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ところ変われば姫!時々、騎士見習い!

72.ダルタス、ルミアーナをさらう!

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 さて、ルミアーナの方はと言えば一連の自分の暗殺未遂事件もひとまず解決?し、愛しいダルタスと親友のルーク王子の無事も(ライブ映像で)確認できていたのでご機嫌だった。

 そして王妃も、多少ぞんざいな態度がらも勇敢でちょっと強気な、そんな普段知らなかったルーク王子むすこの素の様子を知れてご満悦だった。
 息子ルーク甥っ子ダルタスがルミアーナと神殿、ひいてはこの国の危機を救ったのだから…。

 ネルデアもルミネも無論ほくほくである。

 ネルデアは息子ダルタスルミィ(予定)が…ルミネはルミアーナ婿殿ダルタス(予定)が、この国を救ったのだと誇らしさに胸がいっぱいであった。

 そして、二将軍。アルフとカークもあのライブ映像をみて、この国の危機に、ここにいるルミアーナと月の石と自分たちの息子にも等しいダルタスが活躍したことに感慨深いものを感じていた。

 ちなみに、実は今、ルミアーナを含むネルデア邸に今いる面々は、その後の展開などつゆ知らず、呑気にお茶を飲みながら歓談中であった。癒しの光が降り注いだあと、月の石の精霊がやれやれ…と石の中に戻ってしまっていた為だ。

 もしあれから後のことを知っていれば呑気にお茶など飲んではいなかっただろう。

 穏やかな午後だったが、不意にそれは破られた。
 正面玄関のほうが、何やら騒がしい。
 馬のいななきが聞こえたかと思うと「ばんっっ!」と扉が開かれた。

 当主であるネルデアが慌てて玄関に駆けつけると、なんと十年以上ぶりに会う息子がそこにいた。

「あ?あー、えええと…母上?」とダルタスは一瞬だけひるんだが、久しぶりに会う母にぎこちないながらも微笑んだ。

「ま、まぁ、まぁダルタス…なんて立派に…」とネルデアは目に涙を浮かべた。

 画像でみたダルタスも立派には見えたが、実際のダルタスはアルフやカークにも負けないほどの体格で、ネルデアから見ると首を痛い位見上げなくてはならないくらいであった。

「ああっ!母上…ご無沙汰しております。お元気そうで何よりです。久しぶりの再会にゆっくり感慨にふけることも叶わなくて申し訳ないのですが、ここに私の婚約者ルミアーナがいると思うのですが!」と、せわに言った。

 王城から休まず来たのであろうか、肩で息を切らしながらルミアーナを呼びつける。
「ルミアーナ!ルミアーナはいるかっっ?」

「えっ!ダルタス様っ?」と玄関での騒がしさに駆けつけたルミアーナがダルタスに駆け寄った。

「ルミアーナ!」ダルタスは満面の笑みで、駆け寄ってきたルミアーナをその逞しい両腕でしっかりと抱きとめる。

 生き別れだった親がみていようが、周りにどれだけ人がいようが、もうお構いなしである。

 ルミアーナと一緒に駆けつけた二将軍も「ひゅう~」と口笛をふきながらあてられていた。

 そのうちわらわらと王妃やルミネも出てきたがダルタスは目にも入らぬ様子でルミアーナの肩をつかむと、ぐっと正面に距離をとりルミアーナの目を見ながら言った。
 女達は「きゃっ」と声をあげながらもそのドラマチックな再会を見守る。

 くどいようだが今のダルタスには周りの様子は全く目にも耳にもはいってない様子である。
「ルミアーナ!俺は今からお前を攫う!ついてこい!駆け落ちするぞ!」とダルタスはぐいっとルミアーナを再びひきよせ抱きかかえ、さっさと外へでたかと思うと馬にのせて自分も馬にのった。

「じゃあ、母上!あ、王妃様叔母上!しばらく無沙汰をする事になると思う。王城から追手が来るかと思うが適当に追い返しといてくれ!」

「はっっ」と馬の腹をけり、その場からあっという間に駆けだした。

 まさに疾風のように走り出したのである。

「え?えええええええええええええええ~っ!」とルミアーナも周りの面々も叫んだ!
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