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それからのお話
82.眠り姫と月の石
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関所を越えてダーナ・ハースノアとミアは一路、ドレス専門のお店ポララに向かった。
いつも、周りを驚かせてばかりのミアだったが今日は自分が驚かされる側だった。
たまたま、立ち寄り式を結婚式をあげた小さな教会。
そこで、たまたま出会った親切なお婆さんが、なんと!ジャニカ皇国おかかえの魔法使いで、しかも、おばあさんじゃなくて『お姉さん』だったなんて驚きしかない。
とたんに不正入国した自分達は捕らえられるかもしれないと身構えたが、そんなつもりはさらさら無さそうである。
「あの…ダーナ様?とお呼びすれば宜しいですか?」と、ミアは、ちょっと警戒しながらも聞いてみた。
「やだ、もう!急にかしこまらないでよ。私の事も呼び捨てで良いから!ダーナで良いわよ」と、ダーナが、笑い飛ばす。
「や…でも、なんか皇国おかかえの魔法使い様って、とっても偉い方なんですよね?」
「あら、公爵令嬢だって、相当な身分じゃなくて?」
ダーナはそんな風に言いつつ軽くウィンクする。
「え?えと…えーっ!」
ばっ!ばれてる!ばれてる!むっちゃ、ばれてるーっ!と更に驚き焦るミアだった。
「お願いっ!内緒にしてくださぁい!」
「馬鹿ね!誰にも言う訳ないじゃない!こんな、おもしろ…っと…こほん…いえ、きっと何か事情があるのでしょう?私はミアの事、気にいったから助けてあげるわよ」
「い、い、一体いつから私の事を?」
「そうねぇ、最初に見た瞬間からかしらぁ?」と、事も無げに言う様は、まるで悪戯に成功した子供のように嬉しそうに見える。
「一緒にいたのは、ダルタス将軍よねぇ?あの頬の傷にあの鋼のような体躯、そしてあの隙のない所作…誰の目をごまかせても、私の目はごまかせないわねぇ?」
「うわぁぁぁぁ」
頭を抱えて唸る私を見る目が、微笑ましげなのが何か気恥ずかしくて嫌だぁー!
「まあ、もともと"鬼将軍"や"眠り姫"の噂は、この国にまで届いていたからねぇ…有名人は辛いわね?ほほほっ」
「う…ううう…」
絶対この人、面白がってる
「まあまあ、そう唸りなさんな。ほら、着いたわよ。ドレス専門のお店ポララ!」
そう言うと、ダーナは、手綱を引いて、荷馬車をとめた。
馬が「ひひん」と鳴いて、立ち止まる。
「え!?あ、ほんとだ」
二人で、お喋り?しながら来たせいか、あっという間についてしまった。
ダーナは颯爽と荷馬車を降りると何やらしゅっと手を払う仕草をした。
すると馬は荷馬車ごと店の横に避けて止まり大人しく待っている。
ミアは、これも魔法だろうか?月の石といい、魔法といい何かと便利だなぁと感心してしまう。
そして、色々とバツが悪いやら焦るやらでハラハラしまくりだったが、ダーナが、ちゃんとお店まで連れてきてくれた事に、ほっとした。
ダーナ様って、いい魔法使いさんみたい…?
