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番外編--王太子と女騎士の恋
312.王太子と騎士の恋-02-麗しの血族
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リゼラは思った。
血族というのは果てしなく美しい方々だなと。
正直、ルミアーナ様が王太子アクルス様に拉致された事があるという話を聞くまでは、アクルス王子の美しさには憧れの念さへ抱いていた。
見た目だけではない。
アクルス王子の武術の腕前はダルタス将軍に継ぐほどだと囁かれていたせいもあった。
しかし、『ルミアーナ命!』のリゼラにとって、アクルス王太子の『ルミアーナ拉致事件(極秘事項)』は、アクルスを『敵!』とみなすのに十分な理由だった。
アクルス王太子のルミアーナ様への無体を知っていたら、そして助けたアレが、王太子だと知っていたら非常時の混乱に任せてわざと魔物の餌食にしてやったものを!とさえ思う。
(結構苛烈なリゼラである)
たまたま、助けた騎士が、お忍び?でフードをかぶってついてきた王太子だったことから望みもしない伯爵位なんて大層なものを賜ってしまい、嫌でも王族の関わる行事への参加義務は増えるし、正直、ありがた迷惑な事この上ない。
しかも、我が主人であるルミアーナ様に懸想している不埒な王太子!油断ならない!
結婚してもなお未練がましくルミアーナ様を追いかけているのであれば、お手打ち覚悟でぶっ飛ばして刺し違えてでも、その行いを正してみせなければと思っている。
そんな訳で、独自にアクルスの行動をチェックしルミアーナ様と被る予定などはすべてチェックし監視していた。
不穏な動きをしたらトドメをさしてやるわと意気込んでいた。
そう言う意味では伯爵位を賜った事は王太子を見張る上で役立った。
何しろ子爵家令嬢ごとき身分では近寄ることもままならない。
そして、とうとうその視線に気づいていたアクルス王太子から直々に声がかかった。
「ごめん。何だか最近、君からすごく熱い視線を感じるのだが気のせいだろうか?」
「は?冷たい眼差し…の間違いではございませんでしょうか?」とリゼラが答えた。
「あ…やっぱりか?…そうかとも思ったけど」と王太子が人差し指を折り曲げて口元にあてながら、しれっと答えた。
「はい、王太子さまが不埒な事をなさらないよう気を配っているだけですので、ご安心を!」とリゼラは歯に衣着せぬにもほどがある!というほどの言い様で王太子に言葉を返した。
「ああ、君はルミアーナ嬢の側近だものね。そうか…うん、あの事(ルミアーナを拉致った事件)を知っていて私の事を危険だと判断してるんだな?」とアクルスが言うとリゼラは深く頷いた。
「はははっ、正直だな。ルミアーナ嬢の周りの者は本当に気持ちのまっすぐな者ばかりとみえる。いや、羨ましい限りだよ」と笑った。
「心配しなくても大丈夫だよ。私も猛省したから…それより、リゼラ、公式の場以外で君に礼を言えていなかった事が、すっと気になっていたんだ。あの時は私を助けてくれてありがとう」と頭を下げた。
「っ!なっ!王太子殿下っ!王太子殿下ともあろうお方が、そんなに簡単に騎士風情に頭を下げるものではありませんっっ!」とリゼラは焦った。
「なぜ?君は命の恩人なのだかから当然だろう?」と王太子はふんわりと笑った。
不覚にもリゼラはどきっとしてしまった。
とにかく、さすが血族!ルミアーナ様ほどではないにしても王太子もすこぶる美形なのである。
(な、な、な、何なの?もっと嫌な奴かと思っていたのに、こんなに紳士的に謝られたら調子が狂う!)と、リゼラは思った。
「そ、そんなに殊勝そうにされても信用しきれませんわ!ルミアーナ様に仇なす者はたとえ王太子殿下と言えども許しませんので!」と不敬ともとれるツンケンした物言いをしてしまうリゼラである。
ところが、そんなリゼラの失礼な物言いをアクルス王太子は、咎めもせず嬉しそうな顔でにこにこと答える。
「うん、そうだね…じゃあ、このままわたしの事を見張ってくれると助かるよ。何せ結婚したとはいえ、ルミアーナ嬢は元々私の妃候補だった訳だし、あきらめきれないからね」と悪戯っぽく言った。
「なっっ!」
あまりの言葉にリゼラは驚き怒った。
「な、な、な、何をおっしゃっているのですか!そんな非常識な!」
リゼラは、最初、王太子が、大丈夫だ!猛省したからと言っていたのは、何かの聞き違いか?
