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第5章 落穽下石
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しおりを挟む「結永先輩ですよー。弥桜くんいる?」
もう来てしまった。
思ってたよりかなり早く来たから、静先輩から帰るって言質を取れてない。
「います!」
「俺が開けてくるから」
「じゃあ荷物持って入れ替わりで今日はそのまま帰ってください‼︎」
このあと何を話されるのか、考えただけでばくばくと鳴る心臓の音がうるさい。
絶対に静先輩には聞かれたくない。
とにかくこの場から追い出したくて、不自然になっても玄関までぐいぐい押してく。
「おいおい、なんだよ。何があんだよ」
この数ヶ月間帰らないでとは言っても、帰ってとは絶対に言わなかったから、やっぱり不自然に思われて疑いの目を向けられる。
僕が静先輩にあからさまな隠し事なんかしたことがなかった。
そりゃ疑われて当然だ。
「二人とも何してるの」
鍵を開けると目の前にいた結永先輩が、物珍しい光景を見たと言うような顔をしていた。
「珍しく弥桜が帰れって聞かなくて」
「え、別に静もいていいよ。てか、どうせいるだろうなと思って弥桜くんにしか連絡してないだけなんだけどね」
「なんだよ、ややこしいな」
結永先輩の言葉を聞いて、僕の思ってたこととは違う話をするのかと思って一気に緊張が解ける。
あれは絶対に静先輩には知られたくないこと、結永先輩は知ってるから。
「そう言うことだから、二人とも部屋戻って戻って。もー外暑くって、お茶もらうよー」
結永先輩の様子にあんなに緊張してたのが馬鹿みたいに思えてくる。
「で、話ってなんだよ」
一息ついたところで、静先輩が話を切り出した。
あれの話じゃないなら、僕にも全く検討がつかなくて、さっきから気になってたんだ。
「うん、それね。まあその前に」
話を始めるのかと思いきや、結永先輩は僕に近づいてくると手を取って静先輩の上に座らせる。
「最近の君たちは見てるだけで砂糖吐きそうなぐらい甘すぎて胸焼けしそうなんだけど、今日だけは目の前でやってても許すから。静、絶対に離すなよ」
「はぁ?」
「まあいいから」
結永先輩が何をしたいのか、ほんとによくわからなくて静先輩と二人で顔を見合わせる。
「じゃあ今から二人にとってめっちゃ大事な話するけど、話終わるまで口挟まないでね。二人ともお互いにいろんなところの情報が噛み合ってないから、一回ちゃんと話聞いて、状況を整理しよ」
今までの雰囲気とは打って変わって重々しく口を開いた結永先輩の様子に、何故か嫌な予感がして全身が強張った。
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