12 / 227
ところ変われば姫!時々、騎士見習い!
12.姫君と鬼将軍は…
しおりを挟む
ダルタス将軍と公爵令嬢ルミアーナの婚約の報は瞬く間に国中に広められ、めでたくルミアーナは王太子妃候補から外れて、この国の王都の守護者ダルタス将軍の正式な婚約者となった。
とりあえず、命を狙われるという危険要素が減ったということで両親も大喜び!
しかもルミアーナ本人がダルタス将軍に夢中なのだから何よりである。
***
そして今日は、ルミアーナの愛しのダルタス様が訪れる約束の日だった。
朝からルミアーナは、どきどきワクワクである。
思えばルミアーナは、美羽時代からワイルドで逞しいタイプに憧れていた。
会ってみればモロ好み!
タイプど真ん中!なんて素敵なの!きゃっふぅ♪である!
ああ、私の理想の人~!
あんな人が実在するなんて!神様ありがとう!
ああ、この世界ほんとに、夢みたいに素敵!
そんな風に思うルミアーナだった。
自分が暗殺されかかっていた事など、どこ吹く風…といった感じである。
美羽の記憶をもつルミアーナの中身は、本当に豪快でワイルドである。
細かいことは気にしないし、気にならないのである!
美羽時代、美羽の強さを知る周りは女扱いなどしてくれてなかったし、実際、美羽にかなう男など空手の道場師範である兄か道場主の父親くらいなもので美羽からみたらそれ以外はみんな軟弱なもやし君達だったのである!
人並みに恋愛には憧れていたものの、ときめく相手など漫画やアニメの中にしかいなかった!
なんせ理想は自分より強い大人の男!
そして、本人は空手と柔道の使い手であり、弓道、剣道までもそこそこいける腕前という強者!
(あくまでも美羽時代の話だが…記憶はつい最近のように感じられるので、毎日のトレーニングで体さえ出来上がれば、今でもそこそこは使えるようにはなりそうだ。)
まったくもって、逞しいにもほどがある姫なのである。
しかしそれは、中身の話であり見た目だけは、どこをどうみても深窓のご令嬢。
幸いこの世界で自分の本性(…というと言葉が悪いが)を知るものは、いない!
この見た目!利用できるならさせてもらいましょうとも!
ふってわいた自分の初恋!
手段は選んでおられませんわっ!
あの方を手にいれられるのならば、なりきりましょう!姫君に!
…と、儚げな見た目と相反し、もはや心は『狩人』である。
獲物は、泣く子も黙る鬼将軍ダルタス!
気合い万全!はやる心を抑えきれないルミアーナだった。
むろん朝のトレーニングも、きっちりして風呂にも入って数日前からフォーリーや母と念入りに選び抜いたドレスを纏い着飾って準備万端にダルタスを待ちわびた。
***
一方、ダルタスの方は、柄にもなくそわそわしていた。
約束の時間より大分早く、まだ時間がある。
自分の屋敷の中を行ったり来たりしながら考えこんでいる。
「旦那様、少し落ち着かれませ!」
年若い家令のブラントが笑いを堪えるように言った。
「わ、わかってはいるが!くそっ!戦場に赴く時の方がまだましだ!」と、頭を片手でわしわしとかきむしりながら唸る。
「なんて事を!旦那様!せっかくご自身のご身分にも相応しい公爵家の姫ぎみとのご婚約、ぶち壊しになさるおつもりですか?」ブラントの眉間にしわがよる。
「旦那様、私は旦那様の為を思って敢えて言わせて頂きますが、このような素晴らしいご縁談、絶対に絶対にぜーったいにもう二度と金輪際ございませんからねっ!」
「む…ぅ…わかっている」
「は?」
「わかっていると言っている!」
「ぶち壊したくないから行きたくないんだ!いや、行きたくない訳ではないが…!」
「はぁ、こんなダルタス様は初めてですね?そんなに心配なさらなくても、すでにお会いになられた上であちらから申し入れのあったご縁談にございましょう?」
