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はじまり
36.決戦当日--01
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エルキュラート公爵家に魔法使いが現れた翌日のこと…。
イリューリアと、父カルムは王城にむかった。
イリューリアは、親善大使ご一家の案内役として、父は宰相として勤めを果たすべくである。
特にカルムは、今宵は深夜からの闇取引の検挙に向けて今から入念なる打ち合わせの再確認と、準備に忙しい。
そんな、忙しいなか、遅めの昼の食事の時間を潰してカルムは、親善大使一家と語らうイリューリアの所にやって来て話しかけた。
「ご歓談中、失礼します」
「おお、カルム宰相、どうした?今夜の準備で忙しいんじゃなかったのか?」
「ええ、ダルタス将軍(ラフィリアード公爵)、これからまた、今日の内に検挙すべき一族全ての検証に当たります。とにかく闇取引に関わったものは一人たりとも逃す気はないですからね。スピードが命ですね。ただ、今夜は家に戻れそうもないので、娘にちょっと…」
「まあ、宰相様、私たち今から城下にある流行りのカフェに行ってみようと話していたところですのよ?すれ違いにならなくて良かったですわ」と、ラフィリアード公爵婦人ルミアーナが、言うとカルムは、深々とお辞儀をした。
見れば見るほど愛娘にそっくりな…つまりは、亡き妻にも似たルミアーナに微笑まれ思わず顔を赤くするカルムだが、そこは、大人の節度を持って対応する。
(うしろで見ている旦那であるダルタス将軍の目が怖い怖い…。)
「ははは…かたじけないです。ところで、少しばかり娘と、話をさせていただいても?」
「まあ、もちろんですわ」ルミアーナがカルムをイリューリアの隣の席に手招きしてカルムは軽く会釈しイリューリアの隣にすわった。
「イリューリア、今日、わたしは帰れないと思うのだが、一人で大丈夫か?心配だ」
「まぁ、お父様、私はもう小さい子供ではありませんわ。屋敷には家令のジェームズやメイド達もいますのに」
「いや、しかし離れには…」
「まぁ、離れにいるお義母様の事を心配してらっしゃるの?お義母様が、ご心配なら本館の方に来て頂きましょうか?」
「いやいやいや!違う!そんな必要は全くかけらもないから!」
イリューリアは、呪いがとけてもなお、まさか呪っていた張本人が義母だとは夢にも思っていなかったので、この父の反応を不思議に思ったが、照れているのだろうか?と、きょとんとした。
父カルムとしては今すぐにでも真実を告げたいが、まずは義母マルガリータの父や一族を捕えマルガリータの力をそぎ、黒魔石を何とかしてから真実を告げるべきだと考えていた。
今更とはいえ、すべては愛娘の安全を確保した上で、なるべく傷つけずに真実を告げたいのである。
たとえそれが無理でも娘の安全面だけは最低限、確保したいところである。
「まぁ、宰相様、イリューリア嬢がご心配なら私達、今日は王城ではなくてイリューリア様のところへお邪魔してもよろしいかしら?もれなく魔導士のルークもついて来ましてよ?護衛にルークがいれば、魔的な防御は完璧ですし、剣や槍や肉弾戦になっても私の夫、ダルタス将軍に敵う者などおりませんことよ?」と、この国のザッツ将軍をも差しおいて、さらった自分の夫自慢する公爵夫人の言葉にカルムははからずも、めいっぱい納得してしまい大きく頷いた。
ルークは、そしらぬ顔をしながらも、ふっと小さな笑みを漏らしたが、話を聞いていないかのように双子のジーンとリミアの二人をあやしていた。
「おお!ありがたい!それは、なんと有り難いお申し出でしょう!それなら私は心から安心して今日の捕物に集中できます!」カルムは大げさなくらいに感謝の言葉を口にし、ぜひにとこの親善大使一家を招くことを約束した。
あれよあれよと使いの者をだし、屋敷にも客人の泊まり支度をするよう申し付けた。
「まぁっ、お父様!私は小さな子供ではないと言っておりますのにっ!」と少し恥ずかしそうに文句を言うイリューリアだったが、自分の家にルークや天使な子供達が来るのは内心嬉しかった。
もちろんラフィリアード公爵も夫人のルミアーナ様の事も大好きなのでイリューリアに異存がある訳もなく受け入れた。
