忘れられた手紙

空道さくら

文字の大きさ
上 下
13 / 50

第13話:夏祭りの夜

しおりを挟む
 蝉の声が響く夏のある日、結衣と花音は一緒にカフェで話していた。窓の外には穏やかな午後の日差しが差し込んでおり、カフェの静かな雰囲気が二人を包み込んでいた。

「ねえ、花火大会に行かない?」と花音が突然話を切り出した。「今年も開催されるみたいだし、結衣と一緒に行きたいな」彼女は微笑みながら続けた。

「花火大会かあ、いいね!」結衣は目を輝かせながら答えた。「友達と一緒に行くのは初めてだから、すごく楽しみだよ」結衣の笑顔には期待と興奮が混じっていた。

「じゃあ、浴衣着る?」花音は少し照れたように尋ねた。「去年は一人で行ったから、浴衣を着なかったんだけど、今年は結衣と一緒に着たいなって思って」

「もちろん!浴衣を着てお祭りに行くのは、夏の醍醐味だもんね」結衣は嬉しそうに答えた。「どんな浴衣にする?私は青い花柄のがいいかなって思ってるんだけど」

 花音は考え込むようにして言った。「私は…そうだな、ピンクの浴衣にしようかな。華やかで可愛い感じが好きなんだ」

「それ、絶対に似合うよ!」結衣は目を輝かせながら言った。「じゃあ、花火大会の前に一緒に浴衣を選びに行こうよ」

「うん、それ楽しそう!」花音も笑顔で応えた。「それから、屋台でたこ焼きやわたあめを買って、一緒に食べながら花火を見るのもいいね」

「そうだね、楽しみ!」結衣はワクワクしながら言った。「絶対に忘れられない思い出になるね」

 カフェでの会話をきっかけに、二人の心は夏の楽しみに向かって大きく弾んでいた。穏やかな午後の日差しに照らされながら、結衣と花音は微笑みを交わし、夏の花火大会を共に迎える期待に胸を膨らませていた。



 花火大会当日、結衣と花音は浴衣を着て繰り出した。花火大会の会場は既に多くの人で賑わっていた。

「今日はいっぱい楽しもうね!」と花音が言った。「うん、楽しみだね!」と結衣も笑顔で答えた。

 屋台でたこ焼きやわたあめを買いながら、二人は夏祭りの雰囲気を満喫していた。そのとき、ふと前方に見覚えのある顔が集まっているのに気づいた。

「あ、颯太くんと真奈ちゃん、それにみんなもいる!」と結衣が驚きと共に声を上げた。

 颯太と真奈、そして他のバイト仲間たちが楽しそうに集まっていた。

 結衣は、自分だけ誘われていないことに胸が締め付けられるような寂しさを感じた。みんなも結衣の表情に気づき、真奈がすぐに申し訳なさそうに言った。

「結衣ちゃん、ごめんね。本当は誘いたかったんだけど、まだ高校生だから気を使っちゃったんだ」

 結衣はその理由を聞いて、少しほっとしながら頷いた。「ううん、大丈夫。そんなに気にしなくていいよ」

 そのとき、颯太が微笑みながら言った。「結衣ちゃん、浴衣すごく似合ってるね!」

 結衣は頬を赤らめ、少し照れながら「ほんとに?ありがとう、颯太くん。ちょっと照れちゃうな」と返した。

 颯太は優しい笑顔を浮かべながら「結衣ちゃんも一緒に屋台を回らない?」と提案した。

 結衣は笑顔で応えた。「ありがとう!花音も一緒にいいかな?」

「もちろん、一緒に行こうよ」と颯太が答え、花音も嬉しそうに微笑んだ。

 花音も結衣に優しく声をかけた。「みんなと一緒にいられてよかったね、結衣」

 結衣は、みんなの優しさに触れ、自分の気持ちがわかってもらえていることに心からホッとした。そして、みんなと一緒に楽しみたいという気持ちがさらに高まった。



 その後、結衣たちは一緒に行動するようになり、みんなで屋台を巡りながら笑い声が絶えなかった。結衣は心から喜んでいる様子で、りんご飴を食べたり、射的で景品を狙ったりと、楽しみながらも童心に返っていた。

