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間章 勇者

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「お、見えてきたぞ。マリアンヌにも見せようか。」
「そうね。村とは比べものにならないくらいの都会というものを見せてあげましょう。」

目の前には巨大な城壁と王城がある。
某夢と魔法と金の国の城より遥かに大きく堅牢な城はもし地球なら世界遺産になることは確実な美しさを持っていた。

「これほどの城を建てるのには数十年とかかるのよ。」
「じゃあユートと会えるのは数十年なのね。」
「相変わらずユートに御執心だな。」
「当然!私の夫にふさわしのは彼しかいないもの。」

ハーレムなんてもってのほか。
自分だけを愛してくれればいい。
この命の重さが軽い世界でそんな純愛思考を持つ人間は少なかった。

しかし勇者は純愛だった。

歴代の勇者も英雄色を好むに該当するものは居なかった。
この事実はどこの国も捻じ曲げているせいか誰にも伝わっていない数千年もの隠し事でもあった。

純愛でなければ勇者にはなれない。
その事実に貴族たちは気づくこともなく各国の王族もしくは首相に該当する人物だけが知っているため勇者の血を引き入れた王族貴族はは1人を除いていなかった。

その1人は王族に最初から惚れていて王族もまた惚れていたからこそ成り立った夫婦だった。

もちろん子を成すことなく死んでいった勇者も数多くいた。

死んだ、もしくは振られた、逃げられたなど様々な要因が重なって子を成せない勇者は多かった。

故に勇者の末裔という言葉は存在しない。

誰も証明しらがらないからだ。

勇者の両親ですら知らないこの事実は王族は伝えることはしなかった。

なんせ国家戦力になりうる存在をみすみす不毛の土地へ返してしまうことを躊躇ったからだ。

「見てなさい。手柄を立ててすぐにでもあの王城の真下にユートの作る家を越えるものを建ててみせるんだから!」

「大丈夫だよマリアンヌならすぐにでもそんなお屋敷が建ててくれるようになるから。」

このときのマリアンヌの父親はあの不毛の土地で建てられる家など限られているからと半分は当然の範疇でもう半分はあの不毛の土地に生きる人たちよりも良い生活が送れるという優越感から発した何気ない一言だった。

だが知らなかった。
あの不毛の土地は村長がいない時点でいくら耕してもそもそも作物が植えられない状態だったことを。

むしろ生きられるようにしていた村長の偉業を知ろうとすることは無かったのだ。

王族には知っていたがあの村長ならあの土地を開拓できるという確信をもって送り出されていた。

しかも王の見込みでは僅か100年であの土地を再生できると計算されていた。

長い期間と思うかもしれないが発展とは日々長い時間をかけて行われるものだ。
あの不毛の土地は村長がいなければ数百年は同じままかそれ以上の歳月が必要だと考えられていた。

この国だけでない。
全ての国の技術をかき集めてもあの土地だけは開拓できない。
生きられない。
そう言われ続けていた土地で技術を数千年先へと成長させた人物に新たなる助っ人ができたことを王都の人たちはまだ誰も知らない。
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