私のブルースター

くびのほきょう

文字の大きさ
上 下
8 / 8

epilogue

しおりを挟む
「ねえ龍ちゃん。
 勉強や技術を教えてくれている流民は、ここにいる人だけなの?」

「そんな事はないよ。
 大陸中を探したら、百万人くらいいるかな?
 いや、五百万人くらいかな?
 よく知らないけど」

「みんな生活に困っていないの?
 飢えたりしていないの?」

「どうかなぁ。
 流民の事はよく知らないんだよね」

 神龍の嘘だった。
 そもそもこの国の人間の事も知らないのだ。
 人間自体に、まったく興味がないのだ。
 この国の守護龍となっていたのも、魔獣や魔族と戦いのが楽しかったのと、移動するのが面倒だったからだ。

「じゃあ流民を助けるのは無理なのかな?
 龍ちゃんでも居場所が分からないのなら、困っている流民の人達に、この国に来てくれと言うのは無理なのかな?」

「無理じゃないよ。
 僕にできない事はないからね。
 使い魔や神龍鱗兵を使って、流民を集めるなんて簡単な事だよ」

 神龍は強がって嘘をついてしまった。
 多くの流民のなかから、一万人に激減した民の教師を探すことはできた。
 自分の神力の及ぶ範囲にいる流民を連れてくる程度なら簡単だった。
 だが、大陸中にいる流民全てを集めるとなると、神龍でも難しかった。
 しかし、シャロンにできないという事は、神龍にはできなかった。

 だから、また、戦いの女神セクメトに頭を下げることになった。
 屈辱だったが、人間の事はセクメトに聞くしかなかった。
 他の神に知り合いはいないし、明らかに自分よりも弱い神達に頭を下げるなんて、絶対に嫌だった。
 どうしても頭を下げなければいけないのなら、自分が認める好敵手にしたかった。
 それが女神セクメトだった。

「シャロン。
 シャロンが女王として布告を出せばいいんだよ。
 全ての流民を国民として迎え、国民として権利を与えると布告すればいいんだよ。
 そうすれば、厳しい生活をしている流民は集まってくるし、他の地で豊かに生活している流民はその地に残るよ」

「そうなの?
 私が女王として布告したら、流民の人達は助かるの?
 だったらやるわ。
 私のできる事は何でもやるわ」

 神龍は女神セクメトに教えられたことを全て話した。
 その話は、シャロンに大きな決断をさせた。
 自覚がどれほどあるかは分からなかったが、女王として生きていく気にさせた。
 それがこの国のためには大きな福音だった。
 だが同時に、民が女王シャロンに依存する可能性があった。
しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

アルリ
2023.07.25 アルリ

ヒューバートは元の小説では、アイラからリアーナに心変りして、失恋したからアイラと結婚した。という解釈であってますか?

2023.07.26 くびのほきょう

はい、そうです。

元の小説では、本当にかわいそうな薄幸美人だったリアーナだったので、ヒューバートはリアーナの方がアイラより好きでした。第三王子とリアーナを取り合う恋のバトルに敗れてアイラと結婚しました。

転生者のリアーナからは薄幸感がなくなってしまっているため、元祖薄幸少女のアイラが好きなままなのです。
薄幸感がする女ほど好きになる嫌な男です。

解除
ひろ
2023.07.25 ひろ

話が長ければ良いというものではないので難しいのですが、もう少し続きが読みたくなる作品だなと思いました。
良い意味でも後味が残るし、その後が気になってクセになる感じですかね…。
それが作者さんの個性でもあると思うので。
凄く好みの作品だったので感想を載せてしまいましたが、このお話も連載中のお話も、かなり楽しんで読んでいます。

2023.07.25 くびのほきょう

返信までありがとうございます。

すごい褒め言葉ばかりで恐縮してます。

地の文で設定をどばっと説明してしまってるのも自覚してるので、なるべく読者の人に楽しんでもらえるように人物描写の中で設定を表せるようにがんばります!

