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フィリアの話
021.フィリアの婚約破棄-01
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正直なところ、フィリアは、ダンにがっかりな気持ちでいっぱいだった。
自分の幼馴染みの性根がこれほど腐っているなんてと、驚いた。
これまでは、リハルト様への想いをかかえたままダンと婚約した事への申し訳なさもあり、ダンの憎まれ口を悲しくは感じつつも受け流してきたがダンが自分の事を好きでも何でもないなら罪悪感など感じる必要はないだろう。
ダンが愚かだったおかげでフィリアは、ある意味良かったと思った。
(そういう事なら、私もダンに悪いなんて思わず婚約破棄出来るというものだわ)と!
***
一方、側で成り行きを見ていたハンスはダンに呆れ、フィリアには感心していた。
あんなにも酷い言葉を受けても取り乱す事なく冷静に言葉を返す事の出来るフィリアの事を『小さな淑女』だと思った。
そして、ジル・パリュムが本当にフィリアお嬢様に婚約を申し込んでいて、パリュム家が許すのならフィリアにとっても、その方が断然良いのでは?と思った。
そもそもハンスはホーミット家(ダンの家)の執事ではあるが、ポーネット家とは代々親交が深く、自分の弟がポーネット家の執事をしていることもあり、両家の行き来は常の事で両家に仕えていると言っても差し支えないくらいの親密度だった。
今回、自分がダン坊ちゃまとフィリアお嬢様の付き添いとして屋敷を留守にした分は、弟のロイスが両家を行き来しながら采配を振るっている筈である。
元より伯爵同士は幼馴染で親友だ。
夫人たちも同様に仲が良い。
それほど親密な両家なので、子供達を婚約させたのも当然の成り行きだった。
そして、元々は、フィリアとリハルトが結婚した場合は二人の子供の一人目の男の子をホーミット家の跡取りとして二番目の男の子をポーネット家の跡継ぎにという両家の想定だった。
リハルトとの話が消えてダンとの婚約に切り替わったとき、ダンがポーネット家の次期当主になり、いずれはポーネット伯爵となる予定だった。
つまりは、フィリアとの婚約は、ある意味、次男坊のダンにとっては『棚からぼた餅』とも言える幸運だったのだ。
だが、まだまだ子供のダンには、全く理解できていなかったようである。
その幸運を、ダンは愚かな発言の数々で、たった今、棒にふったのだ。
継ぐ家もないダンは、自分の力だけで地位を築き上げていかなければならない。
それは、伯爵家の子供というだけで、その身分にあぐらをかいて甘えてきたダンにとって容易な道のりではないだろう。
だが、自業自得だとハンスは思った。
それでなくとも、フィリアが顔に傷を負ってからというもの、ダンのフィリアへの態度は酷かった。
フィリアが、それを咎めないのを良いことに言いたい放題でハンスはその度に注意してきたが、その甲斐はなかった。
少し垣間見ただけではあるが、ジル・パリュムという少年はうちの『馬鹿坊っちゃま』とは違い、フィリアお嬢様にも優しく賢そうだ。
まだ七歳で学園への入学が許されるという時点で既に、相当優秀な事が窺える。
しかも、パリュム家には五人もの男子がいると噂には聞いている。
既に跡継ぎの長男は父親のパリュム子爵と仕事をしていて主に国外での買い付けや卸売りの担当をしていて将来有望と言う話だ。
ジル少年が何番目の息子かは知らないが跡継ぎでないのなら、ポーネット家に婿養子として問題なく入ってもらえるだろう。
そうすればポーネット家は、皇族や王族との親交も深く絶大な権力をもつパリュム家と親戚となり懇意になれるし、ポーネット家は万々歳だろう!
