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四の巻~平成美女は平安(ぽい?)世界で~

95.迷い人の告白 (弐)

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「そう、私たちは定近様がおっしゃるところの”迷い人”なのです」扶久子が深刻な表情で告白した。

「やはり!」「なんと!」定近と義鷹は驚きの声をあげた。

「で…では、やはり亜里沙殿や扶久子殿は隆と同じ世界から…」と定近が言うや否や

「それは、違います!」と、間髪入れずに亜里沙が答える。
 なんだか、隆と一緒くたにされるのが嫌だったのだ。
(既に亜里沙の中では隆は”生理的に無理!”なレベルになっていた)

「私たちが讃岐から来たのは本当です。ただし…未来の…というか…未来のような…と言いますか…多次元の世界が…もにょもにょ」と、亜里沙が口ごもる。
 微妙に歴史と違うこの世界が、はたして自分たちの世界と本当につながっているのか、はたまた似て非なる異世界なのかなど実際のところは検証もできるはずは無く、賢いが故に亜里沙はどう説明したらよいのかわからず戸惑った。

「「?」」定近と義鷹は真剣に話を聞こうとするが意味がわからず首をかしげた。

 そして扶久子がまた割って入った。

「私たちにも細かいところはわかりませんが、この世界が未来に行きつくであろう”平成”という世界から来たんです!そこには、この京の都や讃岐も確かにあって…でも千年も先の世界で文明も今より発達していました。隆さんの持ち込んだ”電化製品”なるものがある世界です。けれど、私たちは”平成”と呼ばれる世界からこの”平安”と呼ばれる時代の世界にきましたが、隆さんは私たちよりまだ少しだけ未来から来たようで”令和”という時代からきたらしいのですわ」

「おお、それは聞いたことがある。確かに隆は、自分は未来の”令和”とかいう時代から来たなどと言っておった。にわかには信じがたかったがあの”電化製品といわれる摩訶不思議に便利な道具の数々を見れば信じるよりほかはなく、悪い人間にも思えなかったので保護しておったのだが」

「そうです。私たちはこの時代より千年ほど先に進んだ時代の文明を持つ世界からきたのです」

「「なんと…」」二人は驚愕し、その後の言葉を失った。

 そして、ざっくりだが、見事に説明してのけた扶久子に亜里沙は感心していた。

 そう、扶久子はいつかは愛しい義鷹に本当の事を告げたいと日々、自分たちが未来っぽい世界が来たことを打ち明けたいと自分の中で言葉を模索し続けていたのだ。
 我ながら簡潔でよい説明が出来たと扶久子は思う。
 そして扶久子は義鷹の正面に立ち、両手を組んで謝った。

「義鷹さま、ごめんなさい。私は讃岐から来たのは本当ですが、千年以上先のもしかした似て非なる世界の讃岐から来たのです。義鷹さまをたばかるつもりなど毛頭ありませんでしたが、本当の事も言えず今日まで来てしまいました…」と、あざとくも瞳をうるませながら上目遣いに謝った。
 そんな可愛い様に義鷹はしばし絶句する。

 そんな若干の沈黙に亜里沙がまたまた訴える!
「ふっ…扶久姫は悪くありません!私が別の世界から来たことを隠すよう言ったのです!隆さんのように証拠となるような品(電化製品)もなく、千年先らしき世界から迷い出てきたなどという奇想天外なことを申せば狂人として扱われかねないと危惧したのです!もしも罰するなら私一人の罪です!」

 そう、今回は亜里沙劇場ならぬ扶久子劇場の絶賛開催中である。
 扶久子が待ってましたと言わんばかりに、その言葉にノリノリで乗ってくる。

「何言うの!私たちは親友なのよ!例え死罪になったって私たちは一緒なんだから!」と扶久子は言った。
 もちろん、愛しい夫が自分を死罪になどするはずもないとふんでいる。
 そして定近にしても、そんな理不尽な人出時はないと確信しての事だった。

「何を言う!私が愛しい其方を罪になど問うはずがないではないか!ましてや死罪などとんでもないっ!しかし千年も先の文明をもつ世界から来たなどと…真に其方は別世界の姫だったのだな…まさに”かぐや姫”との呼び名に相応しい」と、チョロイ義鷹は愛しくてたまらない様子でひしと扶久子を抱きしめた。

 そしてその様子を見守る涙目の亜里沙と定近。
 定近も感極まったように声を上げた。

「よくぞ申した。義鷹!それでこそ右大臣家の時期総領の器じゃ!その通りじゃ!そして扶久子殿も素晴らしい姫君じゃがそんな扶久子殿を守ろうとすすんで友の従者として使え支えるなど亜里沙殿は何と心根の美しい素晴らしき姫なのか!」

「やっぱり、そう思われます?そうでしょう!亜里沙ほど心根の美しい賢いおんなのこはいませんでしょう?」と
 鼻息も荒く扶久子が言うと、定近も義鷹も感心したように頷いた。

「「真に」」

 義鷹はよりいっそう妻への恋情を募らせ、定近はますます亜里沙の事を好ましく思ったのだった。
 扶久子が何かを言い出せばたいてい、良い方向に物事が進む。
 まさに天に愛された運を持つ『』姫なのであった。
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