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初恋の終わり
02.優しいメイド達
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今日も朝からメイド達が私の髪をとかしてくれる。
「お嬢様、本当に、お美しいですわ。なんて綺麗なプラチナの髪でしょう」
ほうっとため息をつきながら私の髪をすくメイドのマーサは私が生まれた頃からこの屋敷に仕えてくれている。
いわゆる身内贔屓というやつだろう。
自分達の仕えるお嬢様が一番だと思いこんでいる…いわゆる親ばかみたいなものなので、私は鵜呑みにしないように心掛けている。
「ほんとうに、それに透けるような肌で…」と若くはつらつとしたメイドのルルーが言う。
若いメイドは上手い事を言う。
若い…といっても私よりは年上の二十歳のルルーは、流行に敏感で気の利くメイドだ。
ひきこもりの青白い顔の私の肌を透けるような肌だなどと…まるで美しいみたいな言い回しで褒めたたえてくれる。
ものは、言いようだと本当に感心してしまう。
うちのメイド達は本当に優しくて…そういう点では私はとても恵まれていると思う。
「本当に、うちのお嬢様は恵まれていらしゃる。こんなに美しいプラチナの髪とアクアマリンのような美しい瞳、そしてきめ細やかな白い肌!女に生まれてこんなにも幸せなことはありませんよ」とマーサが言う。
ルルーも、うんうんと、さも本当だと言わんばかりに頷く。
はぁ…茶番ね…。
何を言っているのかしら?
プラチナとか銀の髪とかいうけれど、暗いところでみたら、まるで白髪ではないかと自分では思う。
アクアマリンだってダイヤやサファイヤ、エメラルドに比べればさほど高価な石でもない。
はっきりしない水色の瞳を綺麗そうにアクアマリンの瞳だなど言ってはくれるけれど…。
私の場合は、自分を卑下したくはないが、全体的に色素が薄いだけだと思う。
それにメイド達が言うほど自分が素晴らしければ、ローディ様に嫌われる事など無かった筈なのだ。
見え透いたおべっかなど…惨めなだけだ。
(まったく困ったものね。冷静に本当の事を言ってくれるのはお義母様だけね…。お父様は親ばかだし、メイド達は優しすぎて…)と眉をしかめるが、すぐにその考えに首を振る。
(ああ、また、私ったら!彼女たちなりに私を励ましてくれようとしてくれているのに…こんな風に思っては駄目よね…。…)
すぐに自分勝手な考えを反省して私はメイド達の優しさに答えようとにっこりと微笑む。
「「はうっ!」」
二人は、こんな貧相な私の笑顔にも本当にあり得ない程、大袈裟に喜んでくれる。
今も顔を真っ赤にして口元をおさえ、涙目まで?
って…ちょっと大袈裟ではないの?と少し焦ってしまう。
(ひょっとして私って哀れまれているのかしら?)
そんな事を考えてしまう。
それほど私を大切にしてくれるメイド達に私は感謝しているもの、出来れば、もう少しほっておいてくれてもいいのだけれど…と思う。
不出来な私が、よほど心配なのだろう。
「お嬢様、ところで、いよいよ来週でございますね?社交界デビュー!」
「そうそう、去年は体調を崩されて…旦那様がそれは落胆されて…お嬢様、くれぐれも体調管理には気を付けてくださいませね?」
「う…そ、そうね」
そうなのだ。
私が去年、仮病など使って社交界に出なかったことは私だけの事ではすまなかった。
父を落胆させ、メイド達は父から私の世話が行き届いていないと叱られ、周りに多大な迷惑をかけてしまった。
さすがに今年は観念して出席しないとまずいだろう。
私のせいで落ち込むお父様も叱られるメイド達も見たくはない。
せめて少しでもみっともなくない様に…。
目立たなくていいからとにかくきちんとした清楚な格好で…。
自分としては嫌われない程度に静かに過ごせればそれで良い訳で…。
「マーサ、ルルー、私、きちんとした格好で、できるだけ目立たないようにしつらえてほしいの」
「まぁ!何てことを!」
「そうですわ!きちんとしているだけでは駄目です!公爵家の体面というものもございます!」
二人がすごい勢いで息巻くので私は不覚にもたじろいでしまった。
「わ…わかった…わかったから…だったら、出来るだけ、そうね…派手なものより上品な装いに…」と、精いっぱいの抵抗をしてみた。
