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間章 勇者

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「どうして無理なの?」
「それはここで話すのは無理だから学園長室まで行きましょうか。」
「ええそうね。私もマリアンヌと喋りたいし食事でも持ってこさせましょう。」

そういって学園長室に場所を変えた。

学園長に入って目についたのは大きな木の絵だ。
その絵は青々とした森と共に一輪の木と共に数多くの森に携えているように見える。

「この絵をいつ見ても綺麗ね。」
「そうなの?」
「マリアンヌには綺麗に見えないの?」
「うん。」
「俺はこの絵が好きなんだが嫌いと思う人も居るらしいからな。村長なんかがその代表例だし、義母さんもその一人だったしな。」
「おばあちゃんも?」

私にはこの絵よりも馬車で見た森の方が美しく見える。
上手く表現できないがこの木は一輪だと思ったからだ。
まだ森や王都の方が様々な花や色が見れる。

「概ね、勇者の適性を持つだけのことはあるわ。」
「当然、私の孫とアレの孫よ。」
「かつては私たちの敵であった勇者が今では安心すらあるんだから不思議よね。」

ラピスおばあちゃんと学園長は私の反応に満足するように紅茶を口にしていた。

「一応ここには防音の結界と通信遮断、畜音妨害の魔術が施されているからあとはあなたたちの他言無用にしてほしいとしか私たちには言うことは無いわ。」

学園長は改まり、真剣な眼をした。

「わざわざそんな部屋で話すということは何か漏らしてはいけないことなの?」
「そうね。世界樹教は知っているかしら?」
「知ってるも何も人間、エルフ種に限らずほとんどの人が入信している世界宗教でしょう?」
「ある意味で正しいけれども正しくはないのよ。」

煮え切らない言葉を用いて学園長は話していく。
正確には否定と肯定の両方が存在するといった感じに聞こえた。

「かつて世界樹教の信者たちは世界樹の奴隷とも呼べるような存在だったの。」
「今でもその名残があるのか森の精霊と親和性の高いエルフの中には世界樹こそが森だと感じるエルフも居るわ。」
「彼らはまた戦争を起こそうとしている。この絵はね。世界樹の一部を用いて創られたものだからこれに嫌悪感を持つというのは勇者ちゃんの目的に邪魔になる大いなる存在であることを意味するの。つまり勇者にとっての敵は世界樹よ。」
「どうしてマリアンヌが嫌悪感を出すと世界樹が敵になるんだ?」

お父さんが次の言葉を話そうとするおばあちゃんを遮って質疑をした。

「愛する人に害を成すから。自分を愛してほしい人の邪魔をするから。告白する勇気を邪魔する存在だからよ。ローゼ、ルチアの母からある程度マリアンヌちゃんの恋愛事情については話は聞いているわ。ユート君だったかしら。今はまだ素直に成れていないだろうけど歴代の勇者もそうなのよ。」
「歴代の勇者たちは恋した人たちに告白するための邪魔になる存在には容赦しない。」
「たとえ自分よりも強い存在でも告白する勇気に比べたら安いものですもの。」

勇者とは告白する勇気を持ちたい者たちの総称でもあった。
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