とりあえず、美羽の時の記憶にある童話の"白雪姫"や”眠れる森の美女”とかのお話に出てくるような怖い魔法使いでは無い事にほっとする。
でも私とダルタス様って隣の国にまで噂になってたなんて、すごい…と、色々考えていたら、馬の鳴き声をきいてか、店の中から人が出てきた。
ブティックの店員ポーラである。
「まぁっ!ルミアーナ様っ!えっっ?それにダーナ様?一体なぜお二人が一緒に?」とポーラが眼鏡を片手で持ってよく見直すようにしながら不思議そうに尋ねるが、それはミアにだってわからない。
誰かわかるなら教えてくれと言いたいミアであった。
思わず遠い目をしてしまう。
「ほほほっ!たまたま、お二人が私のいきつけの教会で結婚式をあげてね!私はお二人の結婚の証人になったのよ。」
い、いきつけって…喫茶店か何かですか?とつっこみたくなる。
そうか、まぁ、そうだよね?たまたまだよね?だけど、たまたまにしては、すごい確率で、すごい人に遭遇しちゃったわと思うミアである。
ダーナにしてみれば「それはこっちのセリフだわ」という感じだろうが…。
「ダーナ様、ルミアーナ様、とにかく中へどうぞ。ちょうどお客も切れて一服しようかと思っていたところなのです。お茶でも入れます。外では何ですから宜しければどうぞ」とポーラが招き入れてくれた。
三人は、ポーラの用意したお茶とお菓子を頂きながら一息ついた。
「ポーラ、その節は本当にありがとう。お陰で無事にジャニカ皇国に入り小さな教会で結婚式も挙げる事ができたわ」
「まぁ、それは良かったですわ!おめでとうございます。でも今日はまた一体なぜ、こちらに?まだ王都に戻られる訳ではございませんよね?」とポーラが訪ねた。
「それが、私、預かってくれたドレスのポケットに大切な物を忘れてしまって…。」
「ポケット?ああ!あの綺麗な宝石の事ですね?ドレスと一緒に保管しておりますよ」
「良かったぁ!やっぱり私、ポケットに入れっぱなしだったのね!ここに無かったら、どうしようと内心ヒヤヒヤしてたのよ!預かってくれて、ありがとう」
全開の笑みでお礼を言うと、ポーラが何故か赤面する。
う、うーん、我ながら美少女の笑顔って、スゴいな…。
私、この世界で目覚めてからこっち、美羽の時より絶対、顔で得してるよね!と、思う。
「あら、宝石?あんな丸太小屋を大喜びで住もうとする位だからそういうのには、興味無いのかと思ってたんだけど、何?ああ、そうか、当面の生活費に売るとか?」と、ダーナが、聞いてきた。
「いいえ、この石は私にとって特別な石で、強力な御守りのような石なんです」
「まあ、そうでしたか!金庫に一旦しまってありますので直ぐに出して参りますわ!」とポーラが席をたった。
「え?お守り?…そして石?」と、一瞬、戸惑ったようにダーナがミアに聞いてくる。
「ええ、すごく大切なものなのに私ったら駆け落ちする事になって気が動転していたみたいで…」
「ち!ちょっと、待って!それ、まさか”月の石”とか言うんじゃないでしょうね?」
「え?すごぉい!魔法使いってそんな事までわかるんですか?」と素直に驚くミア。
「いや!いや!いや!まずいわ!そら、まずいわぁ!」と、後ずさる。
「え?何が…?」ミアはきょとんとする。
「いやいやいや!まずいでしょうよ!”月の石”ったら、あなた、血族以外の魔法使い!つまり私らから見たら魔封石って呼ばれてるくらいで…」と言いかけた時にポーラが石を持ってきた。
あ、そう言えば、何か、前にルーク王子がそのような事を言ってたような…とミアも思い出す。
「これにお間違えございませんか?」と、ポーラが石をミアに見せると同時に眩しい位に光りだした。
「きゃっ、眩しっ」っとポーラが小さく叫ぶ。
一緒にいたダーナが真っ青になる。
「…って!いやぁあああ!」と頭を抱え込んで座り込んだ。
何やら苦しそうである。
「えっ!ダーナ様、どうされました?」とポーラがびっくりしているとミアが奪うようにと石を受け取り、慌てて石に話しかけた。
ポーラはびっくりして口もきけずにおろおろするばかりである。
「月の石よ!お願い!ダーナ様の魔法は吸い取らないで!貴方を迎えに来るために、ここに来る手助けをしてくれたのよ!ダーナさんは優しい良い魔法使いなのよ!」と言った。
石は眩しい光を放っていたが、ぽうっと淡い光になった。
「あ、あああ!あ~、やばいわ!真面目にやばかったからっ!何?なに?ミアは”月の石”と話せちゃう訳?何なの~?」
「あ~、何かすみません。この月の石ってば私のなので私の言う事は聞いてくれちゃうんです。えへへ」
