目覚めれば異世界!ところ変われば!

秋吉美寿

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ルミアーナの逆襲?

179.ざけんなよ!ルミアーナの逆襲-2

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 トーマや、その他のダルタス崇拝の同期達はダルタスに群がり、奥方であるルミアーナの事も褒めたたえた。

 ルミアーナやリリア。護衛のリゼラもその輪の中にいて楽しそうな彼らの様子にほほ笑んでいる。

「ダルタス!すごく素敵な奥さんだな?妖精のお姫様かと目を疑ったぞ?どうやって知り合ったんだ?この、このっ!」とダルタスの首に腕をからませ頭をぐりぐりする。

「「「ほんと、羨ましいぜ!」」」

「俺達にも自慢の奥さん紹介しろよ」

「「「そうだそうだ!」」」

 と、ダルタスをはやし立てた。
 そんな、周りの声にダルタスもまんざらではないようで照れながらも応える。

「ああ、妻のルミアーナだ」とルミアーナの手をとり側にひきよせる。

「ルミアーナと申します。皆さま宜しくお願いいたしますわ!」
 ルミアーナは少し恥ずかしそうに、にっこりとほほ笑むと周りの男達もほわわっと笑顔になる。
 ルミアーナの花のほころぶような可愛らしくも優し気な雰囲気に皆が悶える。

「「「「う…うわぁあ」」」」

「おまっ!この野郎…ほんとに一体、どうやって知り合ったんだよ」と、同期の一人に突っこまれる。

 本当に尊敬崇拝していたのか?と言うような口のきき方であるが、やっかみ半分なので無論ダルタスは優越感に浸りこそすれ不愉快になるはずもない。

 ふふん…と片方の口端をあげて愉快そうに答える。

「どうやって…って…まぁ、最初は…見合い…だったな。従弟で王太子のアクルスがほんの悪戯心からルミアーナと私の見合いをもくろんでな…」

「「「えええっ?」」」皆、驚きの声を上げたが、一人が思いだしたようにダルタスに尋ねる。

「そう!それだよ!確か、噂の眠り姫は王太子妃候補だったじゃないか?それを王太子がって、よくもまぁ、王太子様はルミアーナ様のような素晴らしい姫を手放したものだな?」

「「「ほんとだよな」」」「「「ありえないよな」」」と皆が口を揃えて言う。

「ああ、それは、アクルスはルミアーナに実際に会った事がなかったから、勝手に見目の悪い根暗な姫だと思いこんでいたみたいでな…。ルミアーナは社交界にも出ていなかったから美しいという噂などあてにならんと思いこんでいたみたいだな。そんな訳でおもしろ半分に俺に押し付けようと見合いをさせんだよ」

