな声が結衣の中にしっかりと残っていた。息子を思いながら接していた彼女なら、陽斗のことをもっと知るための何かを教えてくれるかもしれない、そんな期待が胸に芽生える。
「話をしてみよう。」結衣は心の中で小さく呟くと、手紙を丁寧に折り畳みながら深呼吸をした。女将さんの元に行けば、自分だけでは見つけられない解決の糸口があるかもしれない。
結衣はゆっくりと立ち上がり、そっと部屋を出た。廊下には柔らかな日差しが差し込み、外の庭には静かに舞い降りる雪が陽光に照らされて白く輝いていた。窓から見える景色は穏やかそのもので、降り積もる雪が徐々に庭を覆っていくのがわかる。まだ午後の時間帯とはいえ、冷たい空気が旅館内にも微かに感じられる。
歩みを進めながら、結衣は女将さんに何を聞くべきか考えていた。陽斗のこと、自分にできること――明確な答えは見えないけれど、こうして一歩ずつ前に進むことで、何かが見えてくるような気がしていた。
雪が静かに降り続く中、結衣は廊下の先に見える明るい光を目指しながら、心の中でそっと決意を固めた。
廊下に響く怒声が静かな旅館を震わせた。「おい、何してくれてんだよ!」島倉が怒りに満ちた声で陽斗を睨みつける。胸元には水が滴り落ち、シャツの一部が濡れていた。
「ふざけるのも大概にしろよ!」島倉が詰め寄ると、陽斗はそっぽを向いたまま、投げやりな声でつぶやいた。「別に」
「別に?わざとだろ、これ!なんでこんなことするんだよ!」島倉の声がさらに荒くなる。結衣たちは廊下の端でその様子を見つめ、事態の深刻さに息を呑んでいた。
陽斗は肩をすくめるような仕草を見せながら、小さくつぶやく。「だって、お前がムカつくからだよ」
「は?僕が何したっていうんだよ!」島倉が問い詰めるように叫ぶと、陽斗の顔が少しずつ赤らんできた。目を合わせないまま、ぎこちなく答える。「……かわいいとか言って馬鹿にしただろ」
その言葉に、島倉は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに苛立ちが表に出る。「それで水をかけたのかよ?確かにちょっとからかったけど、馬鹿にするつもりなんてなかったよ!」
島倉の言葉に陽斗はますます顔を赤くし、唇を一文字に結んだまま拳を握りしめた。やがて、絞り出すような声で言い返す。「でも、そう聞こえたんだよ。お前、俺を馬鹿にしたんだ!」
「それで水をかけたってのか?やりすぎだろ!」島倉は濡れたシャツを指さして声を荒げた。
陽斗は眉をひそめ、表情を歪めながら「うるさい!」と短く言い放つと、その場を離れようとした。
その瞬間、河西がそっと陽斗の前に立ちふさがった。「陽斗君、少しだけ待って。ここで話を終わらせちゃったら、お互いが分かり合えないままになるよ。ちょっとだけでいいから、立ち止まって話をしよう?」
河西の言葉に、結衣と平山も静かに頷きながら見守る。島倉は深く息をつき、シャツを見下ろして黙り込んだ。陽斗は視線を落としながら足を止めたが、顔を伏せたまま口をつぐんだ。
その時、旅館の女将であり陽斗の母が足音を響かせながら現れた。彼女の表情は普段の穏やかさから一変し、厳しさを含んでいた。「陽斗、何をしているの?」低く冷静な声の中にも、怒りを抑えた響きが混じっていた。
陽斗は視線をそらしながらも、母親の声に小さく肩をすくめた。「別に……」
「別に、じゃないでしょ!」女将は一歩前に出て、濡れた島倉のシャツに目をやった。「陽斗、これってあなたがやったの?どうしてそんなことしたの?」
陽斗は言葉を飲み込むように唇を噛み、視線を足元に落とした。それでも強気な態度を崩さず、「うるさい」と小さく呟いた。
「うるさいですって?」女将の声には今度は鋭さが増していた。「陽斗、いい加減にしなさい。相手を傷つける行動を取るのは許されないことよ。きちんと自分のしたことを説明しなさい」
その時、生田先生が女将の隣に立ち、穏やかな口調で声をかけた。「姉さん、少し落ち着いて。陽斗のことは叱るべきだとは思うけど、今ここで感情的になってしまうと話がこじれるだけだよ」
女将は一瞬驚いた表情を見せたが、弟の言葉に我に返るように深く息を吸った。「でも、この子がやったことは……」
生田先生は優しく頷き、「わかってる。でも、まずは状況を整理して、陽斗が落ち着ける環境を作ることが大事だよ。叱るのは後でいい。今は、自分の気持ちを話せるようにしてあげよう」
女将は唇を引き結びながらも、やや落ち着きを取り戻したようだった。「わかったわ……でも、陽斗、あなたには後できちんと説明してもらいますからね」そう言うと、彼女は少し距離を取るように一歩下がった。
しかし、陽斗は依然として顔を赤くしながら母親を睨みつけ、「もういいよ!」とだけ叫び、廊下の向こうへ駆け去った。女将はその背中を見つめながら、ため息をついた。
生田先生はそっと肩に手を置き、「陽斗もきっと自分の気持ちを整理する時間が必要だと思う」と静かに言った。
結衣は少し戸惑いながら、立ち尽くす島倉の横に目を向けて話しかけた。「人の気持ちをちゃんと分かるって、本当に難しいよね。島倉君だって、そんなつもりじゃなかったんだよね」
