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ところ変われば姫!時々、騎士見習い!
35.祖母ドリーゼの心情
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ノアの母、つまりダルタスの祖母ドリーゼは、貴族の血筋を最も誇りに思うタイプの人間だった。
ノアの妹が、王妃に迎えられ王族につらなったことに有頂天になっていたが、ノアの選んだネルデアが、貴族の端くれとはいえ、貧しい男爵家の出であることが、気にくわなかった。
自分としてはノアに添わせたい伯爵令嬢がいたのに、ノアは女だてらに騎士などと淑女らしからぬ娘に夢中で結婚するという。
ドリーゼは頑として反対したが、当時はまだ元気だった夫のラフィリアード公爵が許してしまったのである。
あろうことか、夫が自分よりもネルデアの肩を持った事が心底許せず、ますます憎しみを募らせていった。
そんな中、やがてダルタスが生まれた。
気に入らない嫁はともかく孫は可愛い。
ところが嫁と来たら、やたら小さいうちから、やれ乗馬だのやれ体術などと孫をつれまわす。
私と遊ばせない気かと怒れば、夫や息子が私に小言を言ってくる。
実に忌々しい。
いかにあの女が嫁に相応しくないかを証明してやる!とばかりにドリーゼはダルタスが、ほんの小さな傷を作っても激しく責めたてた。
しかし結局、それすら「公爵家跡継ぎが、そんなささいな傷位で騒いでどうするのだ?良いから子育ては母親であるネルデアに任せておけばよい。ネルデアは、優秀な女騎士だから息子も立派な武人に育てあげてくれるだろう」と夫にたしなめられ、
ノアには、
「母上!いい加減にしてください!そんなにネルデアが気に入らないのならネルデアとダルタスを連れて出ていきますからね!」と言われた。
ドリーゼはその時、怒りで眩暈がしたのを覚えている。
「貴方、やめて!お義母様はダルタスを心配して言って下さっているのに!」と、ネルデアが息子にわざとらしく言うのも忌々しかった!
ドリーゼには、もう、どうにかしてこの女を追い出したいという思いしかなかった。
やがて孫のダルタスが七歳を迎えた年に夫が遠征中に流行り病に倒れて帰らぬ人となった。
ノアも夫の跡を継ぎ王族の守りの要の武人として遠征にでることが、多くなった。
もはや悲しいとも寂しいとも思わなかった。
むしろ、家の中をやっと思い通りにできる…そう思ったのである。
好機はやってきた。
ダルタスが予定通り落馬して顔に大きな傷をおったのだ。
しかもネルデアと二人で遠乗りに出掛けた時にである。
ダルタスは三日三晩高熱にうなされた。
私はネルデアの事をこれでもかと責めたてた。
「おまえのせいだ」と「おまえが疫病神なのだ」と…。
「おまえが、いる限り、ダルタスの災難は続くのだ!」と…。
熱が下がったダルタスの無事を見届けた後、あの女は去っていった。
勝った…とドリーゼは思った。
母を慕ってダルタスが泣き暮らすのではと危惧したが母親が出ていった事を告げると意外にもダルタスは、あっさりとしていて、
「そう…」とだけ言った。
悲しいとも嬉しいともつかぬ、ただ淡々と事実を受け入れただけであろう返事だった。
それでこそ私の孫だとドリーゼは誇らしく思ったものだった。
ダルタスの顔に大きな傷跡が残ったのは想定外だったが…。
本当に…あんなに醜い傷痕が残るだなんて思ってもみなかったのだ。
ノアの妹が、王妃に迎えられ王族につらなったことに有頂天になっていたが、ノアの選んだネルデアが、貴族の端くれとはいえ、貧しい男爵家の出であることが、気にくわなかった。
自分としてはノアに添わせたい伯爵令嬢がいたのに、ノアは女だてらに騎士などと淑女らしからぬ娘に夢中で結婚するという。
ドリーゼは頑として反対したが、当時はまだ元気だった夫のラフィリアード公爵が許してしまったのである。
あろうことか、夫が自分よりもネルデアの肩を持った事が心底許せず、ますます憎しみを募らせていった。
そんな中、やがてダルタスが生まれた。
気に入らない嫁はともかく孫は可愛い。
ところが嫁と来たら、やたら小さいうちから、やれ乗馬だのやれ体術などと孫をつれまわす。
私と遊ばせない気かと怒れば、夫や息子が私に小言を言ってくる。
実に忌々しい。
いかにあの女が嫁に相応しくないかを証明してやる!とばかりにドリーゼはダルタスが、ほんの小さな傷を作っても激しく責めたてた。
しかし結局、それすら「公爵家跡継ぎが、そんなささいな傷位で騒いでどうするのだ?良いから子育ては母親であるネルデアに任せておけばよい。ネルデアは、優秀な女騎士だから息子も立派な武人に育てあげてくれるだろう」と夫にたしなめられ、
ノアには、
「母上!いい加減にしてください!そんなにネルデアが気に入らないのならネルデアとダルタスを連れて出ていきますからね!」と言われた。
ドリーゼはその時、怒りで眩暈がしたのを覚えている。
「貴方、やめて!お義母様はダルタスを心配して言って下さっているのに!」と、ネルデアが息子にわざとらしく言うのも忌々しかった!
ドリーゼには、もう、どうにかしてこの女を追い出したいという思いしかなかった。
やがて孫のダルタスが七歳を迎えた年に夫が遠征中に流行り病に倒れて帰らぬ人となった。
ノアも夫の跡を継ぎ王族の守りの要の武人として遠征にでることが、多くなった。
もはや悲しいとも寂しいとも思わなかった。
むしろ、家の中をやっと思い通りにできる…そう思ったのである。
好機はやってきた。
ダルタスが予定通り落馬して顔に大きな傷をおったのだ。
しかもネルデアと二人で遠乗りに出掛けた時にである。
ダルタスは三日三晩高熱にうなされた。
私はネルデアの事をこれでもかと責めたてた。
「おまえのせいだ」と「おまえが疫病神なのだ」と…。
「おまえが、いる限り、ダルタスの災難は続くのだ!」と…。
熱が下がったダルタスの無事を見届けた後、あの女は去っていった。
勝った…とドリーゼは思った。
母を慕ってダルタスが泣き暮らすのではと危惧したが母親が出ていった事を告げると意外にもダルタスは、あっさりとしていて、
「そう…」とだけ言った。
悲しいとも嬉しいともつかぬ、ただ淡々と事実を受け入れただけであろう返事だった。
それでこそ私の孫だとドリーゼは誇らしく思ったものだった。
ダルタスの顔に大きな傷跡が残ったのは想定外だったが…。
本当に…あんなに醜い傷痕が残るだなんて思ってもみなかったのだ。
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