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終章 経営惨憺
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しおりを挟む「弥桜くんっ!」
後ろから聞き慣れた声がして、伸ばした腕を抱え込まれるようにグッと掴まれた。
「ね、落ち着いて、もう大丈夫だから」
「でもっ・・・あいつが静のことっ」
「分かった、分かったから・・・・・・もういいよ」
怒りで興奮しきった体をぎゅっと抱き締められて、落ち着かせるように囁く声が耳元に聞こえる。
「っ・・・ぁはっ、っ・・・・・・ぁ・・・ゆいとさん」
もう大丈夫だというその安心感で徐々に正気を取り戻していくうちに、忘れかけていた不安感がまた戻ってきた。
「どうしよう・・・この子に、なにかあったら」
家族に、大切な人たちに何かあるのは自分のことより耐えられない。
堪えてた涙が別の意味を持って流れた。
「まずは弥桜くんが落ち着いて。今はストレスが一番良くないから」
怒りや不安が渦巻いて自分ではもうどうすることも出来ない感情を、結永さんの声に従ってゆっくり落ち着かせる。
「そう、そのまま。いいよ、今は俺に全部任せて」
自分では手に負えない状況に、言われた通り全てを任せて意識までゆっくり落としていく。
「静、聞いてるんだろ。そういうことだから、弥桜くん、病院に連れていくよ。お前もそっちに来い」
どうかこの子に何もありませんようにと祈りながら、結永さんの静に向けた声を遠くに完全に意識を手放した。
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