127 / 152
第6章 一蓮托生
123
しおりを挟む「っ!!??」
無意識に呟いてしまった声が静先輩に聞こえたのか、思い切り肩を掴まれてベッドに押し倒された。
「弥桜っ、自分が何言ってるかわかってるのか‼︎ 本気でそんなこと思ってるなら、絶対に許さない」
静先輩の吐き出すような言葉と共に、ぎりぎりと掴まれた肩の力が強くなっていく。
「絶対・・・絶対にだ・・・・・・」
僕を凝視する目が、いつもの優しい静先輩じゃなかった。
何かにすごく怯えたような、今まで見たことない静先輩の気迫に何も言葉を返せない。
「いいか、お前が勝手に死ぬことは俺が許さない」
肩を掴んでいた静先輩の手が、首に移動してきてゆっくり力を込めた。
「・・・ぅぁ、かはっ・・・・・・」
「もう二度と勝手に死ぬなんて言うんじゃないぞ」
番避けの上から首を絞められて、どんどん息が苦しくなってくる。
今、まさに静先輩に僕の生死を握られてる。
もう僕の命は僕のものじゃないんだ。
完全に静先輩の手の中で、今このまま静先輩の気持ち一つで僕を殺せる。
不思議とその感覚に恐怖はなかった。
それくらい今の僕は静先輩に溺れきっていた。
もう息が出来ないくらい苦しくて返事をする余裕なんかない。
何だか意識もぼんやりしてきた。
本当にこのまま殺されるかもしれない。
そう思ったところで、完全に意識は途切れた。
次に気がついた時、部屋に静先輩の姿はなく発情期もまだ全然収まってなかった。
陽の光で明け方だと言うことはわかったけど、あれから何日経ったのかも、発情がどうしてこんな中途半端な状態なのかも、どうして静先輩がいないのかも何もわからない。
自宅だとしてもこんな薄暗い部屋に一人で、何より静先輩がいないことが徐々に意識を乱していく。
「静、先輩・・・・・・?」
発した声も部屋に反響して響くだけで、何の返事もない。
「静先輩・・・ぃやだ・・・・・・」
今度こそ本当に捨てられたかもしれない。
一度思い至るとどんどんその思考に支配されてきて怖くなる。
そんなことはないと思いたくて、震える手で急いで電話をかけた。
「・・・・・・弥桜? おはよう、気がついたか」
ワンコールで出てくれた静先輩の声は最後の記憶より落ち着いてて、いつもの静先輩だった。
その声を聞くだけでうるさいほど鳴っていた心臓の音が少し音無しくなる。
「静先輩、今どこにいるの・・・・・・?」
「今は家にいるよ。流石にあの状態で弥桜を抱くわけにはいかないから、特効薬と抑制剤使った。俺も頭冷やしたかったし、そこにいても二人とも辛いだけだから、それで一回帰ってきたんだ。弥桜が起きる前に戻るつもりだったんだよ」
静先輩の話しにようやく今の状況が理解できた。
発情期の状態も久しぶりの薬で感覚を忘れてたけど、今までは一週間かけてゆっくり落ち着かせていたんだった。
「今から行くから、もう一度薬飲んでおけ」
「早く来て」
静先輩には黙ってるけど、もう既に身体の嫌悪感がじわじわ襲ってきてて、薬を飲みに行ったり静先輩と話したりすることでそれをなんとか紛らわせようとしていた。
0
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説

王冠にかける恋【完結】番外編更新中
毬谷
BL
完結済み・番外編更新中
◆
国立天風学園にはこんな噂があった。
『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』
もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。
何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。
『生徒たちは、全員首輪をしている』
◆
王制がある現代のとある国。
次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。
そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って……
◆
オメガバース学園もの
超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
切なくて、恋しくて〜zielstrebige Liebe〜
水無瀬 蒼
BL
カフェオーナーである松倉湊斗(まつくらみなと)は高校生の頃から1人の人をずっと思い続けている。その相手は横家大輝(よこやだいき)で、大輝は大学を中退してドイツへサッカー留学をしていた。その後湊斗は一度も会っていないし、連絡もない。それでも、引退を決めたら迎えに来るという言葉を信じてずっと待っている。
そんなある誕生日、お店の常連であるファッションデザイナーの吉澤優馬(よしざわゆうま)に告白されーー
-------------------------------
松倉湊斗(まつくらみなと) 27歳
カフェ・ルーシェのオーナー
横家大輝(よこやだいき) 27歳
サッカー選手
吉澤優馬(よしざわゆうま) 31歳
ファッションデザイナー
-------------------------------
2024.12.21~
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる