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参の巻~平安美女と平成美男の恋話~
㊻二夜目の蜜月~By扶久子
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「何だか訳の分からない御方でございましたね」
倒れた調度品などを手早く整えた亜里沙が、呆れたようなため息をひとつ。
「全くだわ!あんなに失礼な人が殿上人だなんて…がっかりよね」
そう言う私に義鷹様は安心したような?ほっとしたような笑みを浮かべた。
「ふっ…姫や亜里沙殿にかかれば、色男の凛麗の君もかたなしだな」と、そんな事をのたもうた。
「ええ~、あんなのが色男なんて…義鷹様の方が百倍も千倍も素敵です。っていうか比べるのもおこがましい。あんなカバみたいな…」
「カバ?」
「ああ、えっと異国の顔も体も大きな動物の事ですわ…」
私はそう説明した。
嘘ではないが、明らかに悪口を言ってしまった私は大好きな義鷹さまに呆れられるのではと少しばかり焦った。
「…そうなのですか…異国には私の知らぬ美しい生き物がいるのですね」
「え?」と、私は思わず耳を疑った。
うんにゃっ!カバは、キャラクターにしたら可愛かったり強そうでカッコよかったりはするかもしれないが、一般的には美しいとは言わないだろう?私は心の中で自問自答した。
義鷹様の心の綺麗な言葉に私は若干、自己嫌悪に陥った。
あんな無礼な奴にすら心の広い義鷹様ってば、美しいとかホントに思ってる。
私には相変わらずこの世界の美的感覚にはついていけないし、あんなカバの癖にナルシスト?キモいだけだけど。
ああっ、それにひきかえ私の好きな人。素敵すぎる!
そんな事を考えていたらふと亜里沙の生暖かい視線を感じた。
そうだった!
二人きりじゃなかった!と焦る私ににやける亜里沙。
なんつ~か、三日月が横になったような目つきだよ。
や~め~てぇ~!私の心を読まないで~。マジ恥ずかしい!
「ふふっ。さぁさ、私は下がりますから、後はお二人で睦まじくお過ごしくださいませ。今日は本当に大騒ぎでございましたね?明日の夜があければお二人は正式なご夫婦でございますれば」
もう、亜里沙ったら本当に同い年?どこの仕切り屋のおばさんよ。
まるで何組もの縁談をまとめ上げたやり手の仲人おばちゃんのような貫禄の亜里沙に私は感心するやら呆れるやらである。
仕切り直し…できるのかしら?そんなことを思うと何やら急に恥ずかしくなり途端に頬が熱くなるのを感じる。
そして…亜里沙が私達を奥の部屋に案内すると、意味ありげな笑みを私に残しつつ下がって行った。
『がんばるのよ!』と心の声が聞こえた気がした。
昨日の私は、生まれて初めてのキスでいっぱいいっぱいになって気を失っちゃったのだ。
恥ずかしい。
そんな私を義鷹様は責める事もなかった。ありがたいやら申し訳ないやら。
何といっても生まれた年数=彼氏いない歴の私なのだから、いたしかたないと思うのよ。うん。
平成の時代じゃ成人は二十歳になってからだったし。
そんな事を考えていると、急に義鷹様に引き寄せられた。
「えっ?」
「貴女が無事で良かった」
義鷹様は震えていた。
「よ、義鷹様…?」
「貴女があのまま攫われていたらと思うだけで胸がつぶれそうだ。攫われなくとも、あの美しい凛麗の君を一目見て貴女のお心があちらに行ってしまうのではと気が気ではなかった」そう言いながら義鷹様は私の手を両手で掴み手の甲に額をつけ、まるで何かを乞うように私にひざまづいた。
「よ、義鷹様っ…そんな!私は凛麗の君など、何とも思っておりません」
「あれほど美しい公達にすら心を動かさないなんて…信じられない」
「いや、もう…本当に全く欠片もないですから…」自然と目つきが細く(悪く?)なり声が低くなった。
どう考えても、無いわ~っ!と心の底から思っているのでつい、素の乾いた表情が出る。
そんな私の低くなった声を不機嫌になったのかと焦ったように義鷹様が詫びてきた。
「すっ…すまないっ。私は何と情けない男だろう。貴女の事になるとこれまでのように知らぬ顔が出来なくなる。貴女が私以外の男に惹かれるのではとそんな事を思い悩んでしまっていたのだ。正直に言おう。貴女につけた最近の警備もあの凛麗の君が貴女の噂を聞き及び興味を抱いてしまった事が一番の要因だった」
「まぁ!」
「けれど、やはり警備していて良かった。策を講じていなければ今頃貴女は凛麗の君に攫われ、その身も心も奪われていたかも…」
「いや、無いデスから!」食い気味に私がそう言うと義鷹様は少し驚いたような顔をする。
「もう、本気でないデスから!凛麗の君なんて手も握られたくないし、はっきり言って気持ち悪いしっ!無理やり来られたりしたら舌かんで死んじゃいますから!」
私の本気の嫌そうな言葉に義鷹さまは、驚きつつも、破顔した。
満面の笑みだ!