「「「「はぁ?何だそりゃ!」」」」と、皆が呆れた声をあげた。

「まぁっ、初めて聞きましたわ。王太子様はそんな事を?」とルミアーナが、くすくすと笑う。

『『『うっっ』』』と周りの男達はそのルミアーナの鈴を転がしたように可愛らしい笑い声と笑顔にまた胸をズキュンと打ち抜かれる。

 全くもって心臓に悪い位の可愛らしさに、ダルタスへの尊敬崇拝も乗り越えて可愛らしい?嫉妬心が湧き上がり、どんどん馴れ馴れしい口利きになってくる。

「「「くそ~っ!」」」
「「役得だよな!」」
「「「羨ましすぎっ!」」」

 そんな無遠慮な言葉の数々だが、別段ダルタスも同期相手に身分を笠に着るつもりなど毛頭ないので全く気にならない。

 むしろ自分の妻の素晴らしさに周りが驚愕するのが楽しいやら嬉しいやら!『ふふん!』なのである。
 楽しそうにダルタスは話を続ける。

「しかも、その見合いには、アクルスもついて来ていてな…」

「「「「ええっ?何で?」」」」
人の見合いに何しに?と、常識ある皆は思った。

「まぁ、普通はそう思うか?そうだな…うん、俺もそう思うな…アクルスは自分の悪戯が成功したか見たかったんだろうな?」という。

「「「「な…何てタチの悪い…」」」」」

「あ~、アクルス王太子殿下は確かにそういうところあったよなぁ~」と、一人が残念そうな感じでそう言うと周りもなんだか納得な顔をした。

「良く言えば、茶目っ気がある?」

「「「いや、良く言っても悪意あるから!」」」

「人の見合いに!しかも、姫が不細工だと思っていて面白がって行ったんだよな?それ」

「それで?見合いに王太子殿下も来てたのに姫様はお前を選んだのか?」

「アクルス殿下は王太子(次期国王)な上に、美形だぞ?」

「「「「「ああ~!感じ悪りぃ~!」」」」」

 と、大騒ぎしている周りにルミアーナがすっとぼけた事を言う。

「あれ?そうだったかしら?王太子殿下なんていたかしら???」とルミアーナがきょとんとする。

「「「「「「「えええええええーっ!?」」」」」」

「ん?」と、ルミアーナが心底不思議そうに、きょとん?とする。
 そして臆面もなく惚気けの爆弾発言を…。

「うふふ、私ってばダルタス様にお会いした時からダルタス様しか目に入らなかったんですもの…あ、そう言えば、お父様に王太子様にもご挨拶しなさいと注意されたような?」と頬を染めながら言う。

「「「「えええええ~?」」」」とまた皆が驚く。

 随分とまた、ちまたの噂とは違うではないかと皆が驚く。
 まさかと思うが姫君のほうが、ダルタスに首ったけなのか??と…

 大概ダルタスに失礼なのだが、あの美形で身分でもダルタスより上位の王太子殿下が目にも入らなかったなんて…と驚いているのだ。

「あ、あのルミアーナ様?」

「はい?」

「あ、あの、ルミアーナ様はダルタスのどこが王太子殿下よりも良かったのですか?」と一人の騎士がダルタスを目の前に勇気ある質問をした。

 ダルタスは、ちょっとだけ『むっ』としたが自分でも、そう思っていたので取りあえずルミアーナの答えを一緒に黙って聞いている。

「ええっ?」とルミアーナが驚いた。

 そんな分かりきったことを聞くのか?と、驚いたのだがこの世界の男達には不思議でしょうがない。
 この世界、特にこの国では女性はとかく綺麗で華奢な者を好むのが普通なのだから。

 だが、ルミアーナの好みは真逆である。

「そんなの!全部に決まってるじゃないですか!?男らしい精悍な顔立ち!鋼のような体躯!漆黒の黒髪に鋭い眼光!頬の傷まで野性的でカッコよくって!もう、理想の方にお会いできたと私は感激したのですわ」と真っ赤になりながら言うルミアーナはそれはもう可愛らしかった。

 周りの男達が『『『うぉぉぉおぅっっ』』』と、胸をかきむしるほどに…。

『頬の傷すら?』

『野性的でカッコいい?嘘だろう?』

『王太子殿下すら目に入らなかった??』

 い!いや、まぁ、俺達もここだけの話だが王太子殿下よりダルタスの方が好きだし尊敬もしてる!
 こいつは男の中の男さ!最高の”漢”それは、分かっている!

 だが、それは俺達だけが分かりあえるダルタスの良さだと思っていたのである。

 ”本当の男の価値”が何たるか女性には分かる筈もないと!

 分かる女性がいるとしたら、それは志を同じくする女騎士で戦場を共に駆け抜け死地を共に潜り抜けてきたような女性でなければいる筈も無いと思っていた。

 よもや、こんなキラキラふわっふわの妖精のようなお姫様が、野生の塊のような見た目のダルタスの素晴らしさをこれほどまでに認めるというのが真に奇跡!と思うほどの驚きだったのである。
(いや、実際、ルミアーナはあんた、騎士より男前なんだけどね?)

