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魔法のある世界で
020.守るべき者~サラ視点
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私は近衛騎士団第三部隊のサラ・サンキス!
サンキス伯爵家の一人娘である。
そう、私には兄弟姉妹という者がいない。
だから、ものすごく妹というものに憧れていた!
ルゼルジュ様なんて呼ばなければよかった!
正直、そう思ってしまった。
ラーラは、私が保護して我が伯爵家で妹として迎え入れたかったのにっ!である。
…とは言え、ルゼルジュ様の言う事には一理も二理もあった。
確かに、いきなり私の妹だと言っても誰も信じまい。
…父はハゲチャビンで母はおデブだ。(ふっ…と、遠い目をする私…)
人はいいんだけどね…人は…。
ちなみに私も女騎士をやめて母と同じように毎日毎日お茶会だのパーティ等をしていれば、すぐにまん丸になってしまうだろう。(あな恐ろしや)
いや、誤解しないでいただきたい!別に両親が嫌いなわけではない!
私にやたら『花嫁修業しろ』だの『騎士なんぞ辞めろ』とか言う以外は良い親だと思うし普通に慕ってもいるのだ。
領民に優しいところも尊敬している!
…かと言ってラーラの、美しすぎるあの髪あの瞳、私が生んだと言っても通じまい。くっ
私も体格だけはスリムな方だが、せいぜい、そこそこ美人と言ってもいいかな~?程度である。
仮に私が生んだということにしたとしよう。
私の相手…ラーラの父親が、どんだけ美形な相手だと言い張っても無理があるだろう。
(自分で言うのも悲しいが…)
ましてやルゼルジュ様のように異国になど行った事もない私が銀髪紫眼の恋人が出来る訳もなく、そんな色合いの異国人など、この国で見かけたためしもない!
それにである!
生半可な後見人…伯爵家ごときでは、あの聖なる銀の色を纏う女の子ラーラは守れないだろう。
突如、遺跡の中から卵と思しき魔道具に保護され現れた奇跡の存在。
あの”卵”も剣でも弓でも傷ひとつ付ける事すらできなかった。
今の世界にはない程の加護の魔力が込められていたに違いないのだ。
推測でしかないが、やはり、神々の文明と呼ばれしラビドニアの魔法具によって守られた亡国の生き残りの姫だとしか思えない。
その奇跡の魔道具”卵”によって千年以上の時を眠っていたのだろう。
あの、人ではあり得ないような聖なる輝きを放つ銀糸の髪、どこまでも美しい紫水晶の瞳!
その瞳は見た目の幼さに反して知的さを称えているようにも見えた。
ラーラは、名前以外のことはほとんど分からないと言っていたが、まだ目覚めたばかりで記憶が混濁しているのかもしれない。
そう思ったのには理由がある。
名前を名乗った後の事、ルゼルジュ様がラーラに家族になろうと言った時の事である。
ルゼルジュ様が自分の奥さんは死んでいないと言うと、ラーラは自分も今まさに家族どころか知人すらいない状況なのに大人のルゼルジュ様を気遣う言葉を発したのだ。
「おじしゃま、寂しい?大丈夫?」と!
私と侍女はこの言葉に胸がつまり泣きそうになった。
「まぁ…自分こそこんな見も知らない世界で目覚めて不安でしょうに…」
「なんて優しい子なんでしょう」
私と侍女が、そう言うとラーラは事もなげに言ったのだ。
まだ幼い拙い言葉で…。
「わたしは、もともと、ひとりだから、だいじょうぶなにょ…いたひとが、いなくなる方が可哀想なにょ」と!
この言葉に私も侍女も、大の大人の男のルゼルジュ様も号泣だった!
これが泣かずに、おらりょうか!
三歳かそこらの幼子が!
もともとひとりだと言ったのだ。
それとて記憶の片鱗がよみがえったのか、どうかもわからない。
ただ、きっとそれは本当の事だったのだろうと感じたのだ。
あたりまえのように自分が一人だったという小さな小さな女の子…。
側室の子供との跡継ぎ争いの末に命を狙われたのでは?という私の思いつきな考えも、当たらずとも遠からずあったのではなかろうか?
我が国でも何世代か前までは跡継ぎを巡る暗殺や世継ぎ争いによる紛争はあったという。
我が国は先代の王からは側室という制度自体を廃止した為、そんな事はなくなったが、ご正室が亡くなった後にお子様が、力のある側室に虐げられるなどの話は物語にも実際にも、よくある話だった。
どう推測しても目覚める前の記憶が幸せとも思えない。
そんな少女に無理に記憶を問い詰めたりはすまいと私もルゼルジュ様も考えは同じだ。
それならば、悔しいけれどラーラは、ルゼルジュ様に託すのが一番だろう。
ルゼルジュ様なら、そのお言葉通りにラーラを守りきって下さるだろう。
あの様子なら持てる知識、持てる魔力、そして持てる権力をも使ってラーラを何者からも護りつくすに違いないと確信できた。
だから私は泣く泣くラーラの姉になる野望を捨てた。
そして、ラーラの護衛にしてくれとルゼルジュ様にすがり、拝み倒したのだった。
ラーラの側にいられるなら近衛騎士団なんざ今日にも辞めてやるわっ!
父伯爵にも散々、やめろと言われていたし、ちょうどいいわと思う私だった!
