140 / 152
終章 経営惨憺
136
しおりを挟む今は平日の18時前で、そろそろ静が仕事から帰ってくる時間だった。
もちろん雅兄の仕事も終わる時間で、病院の外来の時間も終了する。
今日は今から結永さんに会いに行って病院でちゃんとした検査を受けることになっている。
元々病院に行けば絶対両親に話がいって心配させるから、バレないように結永さん伝手で朝夜病院に行っていた。
それが今でも続いていて病院に行くときは結永さんに連絡を取って、基本夕方のこの時間に静と一緒に行くことがほとんどになっている。
だから今日も同じように連絡を取ったんだけど、今回の事はまだ静に話すわけにはいかないから、産婦人科に用があって詳しい話は今日するけど静にだけは伝わらないようにしてほしいと言ってあるのだ。
当の静にも出掛ける事は言わなきゃいけないわけで、病院に行くなんて言ったらどうしたのかって絶対聞かれるし、ついて来るに決まってる。
だから今日は雅兄と遊ぶんだ、と少しズラしたことを言っておいた。
基本的にはどこに行くのも静と一緒なのだが、雅兄に会いに行く時は一人で送り出してくれることがある。
実家と雅兄の所は頻繁に一人で遊びに行っていて、その時だけは静と離れて数時間過ごす。
何か静にとって僕がこの時間を過ごすことに意味があるみたいなんだけど、詳しいことはよくわかっていなかった。
でもそのおかげで今日も普通に雅兄と遊ぶだけだと思っているから、特に何も言われずに出掛けることが出来た。
病院の時間が近づいてきて、大分そわそわしているのが自分でもわかる。
こんな状態で静に会ったら絶対に隠し事してるのがバレるから、帰って来ないうちに手早く準備して家を出る。
一人で出掛ける時はいつもより殊更入念に仕度をする。
番避けは、ピアスは、抑制剤に特効薬は。
何かあった時が怖くて毎回準備にはかなり時間を掛けていた。
「行ってきます」
誰がいるわけじゃないけど外に出る時の最後の準備のようなもので、気合を入れるために声を出している。
「あら、弥桜ちゃん。今日は一人でお出かけ?」
「うん。雅兄のところに遊びに行くんだ」
駅までの道のり、この時間だと丁度みんな店仕舞いで片付けをしている所だった。
いつもこの道を通るとみんなが声を掛けてくれるから、電車に乗る前に勇気をもらえる。
今でもまだ電車は怖いから出来れば一人では乗りたくないけど、別に乗れないわけじゃなくなったからこうやって一人で出掛けることも出来ていた。
朝夜病院は2駅隣にあって、駅からもそんなに遠くない。
もう通い慣れた道のりで、特に何事もなく辿り着いた。
「いらっしゃい、弥桜くん」
着いたことを顔見知りの受付さんに伝えると、すぐに結永さんが迎えに来てくれた。
0
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説

王冠にかける恋【完結】番外編更新中
毬谷
BL
完結済み・番外編更新中
◆
国立天風学園にはこんな噂があった。
『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』
もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。
何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。
『生徒たちは、全員首輪をしている』
◆
王制がある現代のとある国。
次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。
そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って……
◆
オメガバース学園もの
超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる