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ところ変われば女子高生!
97.ルミアーナの記憶と美羽の記憶
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神崎美羽…それが私の現在の名前らしい。
年齢は十六歳…眠りについた時の私、ルミアーナと同じである。
つまり、一年も眠りについていたというなら私は十七歳になっているという事だろうか?
今までいた世界と今いる世界があまりにも違うため私はとにかく沈黙を守ることにした。
どうやら、この世界には魔法というものは空想でしか存在しないらしい。
私が眠り続けていたにも関わらず死なずにすんだのは、魔法でも祈りでもなくあの白い部屋、病院という医術の粋をこらした建物で手当てをした後、点滴という食事の代わりに体に栄養を送る液体を注ぎ続けてもらっていたかららしい…。
私がルミアーナであった時の世界では…これまで幾度となく命を狙われてきた。
しかし、ここでは、これまでのような命の危険は感じない。
殺意も悪意も全く感じないのだ。
まわりにいる全ての人間が自分を心底助けようとしているのが感じられる。
病院という白い箱のような建物にいた人々も家族だと名乗る人たちも…。
ラフィリアでは大国の公爵令嬢として生まれ、望みもしない王太子の妃候補として常に何かしらの陰謀に命を脅かされてきた。
召し使いすら新参ものには警戒してきた。
誰も信じられない世界で生きてきた。
もしかして自分はじつは既に死んでしまったのだろうか?
混沌とした記憶をたどり寄せていく…。
そうだ…私(ルミアーナ)は屋敷の自室の中で倒れたのだ。
外に出ればいつも誰かにつけられているような、じっと見られているような気がして部屋に引きこもってばかりだった。
自室に閉じ籠る日々の中で気持ちがが安らぐ効果があるからと香りのよいお香を焚き染めて静かに読書にふけるのが日課となっていた。
その日は、いつも側にいてくれた侍女のフォーリーが、里帰りの為いなかった。
見慣れない召し使いが部屋をしつらえて、お香を炊いて部屋をでた。
徐々にゆっくりと木の実のような芳しい香りが毒と共に部屋に広がったのを不思議には思わなかった。
代わりにしては気のきいた召し使いの心遣いと怪しむ事もなかった。
閉じ籠ってばかりの私を心配して様子を見に来た母が、鳥籠にいた小鳥が死んでいる事に気づき悲鳴をあげた。
母は慌てて私にかけよってきたけれど、私はもうその時には朦朧として目もかすみ、母の顔すらはっきりと見えなかった。
また命を狙われたのだと気づき遠退く意識の中…。
またか
と思った。
心底思ったのである
こんな世界は嫌だ!と
そして暗転…。
私(ルミアーナ)は意識を失ったのである。
自分が想像していた天国とは違うけどじつはここは死んだものがたどりつく、いわゆる天国なのだろうか?とも思った。
なぜか、まわりの人間は、自分のことを「神崎さん」とか「美羽」とか呼ぶ。
自分はこの世界では神崎美羽というらしい事が分かった。
黒い髪、黒い瞳の人が殆んどで、たまに元の自分のように金色の髪、白い肌の人間も見かけるが、外国人のようで何をしゃべっているのか全然わからなかった。
「美羽?体が大丈夫なら少し外にでてみる?もしかしたら何か思い出せるかもよ?」
静と名乗るやさしそうなその女性はどうやら私(美羽)の姉らしい。
私はこくりと頷き、手をひかれて外に出てみる。
煉瓦でも石造りでもない簡素な建物、きちんと整備された町並。
車と呼ばれる馬も御者もなく走る乗り物…。