まぁ、父が望むように屋敷に閉じこもったり花嫁修業をしたりはしないけどね。
サンキス伯爵家の一人娘である。
そう、私には兄弟姉妹という者がいない。
だから、ものすごく妹というものに憧れていた!
ルゼルジュ様なんて呼ばなければよかった!
正直、そう思ってしまった。
ラーラは、私が保護して我が伯爵家で妹として迎え入れたかったのにっ!である。
…とは言え、ルゼルジュ様の言う事には一理も二理もあった。
確かに、いきなり私の妹だと言っても誰も信じまい。
…父はハゲチャビンで母はおデブだ。(ふっ…と、遠い目をする私…)
人はいいんだけどね…人は…。
ちなみに私も女騎士をやめて母と同じように毎日毎日お茶会だのパーティ等をしていれば、すぐにまん丸になってしまうだろう。(あな恐ろしや)
いや、誤解しないでいただきたい!別に両親が嫌いなわけではない!
私にやたら『花嫁修業しろ』だの『騎士なんぞ辞めろ』とか言う以外は良い親だと思うし普通に慕ってもいるのだ。
領民に優しいところも尊敬している!
…かと言ってラーラの、美しすぎるあの髪あの瞳、私が生んだと言っても通じまい。くっ
私も体格だけはスリムな方だが、せいぜい、そこそこ美人と言ってもいいかな~?程度である。
仮に私が生んだということにしたとしよう。
私の相手…ラーラの父親が、どんだけ美形な相手だと言い張っても無理があるだろう。
(自分で言うのも悲しいが…)
ましてやルゼルジュ様のように異国になど行った事もない私が銀髪紫眼の恋人が出来る訳もなく、そんな色合いの異国人など、この国で見かけたためしもない!
それにである!
生半可な後見人…伯爵家ごときでは、あの聖なる銀の色を纏う女の子ラーラは守れないだろう。
突如、遺跡の中から卵と思しき魔道具に保護され現れた奇跡の存在。
あの”卵”も剣でも弓でも傷ひとつ付ける事すらできなかった。
今の世界にはない程の加護の魔力が込められていたに違いないのだ。
推測でしかないが、やはり、神々の文明と呼ばれしラビドニアの魔法具によって守られた亡国の生き残りの姫だとしか思えない。
その奇跡の魔道具”卵”によって千年以上の時を眠っていたのだろう。
あの、人ではあり得ないような聖なる輝きを放つ銀糸の髪、どこまでも美しい紫水晶の瞳!
その瞳は見た目の幼さに反して知的さを称えているようにも見えた。
ラーラは、名前以外のことはほとんど分からないと言っていたが、まだ目覚めたばかりで記憶が混濁しているのかもしれない。
そう思ったのには理由がある。
名前を名乗った後の事、ルゼルジュ様がラーラに家族になろうと言った時の事である。
ルゼルジュ様が自分の奥さんは死んでいないと言うと、ラーラは自分も今まさに家族どころか知人すらいない状況なのに大人のルゼルジュ様を気遣う言葉を発したのだ。
「おじしゃま、寂しい?大丈夫?」と!
私と侍女はこの言葉に胸がつまり泣きそうになった。
「まぁ…自分こそこんな見も知らない世界で目覚めて不安でしょうに…」
「なんて優しい子なんでしょう」
私と侍女が、そう言うとラーラは事もなげに言ったのだ。
まだ幼い拙い言葉で…。
「わたしは、もともと、ひとりだから、だいじょうぶなにょ…いたひとが、いなくなる方が可哀想なにょ」と!
この言葉に私も侍女も、大の大人の男のルゼルジュ様も号泣だった!
これが泣かずに、おらりょうか!
三歳かそこらの幼子が!
もともとひとりだと言ったのだ。
それとて記憶の片鱗がよみがえったのか、どうかもわからない。
ただ、きっとそれは本当の事だったのだろうと感じたのだ。
あたりまえのように自分が一人だったという小さな小さな女の子…。
側室の子供との跡継ぎ争いの末に命を狙われたのでは?という私の思いつきな考えも、当たらずとも遠からずあったのではなかろうか?
我が国でも何世代か前までは跡継ぎを巡る暗殺や世継ぎ争いによる紛争はあったという。
我が国は先代の王からは側室という制度自体を廃止した為、そんな事はなくなったが、ご正室が亡くなった後にお子様が、力のある側室に虐げられるなどの話は物語にも実際にも、よくある話だった。
どう推測しても目覚める前の記憶が幸せとも思えない。
そんな少女に無理に記憶を問い詰めたりはすまいと私もルゼルジュ様も考えは同じだ。
それならば、悔しいけれどラーラは、ルゼルジュ様に託すのが一番だろう。
ルゼルジュ様なら、そのお言葉通りにラーラを守りきって下さるだろう。
あの様子なら持てる知識、持てる魔力、そして持てる権力をも使ってラーラを何者からも護りつくすに違いないと確信できた。
だから私は泣く泣くラーラの姉になる野望を捨てた。
そして、ラーラの護衛にしてくれとルゼルジュ様にすがり、拝み倒したのだった。
ラーラの側にいられるなら近衛騎士団なんざ今日にも辞めてやるわっ!
父伯爵にも散々、やめろと言われていたし、ちょうどいいわと思う私だった!
まぁ、父が望むように屋敷に閉じこもったり花嫁修業をしたりはしないけどね。
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