馬鹿なのか?この王太子は!と耳を疑った。
「うん、そうだよね。でも、ルミアーナ嬢が素敵すぎるのがいけないのだよ。そうは思わないかい?」とアクルスはからかうようにリゼラにウィンクした。
「っ!それは…ルミアーナ様は、この世のものとも思えないほど素敵な方ですけど!」
そう答えながらもリゼラは戸惑う。
どちらかというと脳筋のリゼラには、それが本気なのか冗談なのかわからない。
少し考えて意を決したかのようにリゼラがきっぱりと言い返す。
「わ!わかりました!どんな事があっても、ルミアーナ様には王太子殿下を近寄らせませんわ!見張らせて頂きます!」そうリゼラが答えると王太子はぱっと明るい笑顔で答える。
「ああ、そうしておくれ!わたしもこれ以上ルミアーナ嬢を怒らせるのは本意ではないし、ダルタスに殺されかねないからね」と笑った。
本当にもう、それだけわかってるならルミアーナ様にちょっかいなど出さないでよね?と思うリゼラだったが、アクルスのその言葉が、本当は何を意味しているのか図りかね戸惑った。
分かっている事は、アクルス王太子がルミアーナ様への『不埒な気持ち』を肯定しないまでも否定しなかった事。
彼はすこぶる美しく、そしてとてつもなく危険な生き物だとリゼラは思った。
ルミアーナ様の事は信じているもののうっかり…なんて事があれば許されない!
この、信じられないほどに美しい血族の王太子だけではなく”月の石の主”、ルミアーナ様の名誉までも傷ついてしまう!
気合を入れて、しかもアクルス本人の了承を得て?(むしろ勧められて)王太子を見張ることになったリゼラだった。
----------------------------------------------------------------------
=作者からの一言=
はい、リゼラ、すでに王太子にロックオンされてますね。
リゼラは、気づいてないけど。
あ、遊びじゃないので、ご安心ください。
血族というのは果てしなく美しい方々だなと。
正直、ルミアーナ様が王太子アクルス様に拉致された事があるという話を聞くまでは、アクルス王子の美しさには憧れの念さへ抱いていた。
見た目だけではない。
アクルス王子の武術の腕前はダルタス将軍に継ぐほどだと囁かれていたせいもあった。
しかし、『ルミアーナ命!』のリゼラにとって、アクルス王太子の『ルミアーナ拉致事件(極秘事項)』は、アクルスを『敵!』とみなすのに十分な理由だった。
アクルス王太子のルミアーナ様への無体を知っていたら、そして助けたアレが、王太子だと知っていたら非常時の混乱に任せてわざと魔物の餌食にしてやったものを!とさえ思う。
(結構苛烈なリゼラである)
たまたま、助けた騎士が、お忍び?でフードをかぶってついてきた王太子だったことから望みもしない伯爵位なんて大層なものを賜ってしまい、嫌でも王族の関わる行事への参加義務は増えるし、正直、ありがた迷惑な事この上ない。
しかも、我が主人であるルミアーナ様に懸想している不埒な王太子!油断ならない!