とミアが言う。
「って!ミアはじゃあ血族の姫って事なの?」
「うわぁ~、ほんとに私より色々とご存じで…びっくりです~」
「って!びっくりは、こっちのセリフよっ!しかも月の石が人の言葉を理解して言う事を聞くなんて聞いた事もないっ!」
「いやぁ~、ほんとにこの”月の石”ってば、できる子なんです~」と親ばかみたいな事をいう。
「や、まぁ…とりあえず月の石(が魔法力を吸い取るの)を止めてくれてありがとう。た、助かったわ」
「いえいえ、ダーナさんが居なかったら、ここまでこの”月の石”を迎えにこれませんでしたし」
「全く、なんて令嬢なの!?ほんとに恐ろしいわね!もう一生分位驚いたわよ!本当にもう!」とダーナがため息をつきながら言った。
「え~と…何か…すみません」とミアが謝る。
「だけど、まさか、そんな力のある”月の石”が現存しているなんて…その石は神殿から下げ渡された石の一つなの?」
「ほんっとに、本当によくご存じですねぇ?私よりよっぽど詳しいですわ。でも、この月の石は、最近生まれたばかりで…」
「え?石が生まれた?」
「私が怒ったり泣いたりしたら、なんかそこら辺の魔法石が結晶化して月の石になっちゃったみたいなんですよね…」
「ですよね…ってあなた…」あまりの事にダーナも言葉を失う。
ポーラなどは話についていけずだまったままである。
「なんか、ルーク王子から聞いた話によると私の事を主に選んで、私を慰める為に生まれたって言ってましたけど…まぁ、私もよく分からないんですけど…そう言う事みたいです。何か感情がたかぶっちゃうとぼろぼろ石が繁殖しちゃって…あはは…掻き集めるの大変でした…」とまるで他人事のように言うミアに、ダーナは、呆気に取られて、二の句が継げなくなっていた。
この娘は本物だ。
本物の血族の姫なんだわ…。
初めてみたわ…。
しかも精霊様の主だなんて!
本物の血族の…選ばれし姫と本物の”月の石”
皇家のおかかえ魔法使いダーナ・ハースノアは、静かに…でも激しく感動していた。
この姫こそが奇跡の存在なのだと…。
噂の眠り姫は血族の…しかも選ばれし姫だった…だから神殿は数少ない月の石を姫を助ける為に下げ渡したのね?いえ、下げ渡したというのは語弊があるわね…。
月の石を献上したのだわ…。
力ある者がそれを悟り、真の主に差し出したのだわ!
石は姫を助け…そして新たな石は生まれる。
そう!あの光!
神殿の…そしてラフィリルの浄化!
あの浄化の光はこの姫故だったのか!とダーナの疑問がひとつ消化したのだった。
この姫を護らねば!
ラフィリルだけの話では収まらない!そもそもラフィリルは、この世界の始まりの国とされている。
この姫を護ることはこの世界を護る事なのだわ!と大いなる使命を感じたダーナだった。
いつも、周りを驚かせてばかりのミアだったが今日は自分が驚かされる側だった。
たまたま、立ち寄り式を結婚式をあげた小さな教会。
そこで、たまたま出会った親切なお婆さんが、なんと!ジャニカ皇国おかかえの魔法使いで、しかも、おばあさんじゃなくて『お姉さん』だったなんて驚きしかない。
とたんに不正入国した自分達は捕らえられるかもしれないと身構えたが、そんなつもりはさらさら無さそうである。
「あの…ダーナ様?とお呼びすれば宜しいですか?」と、ミアは、ちょっと警戒しながらも聞いてみた。
「やだ、もう!急にかしこまらないでよ。私の事も呼び捨てで良いから!ダーナで良いわよ」と、ダーナが、笑い飛ばす。
「や…でも、なんか皇国おかかえの魔法使い様って、とっても偉い方なんですよね?」
「あら、公爵令嬢だって、相当な身分じゃなくて?」
ダーナはそんな風に言いつつ軽くウィンクする。
「え?えと…えーっ!」
ばっ!ばれてる!ばれてる!むっちゃ、ばれてるーっ!と更に驚き焦るミアだった。
「お願いっ!内緒にしてくださぁい!」
「馬鹿ね!誰にも言う訳ないじゃない!こんな、おもしろ…っと…こほん…いえ、きっと何か事情があるのでしょう?私はミアの事、気にいったから助けてあげるわよ」
「い、い、一体いつから私の事を?」
「そうねぇ、最初に見た瞬間からかしらぁ?」と、事も無げに言う様は、まるで悪戯に成功した子供のように嬉しそうに見える。
「一緒にいたのは、ダルタス将軍よねぇ?あの頬の傷にあの鋼のような体躯、そしてあの隙のない所作…誰の目をごまかせても、私の目はごまかせないわねぇ?」
「うわぁぁぁぁ」
頭を抱えて唸る私を見る目が、微笑ましげなのが何か気恥ずかしくて嫌だぁー!
