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第5章 落穽下石
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しおりを挟む「静先輩、離して」
「静、離したらダメだよ」
不気味なほどの笑顔で言う結永先輩に、これは絶対にダメなやつだと本能が警鐘を鳴らしてる。
でも静先輩の腕がびくともしなくて動けない。
「弥桜くん、静に番になりたいって言ったって本当?」
なんでその質問をされたのか意図は掴めないけど、一応聞かれたことには頷く。
「そう。じゃあ静、ここの鍵の場所知ってる?」
結永先輩が指差してる場所を見た瞬間、全身から血の気が引いていくのを感じた。
「やだ! だめ、やめて! お願いだから、それだけは、知られたくないっ」
「弥桜、落ち着け。大丈夫だから」
「やだ、やだ・・・・・・、お願い、静先輩、見ないで・・・見ないで・・・」
チェストの一番下の鍵付きの引き出し。
そこにはあの時送られてきた脅迫状と一緒に入ってた『写真』が、他の場所に移すこともましてや捨てることも出来ずに仕舞われたままだった。
どう見ても結永先輩の目的が「それ」であることは一目瞭然で、それを静先輩に見られるわけにはいかなかった。
あんなもの見られたら、どんな顔されるかわかったもんじゃない。
嫌だ、嫌だ、拒絶されたらもうお終いだ。
こんな汚い体、触らせてるだけで嫌なのに、汚い体触らせてるって知られたら絶対捨てられる。
静先輩に捨てられたら、そう思うだけで怖くて怖くて震えも涙も止まらない。
「玄関の鍵置きに混ざってたの、一つはここのだろ。何が入ってるんだ」
「いやだ、見ないで・・・、見ないで・・・・・・」
「大丈夫、落ち着け」
結永先輩の足音が聞こえて、死の宣告が近づいているようだった。
静先輩は大丈夫と言いながら撫でてくれるけど、絶対離してはくれない力で抱きしめられててやっぱり身動き取れない。
「6月に脅迫状が届いただろ。あれと一緒にある写真も届いてたんだけど。どうしても知られたくないって弥桜くんが言うから、話さなかった。でも、静と離れる気がないならちゃんと全部話さなきゃダメでしょ。静もだよ、お互い秘密は無し」
「・・・・・・」
写真を受け取った静先輩の空気が固まった。
やっぱり静先輩も拒絶するんだ。
そう思ってもう何もかも絶望してた時だった。
「弥桜くん、これ、俺も静も元々知ってたんだ」
結永先輩の言葉に、震えも涙も一気に止まった。
呼吸すらもするのを忘れた。
は?
「そんなわけ・・・・・・」
嘘だよね、と静先輩に目を向けると、あからさまに視線を逸らされた。
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