不思議なことに見るもの触れるもの全てが初めてで知らないものの筈なのに、徐々にまるで思い出すかのように美羽の世界が自分の記憶に混じりあっていく。
例えば初めて会った美羽の家族。
なぜか不思議なほどすんなり受け入れられた。
ああ、この人は父だ。
母だ。
姉だ…と…。
出逢う人々と美羽の関わりがまるで自分の事のようにじんわりと思い出すような感じで自分の中に馴染んでくるのである。
ラフィリルの父や母しか自分に家族はいないはずなのに…。
見たこともないはずの文字はなぜか読めるし、見たこともないはずの機械?電話やテレビ…ひとつずつ見るたびに使い方を理解できた。
ラフィリルにはそんなものはなかったのに…。
美羽の記憶が何かを見るたびに呼び起こされ段々と私はこの日本という国のこの世界に溶け混んでいき、私はは美羽としての自分を徐々に受け入れていった。
そしてこの世界での自分…神崎美羽は、高校生ながら柔道と弓道の部活を掛け持つ武闘派女子高生だった。
家が空手道場と言うこともあり(しかしながら美羽の高校には空手部というのはなく、とりあえずやってみたかった弓道部に入り、それなりに成績も残していたものの先に入学していたひとつ年上の従姉に強引に助っ人を頼まれ柔道部にも在籍させられていたのである。)
武闘派といっても本人は、
あくまでも本人的にはだが…。
自分のことを、至って普通の女子高生、夢見る乙女だと思っていたようだ。
ただ、全国大会にまで、ついうっかり進出してしまった美羽にまわりの男子達は美羽を全く女子扱いしてくれなかったようだ。
それどころか、女子達からはボディーガード扱い!
それも仕方のない事かもしれない。
なにせ、美羽は空手は三段、柔道は二段、弓道と剣道も、それぞれ初段の腕前だったのだから。
「美羽様親衛隊」なる訳のわからない女子達によるファン集団までいたらしい。
まあ、通学途中に変質者が現れても瞬殺でぶち倒しお縄にしてしまう頼もしすぎる美羽だったから女性陣からも人気だったのだろう。
ルミアーナはこれまでの自分とのあまりの違いになぜ自分が美羽になっているのか不思議でならないが、美羽のたくましさや健康的な美しさはルミアーナにとっての憧れでもあった。
いきなり同じようにはいかないけれど、一年も眠り続けていたことで以前と変わったところがあったとしても後遺症として受け止めてもらえているようで、中身が私である事に誰も気付いていないようだった。
年齢は十六歳…眠りについた時の私、ルミアーナと同じである。
つまり、一年も眠りについていたというなら私は十七歳になっているという事だろうか?
今までいた世界と今いる世界があまりにも違うため私はとにかく沈黙を守ることにした。
どうやら、この世界には魔法というものは空想でしか存在しないらしい。
私が眠り続けていたにも関わらず死なずにすんだのは、魔法でも祈りでもなくあの白い部屋、病院という医術の粋をこらした建物で手当てをした後、点滴という食事の代わりに体に栄養を送る液体を注ぎ続けてもらっていたかららしい…。
私がルミアーナであった時の世界では…これまで幾度となく命を狙われてきた。
しかし、ここでは、これまでのような命の危険は感じない。
殺意も悪意も全く感じないのだ。
まわりにいる全ての人間が自分を心底助けようとしているのが感じられる。
病院という白い箱のような建物にいた人々も家族だと名乗る人たちも…。
ラフィリアでは大国の公爵令嬢として生まれ、望みもしない王太子の妃候補として常に何かしらの陰謀に命を脅かされてきた。
召し使いすら新参ものには警戒してきた。
誰も信じられない世界で生きてきた。
もしかして自分はじつは既に死んでしまったのだろうか?