 結衣が颯太に向ける輝くような笑顔を見て、花音は結衣が颯太に特別な想いを抱いていることを察した。

「結衣、颯太くんともっと話してみたら?今がチャンスだよ」とそっと促すように言った。

 結衣は少し戸惑いながらも、勇気を振り絞って颯太に話しかけた。「お祭りって、楽しいよね。いろんなことがあって、全然飽きないよ」

 颯太も微笑んで答えた。「うん、こういうのって本当に特別だよね。結衣ちゃんが笑ってるのを見て、俺も楽しいよ」

 結衣は嬉しそうに微笑みながら続けた。「みんなと一緒にいろんなことができて、本当に良かった。屋台のりんご飴、美味しかったね」

 颯太が頷きながら言った。「そうだね、たこ焼きも美味しかったし、わたあめも。あ、見て!あの屋台、金魚すくいがあるよ!」颯太が楽しそうに指差した。

「え、やってみたい!」結衣が目を輝かせて応じた。

 その時、夜空に大きな花火が咲き始めた。ドーンという音と共に、色とりどりの花火が空を彩り、みんなの視線を引きつけた。

「わあ、花火が始まった!」結衣が感動しながら言った。

 颯太も感心しながら言った。「本当にきれいだね、結衣ちゃん」

 二人は肩を並べて、美しい花火を観賞した。二人の心には、夏の夜の魔法のようなひとときが刻まれていった。



 花火大会が終わり、結衣と花音は帰り道を歩いていた。夜風が心地よく、二人の浴衣がそよぐ音が静かな通りに響いていた。花音はふと立ち止まり、結衣に優しく語りかけた。「結衣、今日は本当に楽しかったね」

 結衣も立ち止まり、少し照れたように笑った。「うん、本当に。みんなと過ごす時間があっという間だったね」結衣は空を見上げ、まだ淡く光る花火の残像を思い返していた。

 花音は結衣の表情を見つめ、思い切って尋ねた。「颯太くんのこと、どう思ってるの?」結衣はその質問に一瞬驚いたようだったが、すぐに真剣な表情に変わった。

「実は、颯太くんが気になってるんだ。でも、どうしていいかわからなくて…」結衣は言葉を選びながら答えた。「みんなの前では普通に話せるんだけど、二人きりになると緊張しちゃうんだ」

 花音は優しく微笑み、結衣の肩に手を置いた。「結衣、颯太くんも同じ気持ちかもしれないよ。颯太くんだって、結衣のことを特別に思っているんじゃないかな。少しずつ、自分の気持ちを伝えてみたら?」

 結衣は花音の言葉に勇気づけられ、少しずつ自分の心を開こうと決意した。「ありがとう、花音。少しずつだけど、颯太くんに自分の気持ちを伝えてみるね」結衣は笑顔で言った。



 その後、二人はまた歩き始めた。結衣はこれからの未来に対する期待と不安が入り混じる中、花音の言葉に背中を押されながら進んでいった。

 未来への希望と、恋が実るのかという不安。その両方が結衣の胸に交錯し、夜風に揺れる浴衣の裾と共に心も揺れ動いていた。それでも、結衣はその全てが新たな一歩に繋がると信じて、静かに決意を固めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

#消えたい僕は君に150字の愛をあげる

川奈あさ
青春
旧題:透明な僕たちが色づいていく 誰かの一番になれない僕は、今日も感情を下書き保存する 空気を読むのが得意で、周りの人の為に動いているはずなのに。どうして誰の一番にもなれないんだろう。 家族にも友達にも特別に必要とされていないと感じる雫。 そんな雫の一番大切な居場所は、”150文字”の感情を投稿するSNS「Letter」 苦手に感じていたクラスメイトの駆に「俺と一緒に物語を作って欲しい」と頼まれる。 ある秘密を抱える駆は「letter」で開催されるコンテストに作品を応募したいのだと言う。 二人は”150文字”の種になる季節や色を探しに出かけ始める。 誰かになりたくて、なれなかった。 透明な二人が150文字の物語を紡いでいく。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...