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四の巻~平成美女は平安(ぽい?)世界で~
105.いやさ扶久子の手のひらで…
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「ひ、ひひひ、姫様っ!そ、それは一体、どういう…」と亜里沙は声を震わせて扶久子に縋りついた。
「な、それは一体どういう事なんだ」と定近が責めるように声を上げると扶久子は、亜里沙を手で制し、定近の目をしっかりと見すえた。
「私はこの世界の義鷹さまと出会い結ばれ夫婦となりました。御仏も私が恋を成就したことを良きことと思召し、この世界で義鷹様との幸せを全うすることを望んでくださっています。けれども亜里沙はまだこの世界の者と絆が出来たとは言い難い状況、あの隆さんは、もしかしたら平成以降の世界でのほうが幸せになれるのかもしれないという御仏の迷いから出てきた存在なのですわ」と、扶久子はまるで舞台の上のや役者の如き大げさな身振り手振りで緩急をつけながらはっきりとした口調で言い放った。
(突然の扶久子劇場の始まりだった…御仏もびっくりなノリノリ具合だと解説しておこう)
そして、そこからは亜里沙と扶久子の二人舞台である。
息もつかぬ言葉の掛け合いに周りは突っ込むこともままならず、二人を静観するしかない状況だった。
「そんなっ!まさかあんな男と私を御仏はそわせようと?そんな筈ないではありませんかっ」
「あら、どうしてそんな風に思うの?」
「だって、あいつは事もあろうに姫様を貶めるような言葉を何度も…」
「それだとて、多少の勘違いや思い込みもあったものの真から亜里沙の事を思っての事だったはずよ」
「姫様っ!姫様だってあんな奴お嫌いでしょう?」
「私の事はいいの!本当に亜里沙を幸せにしてくれるなら…ね」
「たとえ勘違いだろうと姫様を愚弄するような愚か者、願い下げもいいところです」
「そうね、知ってる!亜里沙は私の事をいつも一番に考えてくれる。だけどね、庇うわけではないけれどあの隆も変な勘違いをして私の事を悪し様に罵ったりしなければ亜里沙も多少なりとも気に入っていたかもしれない相手だという事よ」
「そんな、まさか」
「いいえ、よく聞いて!亜里沙も彼の事が初めから嫌いだったわけではないはず!ましてや令和とやらの平成よりも後の世界からもちこんだあの電化製品の数々!あれとて御仏が私や亜里沙につけてくれた特典ともいえるものだったものなのよ」
「はぁ?訳がわかりません」
「いい?私はこの世界では自分で言うのもなんだけど絶世の美女だのかぐや姫だのともてはやされているわ。でも平成の世界で絶世の美少女とされていた亜里沙はこの世界ではあまり好ましいとはいわれていない。もしかしたらあちらの世界でのほうが、より幸せになれるかもという考えと亜里沙自身の望んだ私と共に在りたいと願いの間で生じた現象なのよっ!」
「なっ!そんなっ」
「御仏は私たち二人のそれぞれの願いをかなえようとしてくださった。貴女は、私が恋をして幸せな人生をと願ってくれた。それ故に御仏は貴女の願いを叶え、私を最も幸せにしてくれるであろう義鷹さまとめぐり合わせてくださった。しかも私が絶世の美女とされるこの世界で」
「あ…そ…それでは…」
「でも私は貴女に来世では私に縛られることなく最高に幸せになってほしいと願ったの。だから、もし私の願いが叶えば亜里沙は亜里沙が絶世の美少女、アイドルと評されもてはやされる世界で貴女を盲目的に愛し尽くしてくれるであろう隆さんと幸せになっていたでしょう」
「そんな、私の望みは姫様の幸せを見守ることで…」
「そう、そして貴女は同時に私にまた仕えたいと願っていた…。そこで御仏は悩まれた。貴女はこの世界で私と共にいられる。けれど前にいた世界ほど周りに評価されることもない。ならば亜里沙の価値を正当に評価できる隆をこの世界に呼び込もうと…私が義鷹様と出会うためにこの世界にトリップしたように…」
「そ、そんな…でも私はあのような者…」
「そうね、彼は失敗してしまったわ。本当に亜里沙が好きなのなら亜里沙の私を想う気持ちをないがしろにしては元もこもなかったのにね」
「そして、御仏は貴女の願いの私の側でいたいという願いを組んで定近様とも巡り合わせてくださったのよ」
「えっ!そ、それって」
「隆さんを選んでいれば、あちらの世界に渡り亜里沙は隆さんだけではなくあちらの世界のすべての人から国民的美少女と賞賛されながらいきていけたでしょう。今の私のように…これ以上ないくらいに幸せに…けれど義鷹様と結ばれた私と共にありたいと思うならこちらの世界で亜里沙を愛してくれる人とめぐり逢うしかない」
「そ、そしてその願いが叶いつつも私を愛してくださる方が…」
「そう、もうわかっているのよね?」と扶久子は亜里沙を見つめたあと、定近に目をむけた。
