目覚めれば異世界!ところ変われば!

秋吉美寿

文字の大きさ
上 下
105 / 227
ところ変われば女子高生!

105.拓也と大悟の戸惑い

しおりを挟む
 美羽と亮子が去った後の校庭で拓也と大悟は、謝るつもりが美羽に謝られてしまったことで少なからず戸惑っていた。

 正直なところ、拓也も大悟も美羽は拓也のことが好きなんだろうと思っていたのである。

 そして、もの凄くあの事故の責任を感じていたのだから…。

 大悟は自分が冷やかしたせいで…と。
 そして拓也は自分が『あんな男女…』などという失言をしたせいで…と本気で思っていたのだ。

 そう思うのも仕方がないほどのタイミングで美羽は目に涙をいっぱいためて走り出し、そしてふらつき階段からころげおちたのだから…。

 それが全くの勘違いだったなんて…。(結構、普通に恥ずかしい勘違いだ)

 大悟は、ほっと胸をなでおろしたものの、拓也にしてみたら大困惑である!

「は…恥ずかしすぎる…」と顔を真っ赤にしてしゃがみこむ。

「あ…あああ~、でも、まぁ何だ…その、よかったじゃねぇか?俺達のせいじゃなかったんだしさ?」と大悟が慰めの言葉をかけた。

「う…ううっ…まぁ…そうなんだけどな…恥ずい…」と拓也は呻きながら答える。
 自分に惚れていると思って、どうやって断ろうかとか好きになる努力をしようだなどと思っていたのだから確かに、めちゃくちゃ格好悪い。

「何だよ?ひょっとして、がっかりとかしてるのか?」という大悟の言葉に拓也は図星をさされたようにぎょっとした。

「ま、まさか」

「だよな?」と大悟が確認するように言う。

「あ、ああ!」拓也のこの返事に大悟はにやっと片方の口角をあげて悪戯っぽく笑った。

 そして…、
「だけど、俺な。実はさっき、神崎の事ちょっといいなぁ~って思ったんだよな」と大悟が思いもかけない言葉を発した。

「は?何言ってんだ?」

「だって、最近の神崎って、ほんとに別人みたいに大人しくて弱々しくって思わず守ってやりてぇ~って、感じに見えるんだよな」

「そんなの、今は記憶が曖昧なせいだろ?記憶が戻ったら、また元の男前な女に戻っちまうって!」と拓也は言い切る。

「だってさ、記憶だって戻るかどうかわかんないだろ?」

「え?」

「聞いたんだけどさ、記憶喪失って一生治らないこともあるらしいんだよ。あ、もちろん戻ることもあるけどさ…それにさ、実は今の神崎が本来の神崎かもしれないじゃないか?」

「は?なんだ、そりゃ?」

「つまりさ!今の神崎は一年以上も眠り続けていたせいで、筋力もおちてるし学校へも父兄の送り迎え付きだろ?体育だって休んでるし…部活だってやってないだろ?」

「まぁ、そりゃな。でもそれが何で本当の美羽だっていうんだよ?」

「だからさぁ、周りの男子からも”男女”とか女子からは”王子様”とか言われて崇め奉られちゃってさ!前の神崎はに合わせざるをえなかったんじゃないか?ってて事だよ」と大悟が力説した。

「って…?つまり、記憶もなくなった今の”素の神崎美羽”が本当の美羽の姿だっていうのか?」

「それだよ!」びしっと人差し指をたてて拓也の目前につきつける大悟。

「ないないない!あいつは根っからの男前だって!幼馴染の俺が言うんだから間違いないって!」と拓也がむきになる。

「そういう思いこみが神崎を追い詰めたとか思わない訳?少なくとも今の神崎だって本当の神崎な筈だせ?」

「そ、それは…そうかもしれないけど」

「まぁ、いいさ。俺は神崎に好意を持ってる!お前は、今の神崎にも前の神崎にも幼馴染以上の感情はない!それでいいな?」

「え?」

「”え?”じゃねぇよ、俺が万一、神崎と付き合うようになっても後から文句いうなよ?」

「はぁ~?」

「はぁ~?じゃねぇっつうの!まっ!そう言うことだから!じゃあな!」と大悟は自分が言いたい事だけ言うとさっさと先に教室に走っていってしまった。

 こっちの反論を聞く耳は無いようである。

 一人取り残された拓也も教室に戻ろうと歩き出す。
 弁当、喰い損ねたな…とぼんやり思いながらも別の考えが口をつく。

「”今の美羽も本当の美羽”…か…」

 そして、思った。
「文句なんて…言うにきまってるだろ?」と苦い顔をして呟き、卓也はとぼとぼと教室までもどるのだった。

 拓也はこの時、初めて自分の中にある『幼馴染以上の気持ち』を意識したのだった。
しおりを挟む
感想 115

あなたにおすすめの小説

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

処理中です...