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ジルの話
88.竜を従えし者 人ならざりし者--03 竜達の不安
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『我らが崇める長、ポッティ様の気が消えた!ポッティ様は何処へ?』
『代わりに現れたこの強大な気配。我ら竜族にしかわからぬこの気は一体…』
『長が消えた!そして未だかつてない強大な魔力と竜神族の気配』
『代替わりか?ポッティ様は絶命されたのか?』
『いいや、それならば我ら竜族には解るはず』
『そうとも我ら竜の血は互いに呼び合う事が出来る!繋がっているのだ』
『ではポッティ様は何処へ』『何処へ?』
『『『何処へ!』』』
そう、竜たちは念話で、繋がり自分達の長であるポッティの気が消えた事に動揺していた。
そして新たに表れた強大な魔力と竜神たる気配…。
『『『代替わりだ!』』』
『『『代替わりだ!』』』
それは長である竜神ポッティが死んで新たなる竜神が生まれた事を示した。
代々の竜の長は、前任の竜が死することで代替わりする。
そして現存する竜の中で最も大きい魔力と力を宿すものにそれは突然、伝承されるのだ。
しかし竜たちの前にまだその新たなる自分達の長になる竜神は姿を現していない。
長が死んだという感覚すらない。
この訳のわからない状況に竜たちは動揺していた。
普段、温厚な竜達だが、今は自分達を統率する存在が定かでないことに狼狽えていた。
そして、そんな中、特別クラスの竜の騎乗の授業が行われた。
まずは上級生たちの騎乗だが、既に竜達の異様な雰囲気を感じ取って誰一人進んで騎乗しようとはせず距離をとっていた。
竜達の異常に全く気付かないクレイユ主任教諭はあろうことか、竜に乗りたがらない上級生たちに呆れて竜に触れ合うのすら初心者の一年生たちに騎乗を促してきた。
「さぁ、まずは一年生クラスでも成績トップのフィリア君、さあ、こっちに来て」クレイユがそう言ってフィリアの背を押した。
「「「えっ?いきなりですか?」」」副担任のティムンと上級生達がその無謀さに驚いた。
そして婚約者であるリハルトが、思わず間に入りクレイユ先生に意見する。
「先生、いくら何でも初心者に騎乗は危ないです!竜達も何かいつもよりピリピリしていて」
「何だ何だ?上級生でトップのリハルト君。君までそんな事を?さては心配性なティムン先生に何か言われたのかい?このホワイティなら大人しくて優しいから大丈夫だよ」と、クレイユは大げさにな身振りで両手を挙げて肩をすぼめて見せた。
「いや、それならば、まずクレイユ先生、お手本を見せてあげてもらえませんか?クレイユ先生の雄姿を生徒たちも見たいと思いますよ」と、ティムンが、言うと、
「ええ~?」とクレイユ主任教諭は少しばかり面倒くさそうな声を挙げたが、ティムンは言葉を続けた。
「僕も、竜に詳しいクレイユ先生のカッコいい騎乗姿を見たいなあ。生徒たちもきっと憧れのまなざしで先生の事を見る事でしょうね」と心にもない台詞を…。
そして、ティムンの言葉に、クレイユ先生の方を見ながらフィリアも両手を拝むように組んでコクコクと頷いて「か…かっこいいクレイユ先生が見たいです!」と言った。
美少女の上目遣いなお願いにクレイユもまんざらでもなく、頬がゆるむ。
「え?そ、そう?いや~、しょうがないなぁ。そんなに言うなら」と、クレイユが騎乗用の鞍を竜に取り付けようとした。
ティムンは心の中で呆れた溜め息をついた。
大事な生徒を危険には晒せない。
なぜ、生徒でさえ感じている竜達の様子が感じ取れないのか?鈍すぎる!