そして、定近は、その視線にこたえるように、その場にひざまづき亜里沙の手を取った。
恭しく、許しを請うように。
そして定近は皆の前で亜里沙に改めて妻問いをした。
「な、それは一体どういう事なんだ」と定近が責めるように声を上げると扶久子は、亜里沙を手で制し、定近の目をしっかりと見すえた。
「私はこの世界の義鷹さまと出会い結ばれ夫婦となりました。御仏も私が恋を成就したことを良きことと思召し、この世界で義鷹様との幸せを全うすることを望んでくださっています。けれども亜里沙はまだこの世界の者と絆が出来たとは言い難い状況、あの隆さんは、もしかしたら平成以降の世界でのほうが幸せになれるのかもしれないという御仏の迷いから出てきた存在なのですわ」と、扶久子はまるで舞台の上のや役者の如き大げさな身振り手振りで緩急をつけながらはっきりとした口調で言い放った。
(突然の扶久子劇場の始まりだった…御仏もびっくりなノリノリ具合だと解説しておこう)
そして、そこからは亜里沙と扶久子の二人舞台である。
息もつかぬ言葉の掛け合いに周りは突っ込むこともままならず、二人を静観するしかない状況だった。
「そんなっ!まさかあんな男と私を御仏はそわせようと?そんな筈ないではありませんかっ」
「あら、どうしてそんな風に思うの?」
「だって、あいつは事もあろうに姫様を貶めるような言葉を何度も…」
「それだとて、多少の勘違いや思い込みもあったものの真から亜里沙の事を思っての事だったはずよ」
「姫様っ!姫様だってあんな奴お嫌いでしょう?」
「私の事はいいの!本当に亜里沙を幸せにしてくれるなら…ね」
「たとえ勘違いだろうと姫様を愚弄するような愚か者、願い下げもいいところです」
「そうね、知ってる!亜里沙は私の事をいつも一番に考えてくれる。だけどね、庇うわけではないけれどあの隆も変な勘違いをして私の事を悪し様に罵ったりしなければ亜里沙も多少なりとも気に入っていたかもしれない相手だという事よ」
「そんな、まさか」
「いいえ、よく聞いて!亜里沙も彼の事が初めから嫌いだったわけではないはず!ましてや令和とやらの平成よりも後の世界からもちこんだあの電化製品の数々!あれとて御仏が私や亜里沙につけてくれた特典ともいえるものだったものなのよ」
「はぁ?訳がわかりません」
「いい?私はこの世界では自分で言うのもなんだけど絶世の美女だのかぐや姫だのともてはやされているわ。でも平成の世界で絶世の美少女とされていた亜里沙はこの世界ではあまり好ましいとはいわれていない。もしかしたらあちらの世界でのほうが、より幸せになれるかもという考えと亜里沙自身の望んだ私と共に在りたいと願いの間で生じた現象なのよっ!」
「なっ!そんなっ」
「御仏は私たち二人のそれぞれの願いをかなえようとしてくださった。貴女は、私が恋をして幸せな人生をと願ってくれた。それ故に御仏は貴女の願いを叶え、私を最も幸せにしてくれるであろう義鷹さまとめぐり合わせてくださった。しかも私が絶世の美女とされるこの世界で」
「あ…そ…それでは…」
「でも私は貴女に来世では私に縛られることなく最高に幸せになってほしいと願ったの。だから、もし私の願いが叶えば亜里沙は亜里沙が絶世の美少女、アイドルと評されもてはやされる世界で貴女を盲目的に愛し尽くしてくれるであろう隆さんと幸せになっていたでしょう」
「そんな、私の望みは姫様の幸せを見守ることで…」
「そう、そして貴女は同時に私にまた仕えたいと願っていた…。そこで御仏は悩まれた。貴女はこの世界で私と共にいられる。けれど前にいた世界ほど周りに評価されることもない。ならば亜里沙の価値を正当に評価できる隆をこの世界に呼び込もうと…私が義鷹様と出会うためにこの世界にトリップしたように…」
「そ、そんな…でも私はあのような者…」
「そうね、彼は失敗してしまったわ。本当に亜里沙が好きなのなら亜里沙の私を想う気持ちをないがしろにしては元もこもなかったのにね」
「そして、御仏は貴女の願いの私の側でいたいという願いを組んで定近様とも巡り合わせてくださったのよ」
「えっ!そ、それって」
「隆さんを選んでいれば、あちらの世界に渡り亜里沙は隆さんだけではなくあちらの世界のすべての人から国民的美少女と賞賛されながらいきていけたでしょう。今の私のように…これ以上ないくらいに幸せに…けれど義鷹様と結ばれた私と共にありたいと思うならこちらの世界で亜里沙を愛してくれる人とめぐり逢うしかない」
「そ、そしてその願いが叶いつつも私を愛してくださる方が…」
「そう、もうわかっているのよね?」と扶久子は亜里沙を見つめたあと、定近に目をむけた。
そして、定近は、その視線にこたえるように、その場にひざまづき亜里沙の手を取った。
恭しく、許しを請うように。
そして定近は皆の前で亜里沙に改めて妻問いをした。
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