「まあ、もともと"鬼将軍"や"眠り姫"の噂は、この国にまで届いていたからねぇ…有名人は辛いわね?ほほほっ」
「う…ううう…」
絶対この人、面白がってる
「まあまあ、そう唸りなさんな。ほら、着いたわよ。ドレス専門のお店ポララ!」
そう言うと、ダーナは、手綱を引いて、荷馬車をとめた。
馬が「ひひん」と鳴いて、立ち止まる。
「え!?あ、ほんとだ」
二人で、お喋り?しながら来たせいか、あっという間についてしまった。
ダーナは颯爽と荷馬車を降りると何やらしゅっと手を払う仕草をした。
すると馬は荷馬車ごと店の横に避けて止まり大人しく待っている。
ミアは、これも魔法だろうか?月の石といい、魔法といい何かと便利だなぁと感心してしまう。
そして、色々とバツが悪いやら焦るやらでハラハラしまくりだったが、ダーナが、ちゃんとお店まで連れてきてくれた事に、ほっとした。
ダーナ様って、いい魔法使いさんみたい…?
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誰かわかるなら教えてくれと言いたいミアであった。
思わず遠い目をしてしまう。
「ほほほっ!たまたま、お二人が私のいきつけの教会で結婚式をあげてね!私はお二人の結婚の証人になったのよ。」
い、いきつけって…喫茶店か何かですか?とつっこみたくなる。
そうか、まぁ、そうだよね?たまたまだよね?だけど、たまたまにしては、すごい確率で、すごい人に遭遇しちゃったわと思うミアである。
ダーナにしてみれば「それはこっちのセリフだわ」という感じだろうが…。
「ダーナ様、ルミアーナ様、とにかく中へどうぞ。ちょうどお客も切れて一服しようかと思っていたところなのです。お茶でも入れます。外では何ですから宜しければどうぞ」とポーラが招き入れてくれた。
三人は、ポーラの用意したお茶とお菓子を頂きながら一息ついた。
「ポーラ、その節は本当にありがとう。お陰で無事にジャニカ皇国に入り小さな教会で結婚式も挙げる事ができたわ」
「まぁ、それは良かったですわ!おめでとうございます。でも今日はまた一体なぜ、こちらに?まだ王都に戻られる訳ではございませんよね?」とポーラが訪ねた。
「それが、私、預かってくれたドレスのポケットに大切な物を忘れてしまって…。」
「ポケット?ああ!あの綺麗な宝石の事ですね?ドレスと一緒に保管しておりますよ」
「良かったぁ!やっぱり私、ポケットに入れっぱなしだったのね!ここに無かったら、どうしようと内心ヒヤヒヤしてたのよ!預かってくれて、ありがとう」
全開の笑みでお礼を言うと、ポーラが何故か赤面する。
う、うーん、我ながら美少女の笑顔って、スゴいな…。
私、この世界で目覚めてからこっち、美羽の時より絶対、顔で得してるよね!と、思う。
「あら、宝石?あんな丸太小屋を大喜びで住もうとする位だからそういうのには、興味無いのかと思ってたんだけど、何?ああ、そうか、当面の生活費に売るとか?」と、ダーナが、聞いてきた。
「いいえ、この石は私にとって特別な石で、強力な御守りのような石なんです」
「まあ、そうでしたか!金庫に一旦しまってありますので直ぐに出して参りますわ!」とポーラが席をたった。
「え?お守り?…そして石?」と、一瞬、戸惑ったようにダーナがミアに聞いてくる。
「ええ、すごく大切なものなのに私ったら駆け落ちする事になって気が動転していたみたいで…」
「ち!ちょっと、待って!それ、まさか”月の石”とか言うんじゃないでしょうね?」
「え?すごぉい!魔法使いってそんな事までわかるんですか?」と素直に驚くミア。
「いや!いや!いや!まずいわ!そら、まずいわぁ!」と、後ずさる。
「え?何が…?」ミアはきょとんとする。
「いやいやいや!まずいでしょうよ!”月の石”ったら、あなた、血族以外の魔法使い!つまり私らから見たら魔封石って呼ばれてるくらいで…」と言いかけた時にポーラが石を持ってきた。
