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フィリアの話

37.月の石の通信

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『早速、月の石が大活躍ね!』
 リミィとフィリアは、女子寮寮長のローナ先輩に従い、さっさと自室に入った。
 そして月の石を使って念話で話を始めた。

 腕輪に嵌めている月の石に触れながら相手を思い浮かべ念じるだけで通話ができるのだ。
 フィリアは、この世の中に、こんなに便利なものが存在するなんてと感動しきりだった。

『この月の石って本当にすごいのね』フィリアは、感嘆のため息をつきながらそう言うとリミィの辛口な質問が返ってきた。

『そんな事よりフィリアは、結局どう思ってるの?リハルト先輩がダンとは比べ物にならないほど真面目で良い方なのは分かったけれど』

『そ…それは…もちろん、リハルト様が本当に私のことを想って下さるのだったら…』

『あ・まぁ~い!』

『え?』

『確かにリハルト様は良い方よ?それはジルにも私にも分かったわ!だからって、ここまで拗れたらリハルト様なりのけじめをつけて頂かなければジルも私もフィリアを安心してまかせられないわ!』

『けじめ…ってリハルト様は私のことを好きだったとおっしゃってくれたし…その…私も…』

『寝言は寝てから言うものよ!フィリア!リハルト様には一度愚かにもフィリアの気持ちを勝手に決めつけてフッたと!いう大罪があるのよ!ここは、もう一発、心から反省していただかなくては!あ!あと、あの馬鹿坊っちゃまのダンの方にもこれ以上馬鹿なことを言っていちいち水を差さないよう徹底的に懲りていただかなくては!』

『リ、リミィ…』

『ん?』

『こ、怖いわ!』

『なんで?』

『何でって…そこまでしするなんて、し、執念深いというか…情け容赦ないというか…。リハルト様が、本当に私をあきらめちゃったら私…』

『その時はジルで我慢なさいな!姉の私が言うのも何だけれど、あの子は賢くて優しくて、しかも頼りになる子なのですわ!』

『そ、そんなぁ~…』

『まぁまぁ、とにかく明日の新入生歓迎会でも様子をみてみましょう!私はジルと婚約してくれたほうが将来、フィリアと姉妹になれるのだから、そっちのほうが嬉しいくらいなんですけどね?うふふ』

 リミィが言うようにリミィと姉妹になれるのは嬉しいしジルがとても頼りになるのもわかっている。
 本当に二人とも自分より三つも年下の筈なのに、まるで年上のようである。
 ジルに至っては見た目に反して愛しいリハルト様よりも年上ではないのかと疑うくらいのしっかりさ加減である。

 自分のことを真剣に心配してくれる二人には感謝するが、両想いと分かったのだからもう静かに祝福してほしいと思うフィリアだった。

 しかしながら、確かに、ここまで抉れたら…と言うリミィの言い分も尤もだった。
 家にも婚約破棄や、ジルとの婚約が伝わってしまっている。
 この事が決まった時にはダンへの怒りしかなかったし、まさかリハルトさまが自分のこと好きだなんて思わなかったし…。
 そんな事をつらつらと思った。

 どうしていいかわからないフィリアが黙ってしまうとリミィが言った。

『大丈夫よ!決して悪いようにはならないわ!』と頼もしい言葉をくれたのだった。

 その、頼もしい言葉にフィリアはその日は眠りについた。
 明日の新入生歓迎パーティに期待と不安を抱きながら…。
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