そして、その日の夜、カルム宰相やザッツ将軍たちは今夜の捕物に向かい、ラフィリアード公爵一家とルークはエルキュラート家の屋敷に泊まり込むこととなったのだった。
イリューリアと、父カルムは王城にむかった。
イリューリアは、親善大使ご一家の案内役として、父は宰相として勤めを果たすべくである。
特にカルムは、今宵は深夜からの闇取引の検挙に向けて今から入念なる打ち合わせの再確認と、準備に忙しい。
そんな、忙しいなか、遅めの昼の食事の時間を潰してカルムは、親善大使一家と語らうイリューリアの所にやって来て話しかけた。
「ご歓談中、失礼します」
「おお、カルム宰相、どうした?今夜の準備で忙しいんじゃなかったのか?」
「ええ、ダルタス将軍(ラフィリアード公爵)、これからまた、今日の内に検挙すべき一族全ての検証に当たります。とにかく闇取引に関わったものは一人たりとも逃す気はないですからね。スピードが命ですね。ただ、今夜は家に戻れそうもないので、娘にちょっと…」
「まあ、宰相様、私たち今から城下にある流行りのカフェに行ってみようと話していたところですのよ?すれ違いにならなくて良かったですわ」と、ラフィリアード公爵婦人ルミアーナが、言うとカルムは、深々とお辞儀をした。
見れば見るほど愛娘にそっくりな…つまりは、亡き妻にも似たルミアーナに微笑まれ思わず顔を赤くするカルムだが、そこは、大人の節度を持って対応する。
(うしろで見ている旦那であるダルタス将軍の目が怖い怖い…。)
「ははは…かたじけないです。ところで、少しばかり娘と、話をさせていただいても?」
「まあ、もちろんですわ」ルミアーナがカルムをイリューリアの隣の席に手招きしてカルムは軽く会釈しイリューリアの隣にすわった。
「イリューリア、今日、わたしは帰れないと思うのだが、一人で大丈夫か?心配だ」
「まぁ、お父様、私はもう小さい子供ではありませんわ。屋敷には家令のジェームズやメイド達もいますのに」
「いや、しかし離れには…」
「まぁ、離れにいるお義母様の事を心配してらっしゃるの?お義母様が、ご心配なら本館の方に来て頂きましょうか?」
「いやいやいや!違う!そんな必要は全くかけらもないから!」
イリューリアは、呪いがとけてもなお、まさか呪っていた張本人が義母だとは夢にも思っていなかったので、この父の反応を不思議に思ったが、照れているのだろうか?と、きょとんとした。
父カルムとしては今すぐにでも真実を告げたいが、まずは義母マルガリータの父や一族を捕えマルガリータの力をそぎ、黒魔石を何とかしてから真実を告げるべきだと考えていた。
今更とはいえ、すべては愛娘の安全を確保した上で、なるべく傷つけずに真実を告げたいのである。
たとえそれが無理でも娘の安全面だけは最低限、確保したいところである。
「まぁ、宰相様、イリューリア嬢がご心配なら私達、今日は王城ではなくてイリューリア様のところへお邪魔してもよろしいかしら?もれなく魔導士のルークもついて来ましてよ?護衛にルークがいれば、魔的な防御は完璧ですし、剣や槍や肉弾戦になっても私の夫、ダルタス将軍に敵う者などおりませんことよ?」と、この国のザッツ将軍をも差しおいて、さらった自分の夫自慢する公爵夫人の言葉にカルムははからずも、めいっぱい納得してしまい大きく頷いた。
ルークは、そしらぬ顔をしながらも、ふっと小さな笑みを漏らしたが、話を聞いていないかのように双子のジーンとリミアの二人をあやしていた。
「おお!ありがたい!それは、なんと有り難いお申し出でしょう!それなら私は心から安心して今日の捕物に集中できます!」カルムは大げさなくらいに感謝の言葉を口にし、ぜひにとこの親善大使一家を招くことを約束した。
あれよあれよと使いの者をだし、屋敷にも客人の泊まり支度をするよう申し付けた。
「まぁっ、お父様!私は小さな子供ではないと言っておりますのにっ!」と少し恥ずかしそうに文句を言うイリューリアだったが、自分の家にルークや天使な子供達が来るのは内心嬉しかった。
もちろんラフィリアード公爵も夫人のルミアーナ様の事も大好きなのでイリューリアに異存がある訳もなく受け入れた。
そして、その日の夜、カルム宰相やザッツ将軍たちは今夜の捕物に向かい、ラフィリアード公爵一家とルークはエルキュラート家の屋敷に泊まり込むこととなったのだった。
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