島倉は視線を落とし、しばらく黙っていたが、軽く息を吐きながら頷いた。「うん……僕、陽斗がそんな風に思ってたなんて、全然分かってなかった。ちょっとふざけすぎたかな」
結衣はその言葉に小さく笑みを浮かべた。「気づけたならそれで十分だよ。陽斗君もきっと、島倉君のこと分かってくれるよ」
緊張していた空気は少しずつ和らぎ、場は静けさを取り戻していった。けれど、陽斗が抱えている何かがまだ解決していないことを、結衣たちは感じ取っていた。進むべき道はまだ見えてこない。その不安と戸惑いが、それぞれの表情にわずかに滲んでいた。
騒動の後、自室に戻った結衣は、畳の上に腰を下ろし、深く息を吐き出した。静かな部屋の中、窓の外には雪が静かに降り続けている。けれど、その穏やかな光景が、心に嵐を抱えた結衣を癒すには足りなかった。
陽斗と島倉の言い争いが脳裏をよぎる。陽斗の揺れる瞳、言葉にしきれなかった感情、そしてその背中が彼の抱える苦しさを物語っているようだった。それでも、結衣にはどう声をかければよかったのか分からなかった。
「もっと、何かできたんじゃないかな……」膝を抱え、そう呟く。自分が無力だったことに胸が締めつけられる思いだった。陽斗が今、何を考えているのか。彼にどう接すれば心を開いてもらえるのか。その答えはまだ見つからない。
ふと、鞄の中にしまっておいた手紙のことを思い出した。それは図書室で偶然見つけたもので、今回の合宿に何か役立つのではないかと持ってきたものだった。結衣はゆっくりと立ち上がり、鞄を開ける。そこには、丁寧に折りたたまれた手紙が入っていた。
結衣は手紙を取り出し、指先でその紙の感触を確かめた。心の中に、小さな期待が芽生える。「この中に、今の私を助けてくれる何かがあるかもしれない……」そう思いながら、そっと手紙を開き、その文字に目を落とした。
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今日は大変な一日だった。友人同士が大喧嘩をしてしまい、その場に居合わせた私はどうすればいいのか分からず、最初はただ見守ることしかできなかった。なんとかして仲裁したいと思ったものの、どう動けばいいのか判断がつかなかったの。
その時、まずは自分が落ち着く必要があると気づいた。感情的なままでは状況を悪化させるだけだと思い、深呼吸をして冷静さを取り戻すよう努めたの。そして、二人それぞれの話をしっかりと聞くことにした。最初は戸惑いがちだった彼らも、少しずつ自分の気持ちを言葉にしてくれるようになったよ。
話を聞くうちに、二人の間には単なる誤解があったことが分かったの。どちらも相手を傷つけたいわけではなく、小さなすれ違いが原因で大きな衝突につながっていたみたい。だからこそ、互いの気持ちを伝える大切さについて話すと、二人は少しずつ心を開いてくれた。そして「これからはお互いに気持ちを伝えること」「感情的になったら一呼吸おくこと」を約束してくれた。
その時感じたのは、まず自分が冷静になることと、相手の話に耳を傾けることの重要さだった。これらは簡単そうに見えて、実際にはとても難しいよね。でも、この二つを意識するだけで、どんな問題も少しずつ解決に近づけるのだと思う。
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手紙を読み終えた結衣は、胸の中にぽつんと浮かんだ言葉を噛みしめるように考えた。「冷静に話を聞くこと……それって、陽斗君の気持ちをもうちょっと分かろうとすることなのかも」
陽斗が何を思い、何に傷ついているのか。すれ違う彼の感情を、結衣はまだうまく掴めていない。でも、手紙の書き主が友人の声に耳を傾けたように、まずは陽斗と話をするきっかけを作ること。それが今、自分にできる最初の一歩だと思えた。
ふと、心に浮かんだのは旅館の女将さんの穏やかな笑顔だった。到着した時に見せてくれた優しい表情や、柔らかな声が結衣の中にしっかりと残っていた。息子を思いながら接していた彼女なら、陽斗のことをもっと知るための何かを教えてくれるかもしれない、そんな期待が胸に芽生える。
「話をしてみよう。」結衣は心の中で小さく呟くと、手紙を丁寧に折り畳みながら深呼吸をした。女将さんの元に行けば、自分だけでは見つけられない解決の糸口があるかもしれない。
結衣はゆっくりと立ち上がり、そっと部屋を出た。廊下には柔らかな日差しが差し込み、外の庭には静かに舞い降りる雪が陽光に照らされて白く輝いていた。窓から見える景色は穏やかそのもので、降り積もる雪が徐々に庭を覆っていくのがわかる。まだ午後の時間帯とはいえ、冷たい空気が旅館内にも微かに感じられる。
歩みを進めながら、結衣は女将さんに何を聞くべきか考えていた。陽斗のこと、自分にできること――明確な答えは見えないけれど、こうして一歩ずつ前に進むことで、何かが見えてくるような気がしていた。
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