忘れられた手紙

空道さくら

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第23話:完成と報告の日

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 次の朝、結衣は晴れやかな気持ちで家を出た。小説を書き上げた充実感が胸の奥深くに広がっており、その感覚が足取りを軽くしていた。通い慣れた道も、今日は少し違った風景に見える。澄んだ空気が頬を撫で、朝の光がやわらかく降り注ぐ中、学校の校門が近づいてくる。

 ふと視線を上げると、校門の前に花音の姿があった。彼女もまた、穏やかな笑顔を浮かべながら、軽やかに歩いていた。

「花音、おはよう!」と、結衣は声を明るく弾ませる。

「おはよう、結衣!」花音も柔らかな微笑みを浮かべて応じる。「なんだかすごく元気そうだね!何かいいことでもあったの?」

 結衣は満面の笑みを浮かべ、「うん、ついに小説が完成したんだ!」と、少し誇らしげに答えた。その声には、やり遂げた達成感がにじんでいた。

「えっ、ついに?!すごいじゃん!ほんとにおめでとう、結衣!」と、花音は思わず声を弾ませて喜び、結衣の肩をポンと軽く叩いた。

「ありがとう、花音!やっと終わったんだよ。なんか今はもう、頭の中がすっきりしてるっていうか…」と、結衣は少し照れくさそうに笑った。

「それだけ書き上げるのに全力を注いだんだね。どんな話に仕上がったのか、めちゃくちゃ気になる!」花音はさらに身を乗り出して問いかけた。

「えっとね、舞台は商店街でね…」結衣は少し得意げに話し始めた。「怪盗に盗まれた招き猫を取り戻すために、主人公たちが商店街のいろんな場所を巡って手がかりを探していく冒険なんだ!」

「招き猫を探す冒険!?それ、すっごくワクワクする展開じゃん!怪盗ってことは、ちょっとハラハラする場面もあるの?」と、花音はさらに興味を引かれた様子で聞き返す。

「そう!怪盗がヒントを残していくから、それを解きながら手がかりを集めていく感じでね」と、結衣は楽しそうに話を続けた。「書いてるとき、私もつい夢中になっちゃった!」

「それ、ほんとに面白そう!絶対に読みたい!ねえ、私が最初の読者でいいよね?」と、花音は目を輝かせて言った。

「もちろん!花音には真っ先に読んでもらいたいし、意見も聞きたいんだ!」と、結衣も満足げに頷く。

「ありがとう!それにしても、すごいなあ。あんなに悩んでたのに、ついにここまで仕上げちゃうなんて、本当に尊敬する!」花音は感心したように言った。

「いやいや、花音がいつもアドバイスくれたおかげだよ!ほんと、いろんなヒントをもらえたから最後まで書き切れたんだよ!」と、結衣は真剣な目で花音に感謝を伝えた。

「そっか、私も少しは役に立てたんだね。それなら嬉しい!」と、花音も嬉しそうに微笑んだ。「じゃあ、次は私の番だね。男装喫茶、しっかり準備するから、絶対見に来てよ!」

「もちろん行くよ!花音の男装喫茶、ずっと楽しみにしてたんだから!」結衣も瞳を輝かせて力強く答えた。「どんな衣装でやるの?雰囲気とかもう決まってるの?」

「ふふ、ちょっとだけ教えちゃおうかな?」と、花音はいたずらっぽく笑い、「クラシックな英国風にしてみるの。スーツにベストとかで、ちょっと渋い感じ!」と続けた。

「うわぁ、絶対似合うよ!花音の男装、きっとかっこよすぎてみんな惚れちゃうね!」結衣は興奮を隠せない様子で言った。

「そんなこと言わないでよ、もう!恥ずかしいってば!」と、花音は少し頬を染めつつも、どこか嬉しそうに笑った。

 朝の光が二人をやわらかく包み込み、未来への期待がさらに膨らんでいく。新しい一日が、晴れやかに二人の前に広がり、夢に向かう一歩一歩がしっかりと刻まれていく。二人の笑顔が道筋に明るい光を投げかけながら、輝く未来へと歩き出していった。



 昼休み、結衣は心の中で湧き上がる興奮を抑えきれず、勢いよく教室を飛び出した。小説を書き上げた喜びを、会長の石山にも早く伝えたくてたまらなかったのだ。廊下を早足で進みながら、石山が驚き、喜んでくれる姿を思い浮かべ、思わず笑みがこぼれる。

 石山の教室にたどり着くと、彼女はクラスメイトたちと楽しそうに話していた。教室全体が和やかな空気に包まれ、明るい笑い声が響く中、結衣は一瞬立ち止まり、少し緊張しながらも意を決して声をかけた。

「石山さん、小説が完成しました!」

 その瞬間、石山が振り返り、結衣を見つけると驚きと喜びが混じった表情で柔らかく微笑んだ。その温かい笑顔に、結衣の胸がさらに高鳴る。

「本当に?すごいじゃん、結衣!」石山は目を細めて嬉しそうに言った。「どんなふうに書き上がったの?」

「えっと…!」結衣は自分でも高まる気持ちを抑えられずに話し始めた。「商店街を舞台にした冒険物語なんです!怪盗に盗まれた招き猫を取り戻すために、主人公たちがいろんな手がかりを追いかけていくんです。謎解きがいっぱいで、最後には驚きの展開もあって…!」

「へぇ、すごい設定だね!」と、石山は目を輝かせながら頷いた。「結衣がそんなふうに物語を作り上げてたなんて、ちょっと驚きだな。」

「私もここまでできるとは思ってなかったんです!」結衣は顔を輝かせて言った。「書いているうちにどんどんアイデアが浮かんできて、最後の方なんて毎晩ワクワクしながら書いてました!」

「ふふ、そうだったんだね。きっと書き上げるまで本当に大変だったでしょ?」石山は楽しそうに微笑んでから、「結衣のがんばりがすごく伝わってくるよ」と優しく声をかけた。

「ありがとうございます!石山さんに伝えられて本当に良かったです!」結衣は少し照れながらも笑顔を浮かべた。

「そんなふうに言ってもらえると私も嬉しいな!」と、石山は結衣の肩を軽く叩きながら笑顔を見せた。「私もすごく楽しみにしてるよ、どんなふうに結衣の世界が広がってるのか。」

「ぜひ読んでいただきたいです!」結衣は思わず声を弾ませて言った。

「本当に楽しみだな。そうだ、結衣にちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?」石山はふと思い出したように言い、「実はみんなも文化祭の準備が進んでるみたいでね。明日の放課後に集まって全員で打ち合わせをしようと思ってるの。伝えてもらえる?」

「もちろんです!みんなに声をかけます!」結衣は即座に返事をし、役割を任されたことに心地よい責任感を感じた。

「ありがとう、結衣。」石山は感謝の気持ちを込めて微笑んだ。「みんなも結衣の作品が文化祭で披露されるのを楽しみにしてるよ。」

 結衣は深々とお礼を言い、軽やかな足取りで教室を後にした。廊下を歩くたびに、小説を書き上げた達成感が胸の奥で輝き、それを石山や仲間たちと文化祭で分かち合える喜びが、希望に満ちた未来の景色をどんどん鮮やかにしていくようだった。結衣の心は期待で満たされ、まるで新しい一歩を踏み出す準備が整ったかのようだった。
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