混沌とした記憶をたどり寄せていく…。
そうだ…私(ルミアーナ)は屋敷の自室の中で倒れたのだ。
外に出ればいつも誰かにつけられているような、じっと見られているような気がして部屋に引きこもってばかりだった。
自室に閉じ籠る日々の中で気持ちがが安らぐ効果があるからと香りのよいお香を焚き染めて静かに読書にふけるのが日課となっていた。
その日は、いつも側にいてくれた侍女のフォーリーが、里帰りの為いなかった。
見慣れない召し使いが部屋をしつらえて、お香を炊いて部屋をでた。
徐々にゆっくりと木の実のような芳しい香りが毒と共に部屋に広がったのを不思議には思わなかった。
代わりにしては気のきいた召し使いの心遣いと怪しむ事もなかった。
閉じ籠ってばかりの私を心配して様子を見に来た母が、鳥籠にいた小鳥が死んでいる事に気づき悲鳴をあげた。
母は慌てて私にかけよってきたけれど、私はもうその時には朦朧として目もかすみ、母の顔すらはっきりと見えなかった。
また命を狙われたのだと気づき遠退く意識の中…。
またか
と思った。
心底思ったのである
こんな世界は嫌だ!と
そして暗転…。
私(ルミアーナ)は意識を失ったのである。
自分が想像していた天国とは違うけどじつはここは死んだものがたどりつく、いわゆる天国なのだろうか?とも思った。
なぜか、まわりの人間は、自分のことを「神崎さん」とか「美羽」とか呼ぶ。
自分はこの世界では神崎美羽というらしい事が分かった。
黒い髪、黒い瞳の人が殆んどで、たまに元の自分のように金色の髪、白い肌の人間も見かけるが、外国人のようで何をしゃべっているのか全然わからなかった。
「美羽?体が大丈夫なら少し外にでてみる?もしかしたら何か思い出せるかもよ?」
静と名乗るやさしそうなその女性はどうやら私(美羽)の姉らしい。
私はこくりと頷き、手をひかれて外に出てみる。
煉瓦でも石造りでもない簡素な建物、きちんと整備された町並。
車と呼ばれる馬も御者もなく走る乗り物…。
不思議なことに見るもの触れるもの全てが初めてで知らないものの筈なのに、徐々にまるで思い出すかのように美羽の世界が自分の記憶に混じりあっていく。
例えば初めて会った美羽の家族。
なぜか不思議なほどすんなり受け入れられた。
ああ、この人は父だ。
母だ。
姉だ…と…。
出逢う人々と美羽の関わりがまるで自分の事のようにじんわりと思い出すような感じで自分の中に馴染んでくるのである。
ラフィリルの父や母しか自分に家族はいないはずなのに…。
見たこともないはずの文字はなぜか読めるし、見たこともないはずの機械?電話やテレビ…ひとつずつ見るたびに使い方を理解できた。
ラフィリルにはそんなものはなかったのに…。
美羽の記憶が何かを見るたびに呼び起こされ段々と私はこの日本という国のこの世界に溶け混んでいき、私はは美羽としての自分を徐々に受け入れていった。
そしてこの世界での自分…神崎美羽は、高校生ながら柔道と弓道の部活を掛け持つ武闘派女子高生だった。
家が空手道場と言うこともあり(しかしながら美羽の高校には空手部というのはなく、とりあえずやってみたかった弓道部に入り、それなりに成績も残していたものの先に入学していたひとつ年上の従姉に強引に助っ人を頼まれ柔道部にも在籍させられていたのである。)
武闘派といっても本人は、
あくまでも本人的にはだが…。
自分のことを、至って普通の女子高生、夢見る乙女だと思っていたようだ。
ただ、全国大会にまで、ついうっかり進出してしまった美羽にまわりの男子達は美羽を全く女子扱いしてくれなかったようだ。
それどころか、女子達からはボディーガード扱い!
それも仕方のない事かもしれない。
なにせ、美羽は空手は三段、柔道は二段、弓道と剣道も、それぞれ初段の腕前だったのだから。
「美羽様親衛隊」なる訳のわからない女子達によるファン集団までいたらしい。
まあ、通学途中に変質者が現れても瞬殺でぶち倒しお縄にしてしまう頼もしすぎる美羽だったから女性陣からも人気だったのだろう。
ルミアーナはこれまでの自分とのあまりの違いになぜ自分が美羽になっているのか不思議でならないが、美羽のたくましさや健康的な美しさはルミアーナにとっての憧れでもあった。
いきなり同じようにはいかないけれど、一年も眠り続けていたことで以前と変わったところがあったとしても後遺症として受け止めてもらえているようで、中身が私である事に誰も気付いていないようだった。
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