「そ…それは…そうだが、父親に言い含められていただけやも知れぬ」
「それは、そうかもしれませんが、旦那様をみて怯えもしなければ泣きもしなかったのでございましょう?」と、ブラントは、呆れたように言った。
(全く、それならそれでよいではないか?所詮、貴族間の結婚などそんなもんである)と、口にはださないが思った。
そんなブラントの心の声など知らぬダルタスは、
「っ!そうなのだ!」
くわっと目を剥いて主が、ブラントにむきなおる。
ブラントは、びくっとした。
(こわっ!あなた、こんな顔見せたら確実に逃げられますからね)と思ったが、これも口にはしなかった。
「かの姫は俺のこの顔の傷すらまるで目に入ってないかのように話しかけてきて…し、しかも…いや…勘違いかも知れないが」
「?ナンなんですか?」にえきらない主にブラントは、まゆをひきつらす。
「姫は俺といて恥らって赤くなっていたようで…ま、まるで俺のことを…その…なんだな…」
「は?」
ブラントは、呆れたように口をぽっかりあけたまま思った。
(怖いの我慢して赤くなってたのを、もしかしていいように誤解してるとか?…かな??)と自分の主にむかって実に不敬な事を思ったが、それもまた口には出さなかった。
王太子妃候補筆頭の噂の美しい姫が、王太子妃を諦めてうちの旦那様を選ぶ理由なんて決まっている。
「命を狙われるくらいなら、いっそ鬼将軍に嫁いだ方がまし!」とか、思ったに違いないだろう。どんな勘違いをしてるのか?我が主は!と心底、失礼なことを思った。
…とはいえ、釣り合いのとれた公爵令嬢との縁談は主にとっては喜ばしい出来事に違いないのだから、ここは応援せねばと思っている。
「はいはい、それでしたら大丈夫でしょう?分かりましたから、とっとと行って下さいまし!時間を守らぬ紳士などおりませんよ!やっぱり王太子の方が良かったと思われても知りませんからね!」と、ブラントが言うと
「うむ…行ってくる。」と、ダルタスはくるっと出口に向き直り、すたすたと出ていった。
とりあえず、命を狙われるという危険要素が減ったということで両親も大喜び!
しかもルミアーナ本人がダルタス将軍に夢中なのだから何よりである。
***
そして今日は、ルミアーナの愛しのダルタス様が訪れる約束の日だった。
朝からルミアーナは、どきどきワクワクである。
思えばルミアーナは、美羽時代からワイルドで逞しいタイプに憧れていた。
会ってみればモロ好み!
タイプど真ん中!なんて素敵なの!きゃっふぅ♪である!
ああ、私の理想の人~!
あんな人が実在するなんて!神様ありがとう!
ああ、この世界ほんとに、夢みたいに素敵!
そんな風に思うルミアーナだった。
自分が暗殺されかかっていた事など、どこ吹く風…といった感じである。
美羽の記憶をもつルミアーナの中身は、本当に豪快でワイルドである。
細かいことは気にしないし、気にならないのである!
美羽時代、美羽の強さを知る周りは女扱いなどしてくれてなかったし、実際、美羽にかなう男など空手の道場師範である兄か道場主の父親くらいなもので美羽からみたらそれ以外はみんな軟弱なもやし君達だったのである!
人並みに恋愛には憧れていたものの、ときめく相手など漫画やアニメの中にしかいなかった!
なんせ理想は自分より強い大人の男!
そして、本人は空手と柔道の使い手であり、弓道、剣道までもそこそこいける腕前という強者!
(あくまでも美羽時代の話だが…記憶はつい最近のように感じられるので、毎日のトレーニングで体さえ出来上がれば、今でもそこそこは使えるようにはなりそうだ。)
まったくもって、逞しいにもほどがある姫なのである。
しかしそれは、中身の話であり見た目だけは、どこをどうみても深窓のご令嬢。
幸いこの世界で自分の本性(…というと言葉が悪いが)を知るものは、いない!