あ、そう言えば、何か、前にルーク王子がそのような事を言ってたような…とミアも思い出す。
「これにお間違えございませんか?」と、ポーラが石をミアに見せると同時に眩しい位に光りだした。
「きゃっ、眩しっ」っとポーラが小さく叫ぶ。
一緒にいたダーナが真っ青になる。
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ポーラはびっくりして口もきけずにおろおろするばかりである。
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「あ、あああ!あ~、やばいわ!真面目にやばかったからっ!何?なに?ミアは”月の石”と話せちゃう訳?何なの~?」
「あ~、何かすみません。この月の石ってば私のなので私の言う事は聞いてくれちゃうんです。えへへ」
とミアが言う。
「って!ミアはじゃあ血族の姫って事なの?」
「うわぁ~、ほんとに私より色々とご存じで…びっくりです~」
「って!びっくりは、こっちのセリフよっ!しかも月の石が人の言葉を理解して言う事を聞くなんて聞いた事もないっ!」
「いやぁ~、ほんとにこの”月の石”ってば、できる子なんです~」と親ばかみたいな事をいう。
「や、まぁ…とりあえず月の石(が魔法力を吸い取るの)を止めてくれてありがとう。た、助かったわ」
「いえいえ、ダーナさんが居なかったら、ここまでこの”月の石”を迎えにこれませんでしたし」
「全く、なんて令嬢なの!?ほんとに恐ろしいわね!もう一生分位驚いたわよ!本当にもう!」とダーナがため息をつきながら言った。
「え~と…何か…すみません」とミアが謝る。
「だけど、まさか、そんな力のある”月の石”が現存しているなんて…その石は神殿から下げ渡された石の一つなの?」
「ほんっとに、本当によくご存じですねぇ?私よりよっぽど詳しいですわ。でも、この月の石は、最近生まれたばかりで…」
「え?石が生まれた?」
「私が怒ったり泣いたりしたら、なんかそこら辺の魔法石が結晶化して月の石になっちゃったみたいなんですよね…」
「ですよね…ってあなた…」あまりの事にダーナも言葉を失う。
ポーラなどは話についていけずだまったままである。
「なんか、ルーク王子から聞いた話によると私の事を主に選んで、私を慰める為に生まれたって言ってましたけど…まぁ、私もよく分からないんですけど…そう言う事みたいです。何か感情がたかぶっちゃうとぼろぼろ石が繁殖しちゃって…あはは…掻き集めるの大変でした…」とまるで他人事のように言うミアに、ダーナは、呆気に取られて、二の句が継げなくなっていた。
この娘は本物だ。
本物の血族の姫なんだわ…。
初めてみたわ…。
しかも精霊様の主だなんて!
本物の血族の…選ばれし姫と本物の”月の石”
皇家のおかかえ魔法使いダーナ・ハースノアは、静かに…でも激しく感動していた。
この姫こそが奇跡の存在なのだと…。
噂の眠り姫は血族の…しかも選ばれし姫だった…だから神殿は数少ない月の石を姫を助ける為に下げ渡したのね?いえ、下げ渡したというのは語弊があるわね…。
月の石を献上したのだわ…。
力ある者がそれを悟り、真の主に差し出したのだわ!
石は姫を助け…そして新たな石は生まれる。
そう!あの光!
神殿の…そしてラフィリルの浄化!
あの浄化の光はこの姫故だったのか!とダーナの疑問がひとつ消化したのだった。
この姫を護らねば!
ラフィリルだけの話では収まらない!そもそもラフィリルは、この世界の始まりの国とされている。
この姫を護ることはこの世界を護る事なのだわ!と大いなる使命を感じたダーナだった。
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