「「かしこまりました」」
二人のメイド達は何か不敵な笑みを浮かべ拳をあげたのだった。
「お嬢様、本当に、お美しいですわ。なんて綺麗なプラチナの髪でしょう」
ほうっとため息をつきながら私の髪をすくメイドのマーサは私が生まれた頃からこの屋敷に仕えてくれている。
いわゆる身内贔屓というやつだろう。
自分達の仕えるお嬢様が一番だと思いこんでいる…いわゆる親ばかみたいなものなので、私は鵜呑みにしないように心掛けている。
「ほんとうに、それに透けるような肌で…」と若くはつらつとしたメイドのルルーが言う。
若いメイドは上手い事を言う。
若い…といっても私よりは年上の二十歳のルルーは、流行に敏感で気の利くメイドだ。
ひきこもりの青白い顔の私の肌を透けるような肌だなどと…まるで美しいみたいな言い回しで褒めたたえてくれる。
ものは、言いようだと本当に感心してしまう。
うちのメイド達は本当に優しくて…そういう点では私はとても恵まれていると思う。
「本当に、うちのお嬢様は恵まれていらしゃる。こんなに美しいプラチナの髪とアクアマリンのような美しい瞳、そしてきめ細やかな白い肌!女に生まれてこんなにも幸せなことはありませんよ」とマーサが言う。
ルルーも、うんうんと、さも本当だと言わんばかりに頷く。
はぁ…茶番ね…。
何を言っているのかしら?
プラチナとか銀の髪とかいうけれど、暗いところでみたら、まるで白髪ではないかと自分では思う。
アクアマリンだってダイヤやサファイヤ、エメラルドに比べればさほど高価な石でもない。
はっきりしない水色の瞳を綺麗そうにアクアマリンの瞳だなど言ってはくれるけれど…。
私の場合は、自分を卑下したくはないが、全体的に色素が薄いだけだと思う。
それにメイド達が言うほど自分が素晴らしければ、ローディ様に嫌われる事など無かった筈なのだ。
見え透いたおべっかなど…惨めなだけだ。
(まったく困ったものね。冷静に本当の事を言ってくれるのはお義母様だけね…。お父様は親ばかだし、メイド達は優しすぎて…)と眉をしかめるが、すぐにその考えに首を振る。
(ああ、また、私ったら!彼女たちなりに私を励ましてくれようとしてくれているのに…こんな風に思っては駄目よね…。…)
すぐに自分勝手な考えを反省して私はメイド達の優しさに答えようとにっこりと微笑む。
「「はうっ!」」
二人は、こんな貧相な私の笑顔にも本当にあり得ない程、大袈裟に喜んでくれる。
今も顔を真っ赤にして口元をおさえ、涙目まで?
って…ちょっと大袈裟ではないの?と少し焦ってしまう。
(ひょっとして私って哀れまれているのかしら?)
そんな事を考えてしまう。
それほど私を大切にしてくれるメイド達に私は感謝しているもの、出来れば、もう少しほっておいてくれてもいいのだけれど…と思う。
不出来な私が、よほど心配なのだろう。
「お嬢様、ところで、いよいよ来週でございますね?社交界デビュー!」
「そうそう、去年は体調を崩されて…旦那様がそれは落胆されて…お嬢様、くれぐれも体調管理には気を付けてくださいませね?」
「う…そ、そうね」
そうなのだ。
私が去年、仮病など使って社交界に出なかったことは私だけの事ではすまなかった。
父を落胆させ、メイド達は父から私の世話が行き届いていないと叱られ、周りに多大な迷惑をかけてしまった。
さすがに今年は観念して出席しないとまずいだろう。
私のせいで落ち込むお父様も叱られるメイド達も見たくはない。
せめて少しでもみっともなくない様に…。
目立たなくていいからとにかくきちんとした清楚な格好で…。
自分としては嫌われない程度に静かに過ごせればそれで良い訳で…。
「マーサ、ルルー、私、きちんとした格好で、できるだけ目立たないようにしつらえてほしいの」
「まぁ!何てことを!」
「そうですわ!きちんとしているだけでは駄目です!公爵家の体面というものもございます!」
二人がすごい勢いで息巻くので私は不覚にもたじろいでしまった。
「わ…わかった…わかったから…だったら、出来るだけ、そうね…派手なものより上品な装いに…」と、精いっぱいの抵抗をしてみた。
「「かしこまりました」」
二人のメイド達は何か不敵な笑みを浮かべ拳をあげたのだった。
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