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破章
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「あらら?」
ピグミーは首を傾げていた。
勇者の手錠をいくつも繋げた武器がどんどん元の形に戻っていく。
「これは歌声?」
ゆっくり
ゆっくり
一歩
一歩
また一歩
こっちも一歩
堕ちよう
堕ちよう
堕ちようよ
もっと私のモノになって
なって
なって
「悪いけどそれは出来ないわ。世界樹!そしてお義母さま。」
「言うようになったわね小娘が、でもいいわあなたを義娘として認めてあげる。ただし。」
「ただし?」
「あなたの後ろに居る質の悪いストーカーになったクソ甥を捨ておきなさい。」
後ろには焼かれたはずの世界樹と学園居るころから金魚の糞みたいに引っ付いてきた気持ち悪い王子が居た。
世界樹が呼びかけていたのは私では無かったこの戦場全てに語りかけていたのだ。
堕ちた兵士は世界樹教の大多数と半分の王国の兵士たち。
「力は時に抑止力となるって言うけどな世界樹、俺はお前みたいな害獣に対して容赦はしない。」
「「「ムダ、ムダ、ニンゲン、ニンゲン、エイヨウ、エイヨウ、エサ、エサ、オトナシク、オトナシク、ワタシ、ワタシ、イチブ、イチブ、ナレ、ナレ。」」」
「は、じゃあこれを見てもそんなことが言えるのか?」
「Sura!!」×360
今までの三倍のスライムが顔を出した。
「「「スライム、スライム、ザコ、ザコ、ワタシ、ワタシ、テキ、テキ、ナシ、ナシ。」」」
「阿保だな世界樹。お前は自分の知る歴史を忘れたのか?」
「「「ナニ?ナニ?」」」
その日世界樹は思い出すことになる。
自分がこの世界に来た2番目の外来種であることを。
最初に来た外来種は名もなき生物の祖の一人だった。
彼らを食した生物は皆異形へと姿を変えていった。
人が食べれば魔族に
動物が食べればモンスターに
木だけは食すことはせずに共生していった。
ただ、逆にその生物に食われる木もあったがそれらは木の栄養にもなったから誰も見向きもしなくてもよかった。
でも世界樹は違った。栄養を蓄えようとしていた世界樹はその存在が邪魔でしょうがなかっただから排除しようとした。
木々を震わせ誰も来ないように供物をささげる生物たちにも排除させるように誘導していったつもりだった。
返り討ちにあった。
まるで人間にとってのノミのような存在だったのに、ちっぽけな虫けらなのに
精々言って痒みを感じさせる程度のモノだと思っていたのに
世界樹は初めて知らない感情を覚えた。
現代社会でこの感情を覚える者はまずいない。
絶望的で何よりも死を望むようで望んでいない。
矛盾しているようで矛盾していないように思えて全てを統一されているような感覚。
戦場に住む者たちは恐怖と呼んでいた。
ピグミーは首を傾げていた。
勇者の手錠をいくつも繋げた武器がどんどん元の形に戻っていく。
「これは歌声?」
ゆっくり
ゆっくり
一歩
一歩
また一歩
こっちも一歩
堕ちよう
堕ちよう
堕ちようよ
もっと私のモノになって
なって
なって
「悪いけどそれは出来ないわ。世界樹!そしてお義母さま。」
「言うようになったわね小娘が、でもいいわあなたを義娘として認めてあげる。ただし。」
「ただし?」
「あなたの後ろに居る質の悪いストーカーになったクソ甥を捨ておきなさい。」
後ろには焼かれたはずの世界樹と学園居るころから金魚の糞みたいに引っ付いてきた気持ち悪い王子が居た。
世界樹が呼びかけていたのは私では無かったこの戦場全てに語りかけていたのだ。
堕ちた兵士は世界樹教の大多数と半分の王国の兵士たち。
「力は時に抑止力となるって言うけどな世界樹、俺はお前みたいな害獣に対して容赦はしない。」
「「「ムダ、ムダ、ニンゲン、ニンゲン、エイヨウ、エイヨウ、エサ、エサ、オトナシク、オトナシク、ワタシ、ワタシ、イチブ、イチブ、ナレ、ナレ。」」」
「は、じゃあこれを見てもそんなことが言えるのか?」
「Sura!!」×360
今までの三倍のスライムが顔を出した。
「「「スライム、スライム、ザコ、ザコ、ワタシ、ワタシ、テキ、テキ、ナシ、ナシ。」」」
「阿保だな世界樹。お前は自分の知る歴史を忘れたのか?」
「「「ナニ?ナニ?」」」
その日世界樹は思い出すことになる。
自分がこの世界に来た2番目の外来種であることを。
最初に来た外来種は名もなき生物の祖の一人だった。
彼らを食した生物は皆異形へと姿を変えていった。
人が食べれば魔族に
動物が食べればモンスターに
木だけは食すことはせずに共生していった。
ただ、逆にその生物に食われる木もあったがそれらは木の栄養にもなったから誰も見向きもしなくてもよかった。
でも世界樹は違った。栄養を蓄えようとしていた世界樹はその存在が邪魔でしょうがなかっただから排除しようとした。
木々を震わせ誰も来ないように供物をささげる生物たちにも排除させるように誘導していったつもりだった。
返り討ちにあった。
まるで人間にとってのノミのような存在だったのに、ちっぽけな虫けらなのに
精々言って痒みを感じさせる程度のモノだと思っていたのに
世界樹は初めて知らない感情を覚えた。
現代社会でこの感情を覚える者はまずいない。
絶望的で何よりも死を望むようで望んでいない。
矛盾しているようで矛盾していないように思えて全てを統一されているような感覚。
戦場に住む者たちは恐怖と呼んでいた。
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