ふんぬぉぉぉぉぉ~っ!
超絶イケメンの微笑みゲットですっっ!
ああっ、もう死ねる!うん!
今、死んじゃってもいいくらい、幸せだっっっ!
そんな馬鹿な事を考えている私を義鷹様はギュっと抱きしめた。
「ああ、貴女は私が触れても本当に嫌ではないのですね?私の身の上にこんな幸せが降ってくるとは…」
そんな言葉に私は胸がしめつけられた。
ああ、この人はこれまでずっと傷ついてきたのだ。
デリカシーのない殿上人の言葉や態度に…。
私は、義鷹様の背に手をまわしギュッとハグした。
「私は…義鷹様だけのものです。貴方だけ」
ああ…。
もう本当に大好き。
義鷹様の強いところも弱いところも、大好きです。
顔も中身も全部全部好き!
そして、義鷹様は真面目な顔をして私を見つめたあと、ふっと灯り取りの灯りを吐息で消したのだった。
倒れた調度品などを手早く整えた亜里沙が、呆れたようなため息をひとつ。
「全くだわ!あんなに失礼な人が殿上人だなんて…がっかりよね」
そう言う私に義鷹様は安心したような?ほっとしたような笑みを浮かべた。
「ふっ…姫や亜里沙殿にかかれば、色男の凛麗の君もかたなしだな」と、そんな事をのたもうた。
「ええ~、あんなのが色男なんて…義鷹様の方が百倍も千倍も素敵です。っていうか比べるのもおこがましい。あんなカバみたいな…」
「カバ?」
「ああ、えっと異国の顔も体も大きな動物の事ですわ…」
私はそう説明した。
嘘ではないが、明らかに悪口を言ってしまった私は大好きな義鷹さまに呆れられるのではと少しばかり焦った。
「…そうなのですか…異国には私の知らぬ美しい生き物がいるのですね」
「え?」と、私は思わず耳を疑った。
うんにゃっ!カバは、キャラクターにしたら可愛かったり強そうでカッコよかったりはするかもしれないが、一般的には美しいとは言わないだろう?私は心の中で自問自答した。
義鷹様の心の綺麗な言葉に私は若干、自己嫌悪に陥った。
あんな無礼な奴にすら心の広い義鷹様ってば、美しいとかホントに思ってる。
私には相変わらずこの世界の美的感覚にはついていけないし、あんなカバの癖にナルシスト?キモいだけだけど。
ああっ、それにひきかえ私の好きな人。素敵すぎる!
そんな事を考えていたらふと亜里沙の生暖かい視線を感じた。
そうだった!
二人きりじゃなかった!と焦る私ににやける亜里沙。
なんつ~か、三日月が横になったような目つきだよ。
や~め~てぇ~!私の心を読まないで~。マジ恥ずかしい!
