喫茶店「人生の墓場の楽園」~転生して17年、村の憩いの場を作っていたら生前推してたVtuberがこの村に来た件

スライム道

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 「うむ。」

 米はあまり好かない。
 家畜の食べ物として自国で扱われている。
 飢饉のときにしか口にすることはないが、やはり不味いというより、貧しさを感じる。

 舌が肥えたとかそういう話ではなくて、貧しいものと感じるのだ。
 だがこの店主の出す米は香り高く豊かである。

 そして紅茶が無いからと啜った緑茶もまた貧しさの象徴であった。
 紅茶の芳醇な香りとは異なりスッキリした味わいといえば、聞こえはいいが深みが無く物足りない。
 ただ苦いだけの代物。

 しかし、店主が入れると美味なる味に変わる。
 苦味はあれどもしっかりとした旨味もあるお茶に変わる。
 芳醇な香りが無いのに変わりはないが美味しいと素直に感じることができるのはこのお茶だ。
 
 はりはりもまた、味は良けれども貧しい時の食べ物。

 全て貧しい筈なのに心が豊かになるのはどうしてだろう。
 そう思えるようになったのは店主のおかげだ。

 ◇◇◇◇

「やっぱり、素朴な方がおやつには良いわよね。」

 私は少し離れた町に住む伯爵の側室。
 側室として、社交界や茶会など様々な行事に赴き、脂っこいお茶菓子に辟易していた。
 お茶だって同じ紅茶ばっかり飲ませられれば飽きるわよ。
 もともと小さな男爵家の次女だった私には、本場の貴族の食事は辛過ぎた。
 もっとさっぱりしたものが食べたいと思った矢先にここを見つけた。
 
 ここの店主は実家のある村で食べた懐かしい食事が私を待っていた。

「ウサギとかも美味しいし、お米は中々食べなかったけど麦粥を食べていた時を思い出すわ。」

 はりはり、畑仕事終わりのおやつにピッタリ。
 パンなんてお腹にずっしりと溜まる方が良かったし、綺麗とか言われてもこの食生活が無いと貴族の妻には成りたくないわ。
 美味しいのは緑茶もだ。
 発酵したお茶よりも麦茶とかを呑んでいたしこっちもすっきりして美味しい。

 薬草茶に近いすっきりした味わいそしてほのかな香ばしさ。
 
「焙じてくれているのは機嫌がよろしいからかしら。」

 稀にだが緑茶が焙煎されたお茶に変わっていることがある。
 マスターの機嫌のいい時にしか作らないのと、限られた常連にしか淹れない幻のお茶として噂されている。
 私が出されるようになったのは2か月ほど常連になってからだ。

「ああ、私がちょっとおせっかいしたのが良かったのかしら。」

 せっかく夫婦になったのだから、妻には積極的になってほしいモノね。
 お熱いことは悪いことではないわ。
 側室だからと言って可愛がられるというわけでもない。
 常に魅了しないと女には賞味期限が付き物ですもの。
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