目覚めれば異世界!ところ変われば!

秋吉美寿

文字の大きさ
上 下
147 / 227
ところ変われば次期公爵?

147.三者面談…反省です

しおりを挟む
 さて、翌日、各学科での三者面談である。
 父上アークフィル公爵と母上ルミネ様と僕の三人での面接なんて、それこそ試験より緊張しまくりである。
 今日はルミアーナ姉さまはお留守番である。

 まずは、学士学科である。

 「さすがは、公爵家ご嫡男でいらっしゃる!読み書きは勿論ですが、とにかくティムン君の計算力は、すばらしい!」と学士学科のタタン・トプールル先生が鼻息を荒くして父上、母上に訴えている。

 タタン先生は広めのおでこが印象的な丸眼鏡のおじいちゃん先生である。

 「まぁ、そんなにですの?」と母上様は嬉しそうに答えた。
 「でも初等部の計算など大した問題ではなかっただけでは?」と、父上様が言った。

 僕もそう思う。

 「いえいえ、じつは、五十問の問題のうち四問だけ大人でも難しい三桁と四桁の足し算と引き算をいれていたのですよ」

 「ええっ?三桁と四桁の?」と父上も母上も驚いているが、姉さまから教えてもらった”ヒッサン”を使ったら簡単だったし何がそんなに難しいの?という感じである。
 (この世界では、”ひっ算”も”九九”も知られていないがルミアーナもそれを教えられたティムンもその事を知らないので、当たり前の事だと思っているのだった)

 僕がきょとんとしているとタタン先生は興奮気味に早口で

「しかも全問正解でした!時間も恐ろしく早く終わり、もしや何かズルをしたのかと疑ってしまったほどですが、あの時は私も立ち会っておりましたし魔法も使う事の出来ない結界を張った試験会場でしたしありえません。スラスラと悩みもせずに計算を解き、与えられた時間の半分にも満たない時間で試験を終えたのです。最初は適当な答えを書いたのかと疑ってしまったくらいです!」とまくし立てた。

 「アークフィル公爵閣下!ぜひ、ご子息を学士学科に!彼は、天才ですぞ!末は博士か大臣か」と訴えた。

 普通の親なら舞い上がってしまいそうな賞賛の言葉にもアークフィル公爵夫妻は嬉しそうな笑顔でありながらも流されること無く冷静に対応した。

「先生、息子が”自分は賢い”と勘違いしてはいけないので、それくらいで勘弁してださい。息子を望んでくださるお気持ちは嬉しいのですが計算が人より出来たからと言っても本人が望まなければ、賛成できませんし。息子は今回、魔法学科と騎士学科の方でも試験を受けておりまして…その結果も確認して本人に選ばせたいと思います」と静かに答えた。

 さすがはルミアーナ姉さまの親だと内心思った。
 はい、僕、ちょっとだけ、僕は特別なのかと勘違いしそうになっちゃいましたね…反省です。

 ***

 そして次に、魔法学科での面談では魔法博士と呼ばれるキューリェ・ハンス先生が対応してくださいました。
 キューリェ先生は黒く長い髪に深い藍色の瞳をもつ美貌の先生でです。
  男の人なのにとても綺麗な人です。
  心なしか母上様もちょっとだけうっとりしているようにみえました。

  「ティムン君の中には大変温かい気と穏やかで安定した魔法力を感じます。修練を積むことによって大地に恵みをもたらすような魔法を生み出せる可能性が大きいと感じております。暴走するような波動ではないので保護しなければいけない対象ではありませんが、魔法学科としては将来有望な魔法使いの卵としてお預かりできればと思います」と穏やかに言われました。

  「ここでもですか?あたら、息子を褒め挙げるのはやめて頂きたいものです。息子はまだ子供です。今からそんなに煽てられてはろくな大人になりません」と父上様は渋い顔をなさいました。

 はい…父上様、僕またちょっと、浮かれそうになっちゃいました。
 反省です。

 よく考えたら綺麗で強くて優しい、月の石の精霊さえ従えているルミアーナお姉さまと比べたら、僕なんて何という事もないただの石ころのようなものでした。
『スミマセン』と心の中で謝る僕なのです。

 くすっとキューリェ先生はほほ笑まれ穏やかに言いました。

  「何も褒めて等などおりませんよ?公爵閣下ほどの方がわからぬともおもえませんが、謙虚も過ぎると嫌味になりますのでお気を付けくださいませ」と、まるで父上様をたしなめるような物言いをしました。

  「相変わらず静かに嫌味な奴だな!まぁ、いい。もしティムンがここを選んでもやっていけると?」

  「全く問題ないでしょう。私が保証いたしましょう」とキューリェ先生は口角をあげ、自信たっぷりで、ちょっとだけ悪そうな笑みを父上様に向けました。

  二人のやり取りをみて僕は気づきました。
 なんだ、二人は知り合いなんだ!
 しかも親しい…。

  「まぁ、本人次第だがな!そっちに行くことになったら頼む。さぁ、ティムン次は騎士学科だぞ!」と立ち上がり僕の背を押した。

  「いつでも、お待ちしていますよ」とキューリェ先生は僕に、にっこり微笑んで手を振ってくださいました。

  母上様も軽く会釈をしてにっこりとほほ笑んでから僕の手を引いて下さいました。
 いよいよ次は最後の騎士学科での面接です。
しおりを挟む
感想 115

あなたにおすすめの小説

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

処理中です...