この見た目!利用できるならさせてもらいましょうとも!
ふってわいた自分の初恋!
手段は選んでおられませんわっ!
あの方を手にいれられるのならば、なりきりましょう!姫君に!
…と、儚げな見た目と相反し、もはや心は『狩人』である。
獲物は、泣く子も黙る鬼将軍ダルタス!
気合い万全!はやる心を抑えきれないルミアーナだった。
むろん朝のトレーニングも、きっちりして風呂にも入って数日前からフォーリーや母と念入りに選び抜いたドレスを纏い着飾って準備万端にダルタスを待ちわびた。
***
一方、ダルタスの方は、柄にもなくそわそわしていた。
約束の時間より大分早く、まだ時間がある。
自分の屋敷の中を行ったり来たりしながら考えこんでいる。
「旦那様、少し落ち着かれませ!」
年若い家令のブラントが笑いを堪えるように言った。
「わ、わかってはいるが!くそっ!戦場に赴く時の方がまだましだ!」と、頭を片手でわしわしとかきむしりながら唸る。
「なんて事を!旦那様!せっかくご自身のご身分にも相応しい公爵家の姫ぎみとのご婚約、ぶち壊しになさるおつもりですか?」ブラントの眉間にしわがよる。
「旦那様、私は旦那様の為を思って敢えて言わせて頂きますが、このような素晴らしいご縁談、絶対に絶対にぜーったいにもう二度と金輪際ございませんからねっ!」
「む…ぅ…わかっている」
「は?」
「わかっていると言っている!」
「ぶち壊したくないから行きたくないんだ!いや、行きたくない訳ではないが…!」
「はぁ、こんなダルタス様は初めてですね?そんなに心配なさらなくても、すでにお会いになられた上であちらから申し入れのあったご縁談にございましょう?」
「そ…それは…そうだが、父親に言い含められていただけやも知れぬ」
「それは、そうかもしれませんが、旦那様をみて怯えもしなければ泣きもしなかったのでございましょう?」と、ブラントは、呆れたように言った。
(全く、それならそれでよいではないか?所詮、貴族間の結婚などそんなもんである)と、口にはださないが思った。
そんなブラントの心の声など知らぬダルタスは、
「っ!そうなのだ!」
くわっと目を剥いて主が、ブラントにむきなおる。
ブラントは、びくっとした。
(こわっ!あなた、こんな顔見せたら確実に逃げられますからね)と思ったが、これも口にはしなかった。
「かの姫は俺のこの顔の傷すらまるで目に入ってないかのように話しかけてきて…し、しかも…いや…勘違いかも知れないが」
「?ナンなんですか?」にえきらない主にブラントは、まゆをひきつらす。
「姫は俺といて恥らって赤くなっていたようで…ま、まるで俺のことを…その…なんだな…」
「は?」
ブラントは、呆れたように口をぽっかりあけたまま思った。
(怖いの我慢して赤くなってたのを、もしかしていいように誤解してるとか?…かな??)と自分の主にむかって実に不敬な事を思ったが、それもまた口には出さなかった。
王太子妃候補筆頭の噂の美しい姫が、王太子妃を諦めてうちの旦那様を選ぶ理由なんて決まっている。
「命を狙われるくらいなら、いっそ鬼将軍に嫁いだ方がまし!」とか、思ったに違いないだろう。どんな勘違いをしてるのか?我が主は!と心底、失礼なことを思った。
…とはいえ、釣り合いのとれた公爵令嬢との縁談は主にとっては喜ばしい出来事に違いないのだから、ここは応援せねばと思っている。
「はいはい、それでしたら大丈夫でしょう?分かりましたから、とっとと行って下さいまし!時間を守らぬ紳士などおりませんよ!やっぱり王太子の方が良かったと思われても知りませんからね!」と、ブラントが言うと
「うむ…行ってくる。」と、ダルタスはくるっと出口に向き直り、すたすたと出ていった。
26
お気に入りに追加
2,776
あなたにおすすめの小説
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる