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第5章 落穽下石

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「ようやく追いついたぜ」

僕のいる場所とは真反対の方向から、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あ? 誰だ」

ぼーっとしている頭に響いてきたのは、登場一言目の聞き慣れた声と帝の戸惑った声、それから複数の足音だった。
静先輩じゃない複数の人物の突然の登場に男たちの動きが止まって、落ち掛けていた僕の意識もギリギリのところで留まった。

でもどうして彼らがこんな所に・・・。

「おい、あれ帝じゃねぇか」
「知り合いか?」
「いや、聞いたことあるだけだ。ほら、西の」
「あー、なるほど」

どうやら先輩たちも帝のことを知っているようだ。
「俺のこと知ってるんだ? で、お前ら誰だ? 俺はあいつに一人で来いって言ったはずなんだが」
帝は目当ての静先輩じゃない人たちの登場に、明らかに怒りを示した。
それをお構い無しに先輩たちは言葉を返す。

「俺たちはなんて言うか強いていうなら、そこに全裸で羽交い締めにされてるやつの、お目付け役って所っすかね」
「仲間の一人にそいつが誘拐されるところを見たやつがいてね。見逃しでもしたら俺ら全員、二階堂さんに殺されるんで」
「だから、俺たち勝手に来てるんで二階堂さんは関係ないっすよ。大人しくその子を返してくれるとありがたいんすけど」

先輩たちが何を言ってるのかはよくわかんないけど、その口調が今まで重苦しかったこの場の空気を一気に変えた。
普段はあんな扱いだけどこんな状況じゃ、知っている人がいるだけで少し安心してしまう。

でも、先輩たちが来たからって簡単にこの状況が変わるわけじゃない。
「お前らのことなんか知らねぇけど、俺たちの邪魔すんじゃねぇよ。まぁ、あいつが来たところでこいつを返す気もないけどな」
数歩の足音とともに帝の声が遠ざかって行く。
先輩たちの方に近づいたのだろう。

「これじゃいくら言っても聞いてくれそうになさそうっすね。なら、力づくでも奪い返すだけだっ」

一気にこの場にいる人たちの足音が動き出した。
僕には見えないから、実際何が起こっているかはわからない。
ただ人数は圧倒的に先輩たちが不利なことはだけはわかった。

一方今にも快感を与えてもらえそうだった体は、すでに放置しておけばなんとかなる状態ではなく、とにかく一度熱を吐き出してしまわないとどうしようもない状態だった。

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