結婚してもなお未練がましくルミアーナ様を追いかけているのであれば、お手打ち覚悟でぶっ飛ばして刺し違えてでも、その行いを正してみせなければと思っている。
そんな訳で、独自にアクルスの行動をチェックしルミアーナ様と被る予定などはすべてチェックし監視していた。
不穏な動きをしたらトドメをさしてやるわと意気込んでいた。
そう言う意味では伯爵位を賜った事は王太子を見張る上で役立った。
何しろ子爵家令嬢ごとき身分では近寄ることもままならない。
そして、とうとうその視線に気づいていたアクルス王太子から直々に声がかかった。
「ごめん。何だか最近、君からすごく熱い視線を感じるのだが気のせいだろうか?」
「は?冷たい眼差し…の間違いではございませんでしょうか?」とリゼラが答えた。
「あ…やっぱりか?…そうかとも思ったけど」と王太子が人差し指を折り曲げて口元にあてながら、しれっと答えた。
「はい、王太子さまが不埒な事をなさらないよう気を配っているだけですので、ご安心を!」とリゼラは歯に衣着せぬにもほどがある!というほどの言い様で王太子に言葉を返した。
「ああ、君はルミアーナ嬢の側近だものね。そうか…うん、あの事(ルミアーナを拉致った事件)を知っていて私の事を危険だと判断してるんだな?」とアクルスが言うとリゼラは深く頷いた。
「はははっ、正直だな。ルミアーナ嬢の周りの者は本当に気持ちのまっすぐな者ばかりとみえる。いや、羨ましい限りだよ」と笑った。
「心配しなくても大丈夫だよ。私も猛省したから…それより、リゼラ、公式の場以外で君に礼を言えていなかった事が、すっと気になっていたんだ。あの時は私を助けてくれてありがとう」と頭を下げた。
「っ!なっ!王太子殿下っ!王太子殿下ともあろうお方が、そんなに簡単に騎士風情に頭を下げるものではありませんっっ!」とリゼラは焦った。
「なぜ?君は命の恩人なのだかから当然だろう?」と王太子はふんわりと笑った。
不覚にもリゼラはどきっとしてしまった。
とにかく、さすが血族!ルミアーナ様ほどではないにしても王太子もすこぶる美形なのである。
(な、な、な、何なの?もっと嫌な奴かと思っていたのに、こんなに紳士的に謝られたら調子が狂う!)と、リゼラは思った。
「そ、そんなに殊勝そうにされても信用しきれませんわ!ルミアーナ様に仇なす者はたとえ王太子殿下と言えども許しませんので!」と不敬ともとれるツンケンした物言いをしてしまうリゼラである。
ところが、そんなリゼラの失礼な物言いをアクルス王太子は、咎めもせず嬉しそうな顔でにこにこと答える。
「うん、そうだね…じゃあ、このままわたしの事を見張ってくれると助かるよ。何せ結婚したとはいえ、ルミアーナ嬢は元々私の妃候補だった訳だし、あきらめきれないからね」と悪戯っぽく言った。
「なっっ!」
あまりの言葉にリゼラは驚き怒った。
「な、な、な、何をおっしゃっているのですか!そんな非常識な!」
リゼラは、最初、王太子が、大丈夫だ!猛省したからと言っていたのは、何かの聞き違いか?
馬鹿なのか?この王太子は!と耳を疑った。
「うん、そうだよね。でも、ルミアーナ嬢が素敵すぎるのがいけないのだよ。そうは思わないかい?」とアクルスはからかうようにリゼラにウィンクした。
「っ!それは…ルミアーナ様は、この世のものとも思えないほど素敵な方ですけど!」
そう答えながらもリゼラは戸惑う。
どちらかというと脳筋のリゼラには、それが本気なのか冗談なのかわからない。
少し考えて意を決したかのようにリゼラがきっぱりと言い返す。
「わ!わかりました!どんな事があっても、ルミアーナ様には王太子殿下を近寄らせませんわ!見張らせて頂きます!」そうリゼラが答えると王太子はぱっと明るい笑顔で答える。
「ああ、そうしておくれ!わたしもこれ以上ルミアーナ嬢を怒らせるのは本意ではないし、ダルタスに殺されかねないからね」と笑った。
本当にもう、それだけわかってるならルミアーナ様にちょっかいなど出さないでよね?と思うリゼラだったが、アクルスのその言葉が、本当は何を意味しているのか図りかね戸惑った。
分かっている事は、アクルス王太子がルミアーナ様への『不埒な気持ち』を肯定しないまでも否定しなかった事。
彼はすこぶる美しく、そしてとてつもなく危険な生き物だとリゼラは思った。
ルミアーナ様の事は信じているもののうっかり…なんて事があれば許されない!
この、信じられないほどに美しい血族の王太子だけではなく”月の石の主”、ルミアーナ様の名誉までも傷ついてしまう!
気合を入れて、しかもアクルス本人の了承を得て?(むしろ勧められて)王太子を見張ることになったリゼラだった。
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=作者からの一言=
はい、リゼラ、すでに王太子にロックオンされてますね。
リゼラは、気づいてないけど。
あ、遊びじゃないので、ご安心ください。
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