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第6章 一蓮托生
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しおりを挟む雪藤は高校の時からの僕の唯一の友人と言える人だ。
元々人付き合いの苦手な僕の間に入って色々助けてもらったり、勉強とか運動とか全体的に苦手なことが多いからそれも手助けしてもらうことが多かった。
進む大学が同じだってわかってからは、特に勉強面ではたくさん教えてもらったりしていた。
大学に入ってからも学部は違ったけど、一年の頃はたまにお昼ご飯とか一緒に食べてた。
ただ僕が大学で発情期なんか起こしてからは、ずっと静先輩と一緒で雪藤とは一度も会ってなかった。
当然雪藤にも僕がΩだってことは言ってないし、今まで隠してたことをよく思ってないんだと思う。
「あの・・・・・・雪藤、その、僕が、Ωだってこと黙っててごめん」
どうしても罪悪感があって視線を逸らしてしまう。
ずっと気にしてて口が裂けても言えないと思ってたけど、今は静先輩が隣にいるから言えていることだった。
それでもやっぱり知り合いには何を言われるか、不安で仕方ない。
静先輩の手をぎゅっと握る。
「ああ、それな。まあ確かに驚いたけど。・・・・・・なんというか、そのなんとなくそうなんじゃないかって、薄々思ってたから」
返ってきた雪藤の言葉に、僕だけじゃなく静先輩も驚いてた。
必死に隠してきて隠し通せてると思ってたから、まさか気付かれてるなんて思ってもみなかった。
「なんか隠したがってるのもわかったから、あんまよくないかとも思ったんだけど、突っ込まないようにはしてた」
もう今となっては過ぎたことだけど、雪藤が気付いてたってことは他にも気付いてた人がいたかもしれない。
なんで隠し通せてるなんて思えるくらい、噂のひとつもなかったんだろう。
「たまに聞いてくるやつとかいたけど、適当にはぐらかしてたから」
僕の知らないところでそんなことがあったなんて。
「弥桜が今まで不自由なく過ごせてきたのはそのおかげか。それに関しては感謝する」
今まで何も知らずにいたいろんなことが一気にわかって、その衝撃に固まってる僕の代わりに静先輩がお礼を言ってくれる。
「あの、ほんと・・・・・・色々迷惑かけてたと思うけど、ありがとう」
「元々俺そういうのあんま気にしないタイプだから。・・・・・・友達、だしな。一時期すごい噂になってたけど、今はもう大丈夫なんだろ?」
「ああ・・・・・・」
確かにもう大学で去年みたいに僕の噂は聞かなくなったけど、その時の後遺症はかなり残ってる。
そんなこと知る由もない雪藤の言葉に、歯切れの悪い返事しか出来ない僕の代わりに、静先輩が説明してくれた。
もうだいぶ人と会うことが出来なくなってることや自傷癖のこととか、必要最低限だけかいつまんで話される内容に、沢山見つめてきたことだけどやっぱり気分が悪くなってくる。
初めて聞く人にはだいぶ気持ち悪い話だろう。
本当に気持ち悪くて、静先輩の胸に顔を埋める。
人前とか気にしてらんない。
「商店街の人たちには会えるし、君なら大丈夫かもね」
そう言ってゆっくり頭を撫でてくれる。
「・・・・・・」
「お待たせ・・・・・・て、あれ、どちらさん?」
喫茶店で話す内容じゃない重さに、それ以上誰も言葉を発せないでいるところで、だいぶ時間が経ってすっかり存在を忘れていた結永先輩がやって来て、その軽い空気に場が一気に和んだ。
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