「ふふっ。さぁさ、私は下がりますから、後はお二人で睦まじくお過ごしくださいませ。今日は本当に大騒ぎでございましたね?明日の夜があければお二人は正式なご夫婦でございますれば」
もう、亜里沙ったら本当に同い年?どこの仕切り屋のおばさんよ。
まるで何組もの縁談をまとめ上げたやり手の仲人おばちゃんのような貫禄の亜里沙に私は感心するやら呆れるやらである。
仕切り直し…できるのかしら?そんなことを思うと何やら急に恥ずかしくなり途端に頬が熱くなるのを感じる。
そして…亜里沙が私達を奥の部屋に案内すると、意味ありげな笑みを私に残しつつ下がって行った。
『がんばるのよ!』と心の声が聞こえた気がした。
昨日の私は、生まれて初めてのキスでいっぱいいっぱいになって気を失っちゃったのだ。
恥ずかしい。
そんな私を義鷹様は責める事もなかった。ありがたいやら申し訳ないやら。
何といっても生まれた年数=彼氏いない歴の私なのだから、いたしかたないと思うのよ。うん。
平成の時代じゃ成人は二十歳になってからだったし。
そんな事を考えていると、急に義鷹様に引き寄せられた。
「えっ?」
「貴女が無事で良かった」
義鷹様は震えていた。
「よ、義鷹様…?」
「貴女があのまま攫われていたらと思うだけで胸がつぶれそうだ。攫われなくとも、あの美しい凛麗の君を一目見て貴女のお心があちらに行ってしまうのではと気が気ではなかった」そう言いながら義鷹様は私の手を両手で掴み手の甲に額をつけ、まるで何かを乞うように私にひざまづいた。
「よ、義鷹様っ…そんな!私は凛麗の君など、何とも思っておりません」
「あれほど美しい公達にすら心を動かさないなんて…信じられない」
「いや、もう…本当に全く欠片もないですから…」自然と目つきが細く(悪く?)なり声が低くなった。
どう考えても、無いわ~っ!と心の底から思っているのでつい、素の乾いた表情が出る。
そんな私の低くなった声を不機嫌になったのかと焦ったように義鷹様が詫びてきた。
「すっ…すまないっ。私は何と情けない男だろう。貴女の事になるとこれまでのように知らぬ顔が出来なくなる。貴女が私以外の男に惹かれるのではとそんな事を思い悩んでしまっていたのだ。正直に言おう。貴女につけた最近の警備もあの凛麗の君が貴女の噂を聞き及び興味を抱いてしまった事が一番の要因だった」
「まぁ!」
「けれど、やはり警備していて良かった。策を講じていなければ今頃貴女は凛麗の君に攫われ、その身も心も奪われていたかも…」
「いや、無いデスから!」食い気味に私がそう言うと義鷹様は少し驚いたような顔をする。
「もう、本気でないデスから!凛麗の君なんて手も握られたくないし、はっきり言って気持ち悪いしっ!無理やり来られたりしたら舌かんで死んじゃいますから!」
私の本気の嫌そうな言葉に義鷹さまは、驚きつつも、破顔した。
満面の笑みだ!
ふんぬぉぉぉぉぉ~っ!
超絶イケメンの微笑みゲットですっっ!
ああっ、もう死ねる!うん!
今、死んじゃってもいいくらい、幸せだっっっ!
そんな馬鹿な事を考えている私を義鷹様はギュっと抱きしめた。
「ああ、貴女は私が触れても本当に嫌ではないのですね?私の身の上にこんな幸せが降ってくるとは…」
そんな言葉に私は胸がしめつけられた。
ああ、この人はこれまでずっと傷ついてきたのだ。
デリカシーのない殿上人の言葉や態度に…。
私は、義鷹様の背に手をまわしギュッとハグした。
「私は…義鷹様だけのものです。貴方だけ」
ああ…。
もう本当に大好き。
義鷹様の強いところも弱いところも、大好きです。
顔も中身も全部全部好き!
そして、義鷹様は真面目な顔をして私を見つめたあと、ふっと灯り取りの灯りを吐息で消したのだった。
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