連載の続きも楽しんでもらえたら幸いです。

解除
ひろ
2023.07.24 ひろ

作者さんのお話他のも好きなんですが、毎回何か物足りないような後味が残ります。
上手く言えないのですが、話が面白いのにあまり掘り下げが無くてもう少しお話欲しかったなと。設定やネタばらしで知るのとお話で読むのとでは何か違うので。
今の連載中のお話も好きなので楽しみにしてます

2023.07.24 くびのほきょう

ご指摘ありがとうございます。

上手く言えないとおっしゃってますが、言いたいことは何となく伝わります。

「ぼくのかんがえたさいきょうの設定を見て!」っていう顕示欲だけの小説なんじゃないかと薄々自覚をしておりまして、多分それに加えて、「どんでんがえしがしたい!」とか「伏線貼りたい!」とかという欲望がくっついているだけな感じなんです。

私が書くのが楽しいだけでなくて、読んでもらっている人にも楽しんでもらえるようにしないとダメですね。
連載中の話は思わぬほどの反響をいただいてビビっていますので、プロットで予定している部分だけじゃなくて、人物の日常とかその後とか書いた方がいいのかもと少し思ってます。
頑張ってみます。

解除

あなたにおすすめの小説

君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は……    暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓

純白の牢獄

ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

伯爵令嬢の苦悩

夕鈴
恋愛
伯爵令嬢ライラの婚約者の趣味は婚約破棄だった。 婚約破棄してほしいと願う婚約者を宥めることが面倒になった。10回目の申し出のときに了承することにした。ただ二人の中で婚約破棄の認識の違いがあった・・・。

某国王家の結婚事情

小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。 侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。 王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。 しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

真実の愛<越えられない壁<金

白雪の雫
恋愛
「ラズベリー嬢よ!お前は私と真実の愛で結ばれているシャイン=マスカット男爵令嬢を暴行した!お前のような嫉妬深い女は王太子妃に相応しくない!故にお前との婚約は破棄!及び国外追放とする!!」 王太子にして婚約者であるチャーリー=チョコミントから大広間で婚約破棄された私ことラズベリー=チーズスフレは呆然となった。 この人・・・チーズスフレ家が、王家が王家としての威厳を保てるように金銭面だけではなく生活面と王宮の警備でも援助していた事を知っているのですかね~? しかもシャイン=マスカットという令嬢とは初めて顔を合わせたのですけど。 私達の婚約は国王夫妻がチーズスフレ家に土下座をして頼み込んだのに・・・。 我が家にとってチャーリー王太子との結婚は何の旨味もないですから婚約破棄してもいいですよ? 何と言っても無駄な出費がなくなるのですから。 但し・・・貧乏になってもお二人は真実の愛を貫く事が出来るのでしょうか? 私は遠くでお二人の真実の愛を温かい目で見守る事にします。 戦国時代の公家は生活が困窮していたという話を聞いて思い付きました。 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義です。

あなたの側にいられたら、それだけで

椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。 私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。 傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。 彼は一体誰? そして私は……? アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。 _____________________________ 私らしい作品になっているかと思います。 ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。 ※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります ※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)

【完結】冷遇・婚約破棄の上、物扱いで軍人に下賜されたと思ったら、幼馴染に溺愛される生活になりました。

えんとっぷ
恋愛
【恋愛151位!(5/20確認時点)】 アルフレッド王子と婚約してからの間ずっと、冷遇に耐えてきたというのに。 愛人が複数いることも、罵倒されることも、アルフレッド王子がすべき政務をやらされていることも。 何年間も耐えてきたのに__ 「お前のような器量の悪い女が王家に嫁ぐなんて国家の恥も良いところだ。婚約破棄し、この娘と結婚することとする」 アルフレッド王子は新しい愛人の女の腰を寄せ、婚約破棄を告げる。 愛人はアルフレッド王子にしなだれかかって、得意げな顔をしている。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。