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序章

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「あわわわ!」

突進を決め込んでくるゴブリントレインの攻撃を避けていくが中々攻撃に転じることができない。
動き的にはマリアンヌと鬼ごっこをさせられていた時とほぼ変わらないので問題は無いのだが……体力が無尽蔵に思えるくらいの全力疾走と思われる突進を数十回繰り返しているのだから鬱陶しい。

「メタルスラ坊に赤スラ坊手伝ってよ。」
「ダメじゃ。」
「村長の意地悪。」
「開拓民やるんじゃからには村の周辺のモンスターを一人で倒せないでどうする!」

とは言われるものの体格が明らかに違うゴブリンとではとてもではないが決定打にかけていた。

「うーん。」

動きながらも使えそうなものは無いか開拓村で培った眼をもって探っていく。
周りを見渡しても砂や石、尖った岩など手傷を負わせることは出来ても殺傷能力がさほどないものか自分では取り扱えないものばかりだった。

そこでふと自分が持っているモノを確認する。

「あ、鍬、持ってきた……」

一瞬鍬で攻撃しようかとも思った。
だが自分が耕したことがあるのは地面のみ地面と生物とではわけが違う。

「やっぱり農家らしく地面を耕かさないと。」

ユートは洞窟の岩盤を耕し始めた。
ゴブリントレインが突進をするたびに数十回は耕されていきどんどん足場が悪くなっていく。
この洞窟はもっとも身近にありポピュラーな鍾乳洞と呼ばれる石灰岩でできたタイプの洞窟で水が多い。

すなわちこの岩盤を砂のと同じ大きさまで砕けばそれは。

「泥になるか……。」

その泥となったところを突進してきたゴブリントレインは足を取られ盛大に転んだ。

「Gobuuuuuuu!!」

悲鳴と共に彼は泥に顔を埋めながら死んだ。

「うえ、気持ち悪るぅ。」

何故か吐き気がした。
そして赤スラ坊がすり寄ってきてくれた。

「ふむまあ第一関門はクリアと言ったところかのう。」
「村長、それでまだデスカンクを探すの?」
「流石にもう探すのはよくないのう。」
「そっか…。」
「今度また一緒に行くとしようかのう。今はスライムを探すのが先決じゃろうて。」

そういって洞窟から引き返そうとしたときユートは何か光るものを見つけた。

「あれ?」
「む、どうかしたのかのう?」

村長はモンスターの気配が感じられないことを確認するとユートが視線を向ける方向を見るが何もなかった。

「何かあるのかのう?」
「うん、光って見える。」

村長には見えない。
しかしユートにははっきりと見える光って見える何か。
村長はこの不毛の土地に伝わる神話を思い出していた。

◇◇◇◇

世界樹は世界に根を張りつくそうとした。

世界樹は唯一にして全ての植物であろうとした。

しかしそれは叶わず神の怒りを買って折れてしまった。

だが世界樹が唯一の植物であろうとした魔力が土地に残り植物は根付かなくなった。

人々はそれを不毛の土地と呼んだ。

もし不毛の土地に畑を構えられるとするのなら

ほんの小さな光を持つ彼らだけだろう。

全ての土地に彼らは居て全ての土地で彼らは見えない。

彼らは子どもにしか姿を現さない。

時に人を迷わせ

時に人を助け

時に人を愛する

彼ら精霊の源たるものや

ここは不毛の土地、再生できるのは彼らに愛されたもの
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