満員電車

安積

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もしかして

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(生暖かい、これは……吐息?)

 チラリと視線だけ後ろに向けると、先程座り込んだおじさんが私の尻に顔を近づけている。

(ひっ)

 スーッと匂いを嗅ぐように息を吸い込み、生暖かい吐息を吐きかけられている。

(痴漢? でも、男の私に……?)

 中学生の頃ならいざ知らず、身長180センチ程まで伸びた今では、こんなことが起こるとは思っていなかった。
 気持ち悪い。なぜ匂いを嗅ぐのかもわからないし、にやにやした笑みを浮かべている顔も気持ち悪い。尻にかかる生暖かい吐息でさえも気持ち悪い。
 次第に顔が近づいてきて、とうとう鼻が尻の間に差し込まれた。

「――ッ!」

 嫌だ! 気持ち悪い!
 咄嗟に逃れようと身を捩った瞬間、電車が大きく揺れて、結局おじさんと向かい合うような形になってしまった。
 尻の間に鼻を突っ込まれることが無くなったので、良しとするべきか。そう思ったが、それは間違いだったとすぐに気付いた。

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