自分の仕えるホーミット家にとっては残念だが、ハンスは小さい頃から見てきたフィリアお嬢様の幸せの方が大事だと思った。
フィリアの事もリハルトやダンと同じくらいに大事なのだ。
(ダンの現状には腹を立てているものの…である)
さて、そうなるとあのジルという少年の事、少し観察してみなくては…と、思った。
客観的に見て条件は申し分ないものの本当にフィリアお嬢様に相応しいかどうか、次期伯爵の器があるがどうか…である。
ちなみにハンスの中では、ダンは問題外なくらい次期伯爵に相応しくない。
今のままのあんな『馬鹿坊ちゃま』がそのまま大人になって領地を治めたら領民が可哀想だ。
…そう思うのだった。
自分の幼馴染みの性根がこれほど腐っているなんてと、驚いた。
これまでは、リハルト様への想いをかかえたままダンと婚約した事への申し訳なさもあり、ダンの憎まれ口を悲しくは感じつつも受け流してきたがダンが自分の事を好きでも何でもないなら罪悪感など感じる必要はないだろう。
ダンが愚かだったおかげでフィリアは、ある意味良かったと思った。
(そういう事なら、私もダンに悪いなんて思わず婚約破棄出来るというものだわ)と!
***
一方、側で成り行きを見ていたハンスはダンに呆れ、フィリアには感心していた。
あんなにも酷い言葉を受けても取り乱す事なく冷静に言葉を返す事の出来るフィリアの事を『小さな淑女』だと思った。
そして、ジル・パリュムが本当にフィリアお嬢様に婚約を申し込んでいて、パリュム家が許すのならフィリアにとっても、その方が断然良いのでは?と思った。
そもそもハンスはホーミット家(ダンの家)の執事ではあるが、ポーネット家とは代々親交が深く、自分の弟がポーネット家の執事をしていることもあり、両家の行き来は常の事で両家に仕えていると言っても差し支えないくらいの親密度だった。
今回、自分がダン坊ちゃまとフィリアお嬢様の付き添いとして屋敷を留守にした分は、弟のロイスが両家を行き来しながら采配を振るっている筈である。
元より伯爵同士は幼馴染で親友だ。
夫人たちも同様に仲が良い。
それほど親密な両家なので、子供達を婚約させたのも当然の成り行きだった。
そして、元々は、フィリアとリハルトが結婚した場合は二人の子供の一人目の男の子をホーミット家の跡取りとして二番目の男の子をポーネット家の跡継ぎにという両家の想定だった。
リハルトとの話が消えてダンとの婚約に切り替わったとき、ダンがポーネット家の次期当主になり、いずれはポーネット伯爵となる予定だった。
つまりは、フィリアとの婚約は、ある意味、次男坊のダンにとっては『棚からぼた餅』とも言える幸運だったのだ。
だが、まだまだ子供のダンには、全く理解できていなかったようである。
その幸運を、ダンは愚かな発言の数々で、たった今、棒にふったのだ。
継ぐ家もないダンは、自分の力だけで地位を築き上げていかなければならない。
それは、伯爵家の子供というだけで、その身分にあぐらをかいて甘えてきたダンにとって容易な道のりではないだろう。
だが、自業自得だとハンスは思った。
それでなくとも、フィリアが顔に傷を負ってからというもの、ダンのフィリアへの態度は酷かった。
フィリアが、それを咎めないのを良いことに言いたい放題でハンスはその度に注意してきたが、その甲斐はなかった。
少し垣間見ただけではあるが、ジル・パリュムという少年はうちの『馬鹿坊っちゃま』とは違い、フィリアお嬢様にも優しく賢そうだ。
まだ七歳で学園への入学が許されるという時点で既に、相当優秀な事が窺える。
しかも、パリュム家には五人もの男子がいると噂には聞いている。
既に跡継ぎの長男は父親のパリュム子爵と仕事をしていて主に国外での買い付けや卸売りの担当をしていて将来有望と言う話だ。
ジル少年が何番目の息子かは知らないが跡継ぎでないのなら、ポーネット家に婿養子として問題なく入ってもらえるだろう。
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…そう思うのだった。
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