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終章 経営惨憺
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しおりを挟むそしてそのことについては桐生家でも問題視されており、僕のことを公表するかどうかという話し合いが行われていた。
結果としては、桐生家及び二階堂家はもちろん結永さんがいるおかげで朝夜家とも繋がりがある。
今の僕にはこれだけ大きな味方がいるんだから、Ωだということを公表してももう大丈夫だろうということになった。
そういうこともあり、公表後人から声を掛けられることが一気に増えた。
そもそも決まった場所にしか出向かないから、そうそう知らない人に声を掛けられるということは少ないが、地元の人たちからはいつも以上に声を掛けられた。
みんな僕がΩであることは知っていたけど、桐生製薬の息子であることは隠していたからどんな反応をされるか不安だった。
本当にいい人たちなお陰で、そんな状態での人との接触でも多少強くはなれた気がする。
それでも、まだまだ決まった場所以外に行くのは慣れないし何かあるとすぐ静の手を探してしまう。
無痛症だって治ったわけじゃないし、ちょっと無理するとすぐ体調を崩す。
そんな自分のことでも手一杯の僕が子供を育てることなんて果たして出来るのだろうか。
きっと静は僕のそういうことも全部考えて、まだだって言ってたんだろう。
でもそんな事気にしてる余裕なんてないくらい、もう心が追い詰められていた。
勝手にこんなことしたのは怒られるかもしれないけど、結永さんが言う通り静が僕たちの子供のことを拒絶するなんてことはないから、後のことはその時2人で考えればいいと思った。
今の僕にとって静の番になる、それが何よりも大事なことだった。
もう静は家にいるだろうから、もうすぐ、家に着いたらすぐ静に話そう。
そう意気込んで家路を歩いてる時だった。
「こんにちは」
病院から駅までそう遠くない道のりを進んでいると、聞き覚えのある声に呼び止められた。
更に触られていることに気づけない僕は、不意に肩を掴まれ危うくバランスを崩すところだった。
「おっと、すまない。大丈夫かい?」
「っ、大丈夫、です」
体のことや心身の状態のこともあって大袈裟に驚いてしまったが、声を掛けられたのは何度か話したことのある人だった。
「・・・佐条さん」
自分でも呆れるぐらいひどい反応だと思う。
全く知らない人でもなければ、知らない場所でもない。
それでも静のいない場所で誰かに話しかけられるのは怖かった。
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