喫茶店「人生の墓場の楽園」~転生して17年、村の憩いの場を作っていたら生前推してたVtuberがこの村に来た件

スライム道

文字の大きさ
上 下
14 / 62

14 日本ではまだまだ彫り物に忌避感があるのですよ

しおりを挟む
多少のモニカ様からの嫌がらせはあったものの、学園生活は順調に過ぎていく。

え?
どんな嫌がらせがあったかって?
陰でわたしの悪口を言われたり、机に置きっぱなしにしていた教科書を破られる程度で、かわいい子どものいたずら程度のことだった。

よかった。
毒を盛られたり、暗殺者を雇われて殺されそうになったりする過激な嫌がらせじゃなくて。



魔法の勉強は思ったよりも為になり、ルーク様の火傷を消す範囲も少し大きくなった気がする。
でも、調節が難しくて、ちょっとやり過ぎるとその日のわたしは使い物にならなくなるから、ちゃんと見極めなくちゃいけない。
他の火水風の魔法は授業以外では使用禁止だけど、光の魔法だけは校内での練習が許可されている。
癒しの魔法だからだと言うことだが、それでも、教わった魔法以外は使ってはいけない。試してもいけないと言われている。
教わっていないものは使えないから、わたしにとってはどうでもいいことだ。


アンリエル様からの紹介で、わたしにもお友達ができたり、ルーク様にもお友達ができたりした。

……ただ、ルーク様のお友達は、わたしのお兄様のお友達なので、全員年上だけど……。
ルーク様は、自分を遠巻きに見ている同級生とは仲良くする気はないらしい。
そこは、ルーク様の気持ちを優先しようと思い、わたしは何も言っていない。
それに、お兄様のお友達とは仮面を着けずとも仲良くできているのだし、少しずつ、人と人との繋がりの輪を広げていけばいいと思うから。



季節は巡り、そろそろ学年末。

学園では毎年恒例の剣術大会がおこなわれる。


「はやくはやく! ジーナ様、席がなくなってしまいますわ」
アンリエル様が珍しく大きな声を出している。

わたしたちは今、学園内の闘技場まで来ている。
造りは小さなコロシアムのように、丸い競技場を囲って見やすいように段差をつけて席が作られているけど、いい席は早く行かないとなくなってしまう。
アンリエル様は、一つ学年が上の先輩のファンになったようで、今日試合が見られるのを楽しみにしていた。

正面、前から3列目の席をなんとか2つ確保してわたしたちは腰を下ろす。
「ジーナ様、よかったですわね。ここならとてもよく見えますわ」
頬を赤らめてわくわくとアンリエル様が言う。
「アンリエル様が見たいのは、一つ上のマイケル様でしたね。」
「ジーナ様、そんな大きい声で言わないでくださいませ!」

あらら。
顔が真っ赤になっちゃった……。
「アンリエル様、ごめんなさい」

剣術大会は、さすがに腕に覚えのある生徒が参加するだけあって、とても見応えのあるものだった。

マイケル様は、アンリエル様が推しているだけあって、茶色の髪を靡かせて、華麗に剣を振るっていたけど、三回戦で敗退。
でも、イケメンなので、剣術的にも芸術的にも大変見応えのある試合でした。

わたしの推し(?)のルーク様は、三回戦も危なげなく勝利した。
何故か、ルーク様の出る試合は、観戦者が多く、黄色い声援も多数あった。
疑問をそのまま口にすると、アンリエル様は目をまん丸にしてわたしに言った。

「ジーナ様、ご存知ないのですか? ルーク様は今や大変な人気者ですのよ? 一回生ではありますが、その中でも背が高く、幼い頃から剣を握っていただけあって、体は鍛えられてとてもバランスのいい立ち姿でいらっしゃるし、金糸のようなしなやかなお髪に透き通るようなエメラルドの瞳。お顔の半分は仮面で隠れてしまっておりますが、それを補ってあまりあるお姿に、上級生のお姉様方さえ
もお熱をあげておりますわ」
「……へぇ」
まったく知らなかった。

「ジーナ様との仲を邪魔する者がおりませんのは、ルーク様の一途なお姿によるところが大きいですわ。この前の建国祭では、生涯ジーナ様以外の婚約者は認めないと大きなお声で宣言なさったと聞きますし。おモテになるのにジーナ様以外によそ見もしないところも、ご令嬢方から好感をもたれているところですわ。貴族の令息なんて、側室や愛人がいて当たり前のように思っていますもの」
うっとりと物語の王子様のことでも語るように言うアンリエル様に、なんとなくわたしは居心地が悪かった。

だって、そんなに多勢の人から熱い視線を向けられている人の婚約者が、お父様似の男顔のわたしなのだ。
それでみなさまは納得していらっしゃるのだろうか……。
納得されなくても婚約者は辞退しないけど。

そうこうしているうちに、ルーク様は4回戦も勝ち抜き、つぎは準決勝だ。

やっぱりルーク様は幼い頃から剣を習っているだけあって強いな。
上級生相手でも、ひるみもしない。
しかも今日は観戦者が多いことから、仮面をつけての参戦だ。
仮面は火傷を隠すのにはいいけど、視界が悪いだろう。

ルーク様、仮面は暑いだろうな。
熱中症にならなければいいけど。
ルーク様が心配になり、じっとルーク様を見ていたわたしに、アンリエル様が驚いたように声をかける。

「ジーナ様、次のルーク様の対戦相手は、お兄様なんですのね!」
「へ?」
アンリエル様の興奮した声に、対戦相手の方のゲートを見ると、うちのお兄様が胸とお腹に防具を着けて立っているのが見えた。

「げ、ほんとだ。お兄様だ……」
「ジーナ様、オリバー様はお強かったのですね」
「いや、わたしも知らなかったです……」
いつもヘラヘラとしているお兄様が、剣が得意だなんて知らなかった。
そういえば、たまにルーク様のお屋敷に一緒に行くと、ルーク様と手合わせをしていたっけ。

お兄様は不適に笑う。

「ルーク様、久々に手合わせできるな。覚悟しろよ」

ルーク様も剣を一振りして、お兄様に笑顔を見せる。
「義兄上。あれからオレも成長しました。幼い頃は勝てませんでしたが、今日は勝たせてもらいますよ」

観戦席から遠い場内で、そんな会話が交わされていたのは、わたしの耳には届かなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件

石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」 隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。 紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。 「ねえ、もっと凄いことしようよ」 そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。 表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。

処理中です...