クレイユ主任教諭には気の毒だが竜達が、いつも通りだと言うなら自分で責任を持って体感してもらおう。
自己責任でな!と、思った。
その時である。
ホワイティという白い竜は、クレイユが自分の背に触れた途端、怒りの咆哮をあげ、カッと目を見開きクレイユを念で弾き飛ばした。
「ぐぉっ!」とクレイユは、みぞおちを殴られたような声をあげ後方の壁にぶつかり倒れた。
『代わりに現れたこの強大な気配。我ら竜族にしかわからぬこの気は一体…』
『長が消えた!そして未だかつてない強大な魔力と竜神族の気配』
『代替わりか?ポッティ様は絶命されたのか?』
『いいや、それならば我ら竜族には解るはず』
『そうとも我ら竜の血は互いに呼び合う事が出来る!繋がっているのだ』
『ではポッティ様は何処へ』『何処へ?』
『『『何処へ!』』』
そう、竜たちは念話で、繋がり自分達の長であるポッティの気が消えた事に動揺していた。
そして新たに表れた強大な魔力と竜神たる気配…。
『『『代替わりだ!』』』
『『『代替わりだ!』』』
それは長である竜神ポッティが死んで新たなる竜神が生まれた事を示した。
代々の竜の長は、前任の竜が死することで代替わりする。
そして現存する竜の中で最も大きい魔力と力を宿すものにそれは突然、伝承されるのだ。
しかし竜たちの前にまだその新たなる自分達の長になる竜神は姿を現していない。
長が死んだという感覚すらない。
この訳のわからない状況に竜たちは動揺していた。
普段、温厚な竜達だが、今は自分達を統率する存在が定かでないことに狼狽えていた。
そして、そんな中、特別クラスの竜の騎乗の授業が行われた。
まずは上級生たちの騎乗だが、既に竜達の異様な雰囲気を感じ取って誰一人進んで騎乗しようとはせず距離をとっていた。
竜達の異常に全く気付かないクレイユ主任教諭はあろうことか、竜に乗りたがらない上級生たちに呆れて竜に触れ合うのすら初心者の一年生たちに騎乗を促してきた。
「さぁ、まずは一年生クラスでも成績トップのフィリア君、さあ、こっちに来て」クレイユがそう言ってフィリアの背を押した。
「「「えっ?いきなりですか?」」」副担任のティムンと上級生達がその無謀さに驚いた。
そして婚約者であるリハルトが、思わず間に入りクレイユ先生に意見する。
「先生、いくら何でも初心者に騎乗は危ないです!竜達も何かいつもよりピリピリしていて」
「何だ何だ?上級生でトップのリハルト君。君までそんな事を?さては心配性なティムン先生に何か言われたのかい?このホワイティなら大人しくて優しいから大丈夫だよ」と、クレイユは大げさにな身振りで両手を挙げて肩をすぼめて見せた。
「いや、それならば、まずクレイユ先生、お手本を見せてあげてもらえませんか?クレイユ先生の雄姿を生徒たちも見たいと思いますよ」と、ティムンが、言うと、
「ええ~?」とクレイユ主任教諭は少しばかり面倒くさそうな声を挙げたが、ティムンは言葉を続けた。
「僕も、竜に詳しいクレイユ先生のカッコいい騎乗姿を見たいなあ。生徒たちもきっと憧れのまなざしで先生の事を見る事でしょうね」と心にもない台詞を…。
そして、ティムンの言葉に、クレイユ先生の方を見ながらフィリアも両手を拝むように組んでコクコクと頷いて「か…かっこいいクレイユ先生が見たいです!」と言った。
美少女の上目遣いなお願いにクレイユもまんざらでもなく、頬がゆるむ。
「え?そ、そう?いや~、しょうがないなぁ。そんなに言うなら」と、クレイユが騎乗用の鞍を竜に取り付けようとした。
ティムンは心の中で呆れた溜め息をついた。
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なぜ、生徒でさえ感じている竜達の様子が感じ取れないのか?鈍すぎる!
クレイユ主任教諭には気の毒だが竜達が、いつも通りだと言うなら自分で責任を持って体感してもらおう。
自己責任でな!と、思った。
その時である。
ホワイティという白い竜は、クレイユが自分の背に触れた途端、怒りの咆哮をあげ、カッと目を見開きクレイユを念で弾き飛ばした。
「ぐぉっ!」とクレイユは、みぞおちを殴られたような声をあげ後方の壁にぶつかり倒れた。
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