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四の巻~平成美女は平安(ぽい?)世界で~

66 まさかの仲間? By芙久子

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 そしてその男性は私と亜里沙を見て一瞬、固まった。
 いや、正確には亜里沙を見て固まったというのが正しい!

「うっわ!びっくりした!すっごい美少女っ」
 その隆さんとやらは、明らかに私ではなく亜里沙を見てそうのたもうたのだ!

「「「「えっ?」」」」と、私や亜里沙、義鷹様や是延さんまでもが驚きの声をあげた。

 しつこいようだが、あらためて言おう!
 この平安っぽい世界では私が美少女で亜里沙は不細工な筈だ。筈なのだ!

 すらっとした華奢スレンダーな体つき、ぱっちりとした大きな瞳に二重瞼、長いまつ毛!ぽってりとした艶のある唇!すらりと伸びた手足、それらはこの平安っぽい世界ではぜんっぜん魅力的ではないのだ!

 つまりは、そう!
 そういう事!

 きっと彼は私たちと同じ?平成の世界から来たんだと!私は直感し、亜里沙に目配せすると亜里沙も大きく頷いた。

 そして、とっさに亜里沙が前に出て、隆さんというその人に詰め寄った。

「あっ!あのっタカシさま?」
「えっ?ああ、なんだい?綺麗なお嬢さん」
「貴方はひょっとして…」と、言いかけて亜里沙は口をつぐんだ。

 そう、そこには義鷹様も是延さんもいるのだ!

 二人は私が讃岐の貴族のやんごとなき姫君だとか思ってるのだ。
 それにタイムスリップ(しかも、もどき)とか、パラレルワールドとか、そんなの説明できっこない!
 頭おかしいと思われてしまう。

 とっさに言い淀んでいると隆さんは何か言いずらいのだろうかと察したように、話題を変えて話しかけてきた。

「立ち話もなんでしょう?母屋の方へどうぞ。義鷹さま、定近さだちか(義鷹の祖父)様は、今日来られる事はご存じでしたか?」

「いや、何分、急遽こちらに参った故、先触れもなく」

「左様でしたか。まぁ、家の者でも限られた者しかこの場所は知らされておりませんし、先触れと言っても誰彼かまわず頼めないですもんね?定近様は、今、滝に打たれに行ってらっしゃいますから、呼んできますよ。まずは、母屋の方でお待ちください」
 そう言って隆さんは私たちを屋敷の中へと案内してくれた。

 滝に打たれにって…なんか修行僧みたいだな?さすがは、義鷹さまのお爺様だと感心する。
 実にワイルドである。

 そして手慣れた様子でお茶とお菓子を出されて私たちはとにもかくにも一息ついたのだった。

 気になりつつも義鷹様や是安さんの手前、隆さんに確かめたいことも確かめられずにいたら、こらえきれずに亜里沙が隆さんに再び、話しかけた。

「隆さま?今から先代様をお迎えに入らっしゃるのですよね?宜しければお供させて頂いても宜しゅうございますか?」

「え?僕はいいけど、でも今たどり着いたばかりで疲れてはいないかい? 」

「いいえ!ちっとも!今更ですが先代様には、今回の急な訪問の仔細をお二人にお会いする前に、お伝えしとうございますし」と、亜里沙がもっともらしい理由をつけて隆さんと二人きりになろうとしていることが分かった。
 さすが、亜里沙グッジョブ!

「あ、それならば私も…」と是延が立ち上がろうとした瞬間
「私だけで充分です!」と、亜里沙は是延の言葉を瞬殺した。

 そりゃーもう結構な勢いで、是延も義鷹様も隆さんも驚いてちょっと固まっていたが、私は亜里沙と隆さんを見ながらうんうんと、首振り人形のように頷いていた。
(是延さん余計な事すんな!と心の中で呟いたのは内緒だ)

 亜里沙には是非とも隆さんの正体を見極めてほしいもの!

 もしかしたら、「パラレルトリップ仲間」かもしれないのだから!

「是延さんは、馬につないだ荷物とかおろして片づけておいてくださいな!女の私では重くて運べませんもの!」と、さらっとフォローの言葉も付け加える亜里沙はまさに完璧である!

 是延さんは、亜里沙の言葉に異様な圧力を感じたのか、「はい」と頷くと黙って外に出て黙々と荷解きを始めた。まるで蛇ににらまれた蛙のように汗をかいている。(蛙が汗をかくかと聞かれたらそんなもの知らんがな…としか言えないが…)

「姫様と若様は、そこでゆっくりお待ちくださいましな。さぁ、隆様、参りましょう。さぁさぁ!」と亜里沙は隆さんをまくしたてたのだった。
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