「それにダルタス様は国王陛下に一時、私との結婚を反対された時も躊躇無く私をさらいに来て下さって!あの時の事は嬉しくて今でも忘れられませんわ!短い間でしたが駆け落ちして隣国まで行ったんですのよ。うふふ。山小屋での暮らしは楽しかったですよ?川でお魚を捕まえてお料理したり一緒にお掃除したり、本当に楽しくて貴族なんてやめて山小屋で過ごすのもいいなぁなんて思っちゃいましたわ」

 ルミアーナの言葉に一同はまたもや、驚きの声をあげる。

「「「「ええっ!」」」」

「「マジか?」」

 と、男達が驚愕する中で
「好きな方に浚われて…なんて素敵」とリリアだけがうっとりと小さく呟く。

 リリアやリゼラ以外の者は呆れるばかりである。

「「「な、何やってんのダルタス…」」」

「公爵令嬢さらって山に籠るとかありえないしっっ!」と冷や汗をかく。

「それって、一歩間違えば誘拐?」

「「「犯罪じゃん!」」」

「失礼な事を言うな!彼女の御両親や俺の母は、あれは英断だったと高く評価してくれたぞ!?」と、ダルタスが反論するが周りは不納得である。

「「「嘘だろう?」」」

「あら、本当に本当ですわ!父はもともとダルタス様崇拝の人でしたけど母も”王様からの反対すらものともせず本当に素敵な旦那様だ”と大絶賛でしたもの!」と、ルミアーナが、のろけながらダルタスの言葉を肯定する。

「「「ま、まじですか!」」」
 周りの騎士たちは仰天しまくりである。

「ま、まぁ実際、王家主宰の盛大な結婚式だったようですし国王陛下も最終的には許されたって事ですよね?ほ、本当に良かった」と、トーマが呟くが他のものはまだ収まらない。

「まて!山小屋って!ダルタス!お前、公爵令嬢になんて生活を!」と、外野の一人が突っ込む。

「ああ、ルミアーナの料理はそこんじょそこらの王宮料理人より美味かったからな。俺も楽しかったぞ」とダルタスが笑った。

「公爵令嬢に料理させるなんて!っていうか、料理なんて出来るんですかっっ?まじで?」

 と色々、驚いたり呆れたり突っ込みどころが多すぎてもう何をどう突っ込んでいいのかすら分からなくなる一同である。

「うふふ♪私、お料理には元々興味がありましたしダルタス様と一緒にいられるなら、どこでだって楽しくて幸せですわ!動きやすいエプロンドレスだって気にいっておりましたのよ」と満面の笑みである。

「「「公爵令嬢がエプロンドレス?」」」

 と、またもや驚くも、どうやら山小屋でも無理をしていた訳ではないらしい。
 本当に正真正銘、幸せだった様子である。

「「「だあ~、もう」」」

「「「「「ごちそうさまです」」」」」と騎士たちは力なく項垂れた。

 そして、この二人には自分たちの知る常識は通じないと悟った。
 何もかも規格外のようである。

 そして何はともあれ、ダルタスは幸せそうである。
 これまでの彼の不遇は、きっとこの姫に出会うための試練だったのだろう…そう思えるほどである。更にはおつりが来るくらいじゃないか?と思える程だ。

 そして何より奥方のルミアーナ姫も幸せそうだ…。

 最高に綺麗で可愛いダルタスの奥方は、ずいぶん変わったお方らしいが、そこも含めて騎士の皆からは最高に素敵に見えた。

 身分どうこうではない。
 美しさだけだけではない彼女のひたむきで純粋な人柄が好ましい。

 そんな彼女が自分たちの認めるダルタスを心から愛していると知り嬉しくもあり、めちゃくちゃ羨ましくもある。

 そして、ダルタスを侮っていた愚か者達は遠巻きにその幸せそうな様子に歯噛みして悔しがり、その中に入れない淋しさを呪うのだった。
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